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岡田正彦「歪められた現代医療のエビデンス:正しい健康法はこれだ!」

ファイザー新型コロナワクチン「90%以上の効果」への疑問…何が90%なのか不明

文=岡田正彦/新潟大学名誉教授
ファイザー新型コロナワクチン「90%以上の効果」への疑問…何が90%なのか不明の画像1
「Getty Images」より

 世界第2位とされる米国製薬大手ファイザー社が「新型コロナワクチンの最終試験を終え、90%以上の効果を認めた」と発表。そのニュースが世界を駆け巡りました。安全性のデータがまとまりしだい、米国食品医薬品局に緊急承認の申請を行い、年内に1.5~2千万人分のワクチン量産を開始する計画だそうです【注1】。

 このニュースに接し、医薬品評価に関する世界中の論文を精読し、その多くが欺瞞に満ちたものであることを看破してきた私の脳裏に、さまざまな疑問が駆け巡りました。正式な学術論文がまだ発表されていないため、評価も批判もできない段階なのですが、まずわからなかったのは「90%」の意味でした。

 報道によれば、4万4,000人を2つのグループにわけ、一方に本物のワクチンを接種し、他方に食塩水のようなもの(プラセボ)を注射しました。しばらくして94人が新型コロナに感染した、という報道内容でした【注2】。

 どちらのグループから何人が感染したのかは発表されていませんが、その割合がどうだったにしろ、人数が少なすぎて統計学的な有意性を証明することはできそうにありません。製薬企業の研究者たちは、さらに感染者が増えるのを待って正式な申請をするとしています。

 この数字の意味が、抗体ができた割合なのか、実際に感染を防ぐことができた割合なのか、それとも死亡率が下がった割合なのかも示されていません。もし抗体ができた割合なのであれば、それで感染が本当に防げるのか、そしてどれくらいの期間、有効なのかを示す必要があります。

 かりに90%の人で感染を防ぐことができたというデータなのであれば、驚くべき数字です。なぜなら60年近い歴史のあるインフルエンザ・ワクチンでさえ、効果が証明されたのは、やっと2年前で、しかもインフルエンザ感染をかろうじて59%減らせるようだと報告されていたからです【注3】。

 インフルエンザ・ワクチンの効果についての同報告は、過去に発表された無数の調査論文のデータを集計し、「1シーズン中にインフルエンザ検査が陽性となった人の割合」を、ワクチン接種を受けなかった人たちと比べたものでした。したがって「パーセント」の意味も明快です。

 ただしインフルエンザ・ワクチンに重症化を防ぐ効果はなく、かつ副作用のせいで発熱を訴える人が、むしろ増えてしまっていたとも述べているのです。さらに、集計の対象とした全論文のうち、3分の1はワクチンメーカーが調査のスポンサーとなっていたことから、59%という数字も割り引いて考えなければならないかもしれないと考察しています。

世界の巨大製薬企業による数々の不正疑惑

「効果90%以上」と発表された新型コロナウイルス・ワクチンは、改変メッセンジャーRNAと呼ばれるタイプで【注4】、実際に発明したのはドイツのベンチャー企業バイオエヌテックです。ヒトでの臨床試験を始める段階になり、ファイザー社に協力を求めたものですが、同社はトランプ政権が立ち上げた協定「時空を超えたワクチン開発(OWS)」で、1億人のワクチンを開発・製造するため1000億円の資金提供が約束されています。

 ファイザー社と並んでワクチン開発の先頭を走ってきた、もうひとつの製薬企業がモデルナ社です。こちらのほうが臨床試験では先行しており、正式な論文も2つ発表しています【注5】。第一相試験と呼ばれる初期の臨床試験が終わったばかりで、論文を読む限りでは堅実に評価を進めているようにも見えます。

 しかし問題は、世界の巨大製薬企業による数々の不正疑惑が取り沙汰されてきた過去があるということです。その多くは、製薬企業にとって不利になるデータを隠ぺいしたというもので、米国での裁判を通じて生々しい実態が暴露されています【注6】。

 医療統計学を専門とする私自身の経験によれば、たった1人分のデータを、比較対象とする2グループの間で入れ替えるだけで、あるいは削除するだけでも「両群に差がなかった」が、「明らかに効果が認められた」という結論にすり替わってしまうことがあるのです。

 新型コロナウイルスのワクチン開発競争に、このような不正がないことを祈るばかりですが、少なくとも海外メディアの報道を鵜呑みにして、専門家と称する人たちが「希望がもてる」などと発言するのは、あまりに軽率といわざるを得ません。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)

【追記】
本稿執筆後の11月16日、モデルナ社も開発中のワクチンに94.5%の効果を認めたと発表しました。

参考文献
【1】Thomas K, et al., Pfizer’s early data shows vaccine is more that 90% effectice? New York Times, Nov 10, 2020.
【2】Zimmer C, et al., Pfizer’s Covid vaccine: 11 things you need to know. New York Times, Nov 10, 2020.
【3】Demicheli V, et al., Vaccines for preventing influenza in healthy adults. Cochrane Database Syst Rev, CD001269, 2018.
【4】岡田正彦, ‘安倍政権、米ファイザーから未開発ワクチン「6千万人」分購入決定に重大な疑問’, Business Journal, Aug 8, 2020.
【5】Jackson LA, et al., An mRNA vaccine against SARS-CoV-2 – preliminary report. New Engl J Med, Nov 12, 2020. ほか
【6】Boss A, Side Effects. Algonquin Books of Chapel Hill, 2008.

岡田正彦/新潟大学名誉教授

岡田正彦/新潟大学名誉教授

医学博士。現・水野介護老人保健施設長。1946年京都府に生まれる。1972年新潟大学医学部卒業、1990年より同大学医学部教授。1981年新潟日報文化賞、2001年臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」を受賞。専門は予防医療学、長寿科学。『人はなぜ太るのか-肥満を科学する』(岩波新書)など著書多数。


岡田正彦

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