
10月29日、大手半導体製造装置メーカーである東京エレクトロンが、2021年3月期の通期の業績予想を上方修正した。それは、同社の競争力が高まっていることを示す。コロナショックによって日本の経済は依然として厳しい状況にあるが、東京エレクトロンのように製造技術を強みに競争力を発揮する企業の存在は、先行きを考える上で心強い。
現在、世界の半導体産業は大変革期を迎えている。米中対立の上にコロナショックが発生し、高性能の半導体需要が一段と高まった。その流れは強まるだろう。その変化の中で、世界の半導体大手企業の競争力も変化し始めた。かつて栄華を誇った米インテルの力に陰りが見え始め、同社はメモリ事業を韓国SKハイニックスに売却する。その一方で、世界最大手の半導体受託製造企業である台湾のTSMC(台湾積体電路製造)の重要性が高まっている。TSMCは最先端の5ナノメートル(10億分の1メートル)の半導体の生産ラインを確立し、世界の半導体企業の生産ニーズを取り込んでいる。
東京エレクトロンの決算資料や質疑応答内容をもとに考察すると、同社はTSMCと良好な関係を確立できているようだ。東京エレクトロンの競争ポジションは良好といえる。今後、米中は最先端の製造技術などをめぐって争い、対立は先鋭化するだろう。それに加えて、半導体の製造技術も変化する可能性がある。国内の生産要素をフルに活用して独自の、新しい生産技術を確立し、変化に柔軟に対応することによって、東京エレクトロンがさらなる成長を実現することを期待したい。
急速かつ大きく変化する世界の半導体産業
日本経済にとって、東京エレクトロンはコロナショックの影響を回避した数少ない企業の一つだ。それは業績の推移を見れば一目瞭然だ。2020年3月期の第4四半期に701億円だった同社の営業利益(四半期ベース)は、2021年第1四半期が738億円、第2四半期が735億円だった。主力商品である半導体製造装置を中心に、同社は世界の需要をしっかりと取り込むことができている。
それは、今後の日本経済だけでなく、世界経済の展開を考える上で重要なポイントを含む。つまり、今後、世界の半導体開発をはじめとするIT関連の投資は、高まりこそすれ、低下することはないと考えられることだ。まず、米中の対立とコロナショックというマクロの視点からそれを考えてみたい。
米国はIT先端分野での中国の台頭を食い止めなければならない。現状、米国は半導体などの製造技術と知的財産において比較優位性を維持している。9月15日に米商務省がファーウェイへの禁輸を発効したのは、ファーウェイの半導体調達を寸断して5G通信機器などにおける中国の台頭を阻止し、世界の政治、経済、安全保障の基軸国家としての地位を守るためだ。