
世界第2位とされる米国製薬大手ファイザー社が「新型コロナワクチンの最終試験を終え、90%以上の効果を認めた」と発表。そのニュースが世界を駆け巡りました。安全性のデータがまとまりしだい、米国食品医薬品局に緊急承認の申請を行い、年内に1.5~2千万人分のワクチン量産を開始する計画だそうです【注1】。
このニュースに接し、医薬品評価に関する世界中の論文を精読し、その多くが欺瞞に満ちたものであることを看破してきた私の脳裏に、さまざまな疑問が駆け巡りました。正式な学術論文がまだ発表されていないため、評価も批判もできない段階なのですが、まずわからなかったのは「90%」の意味でした。
報道によれば、4万4,000人を2つのグループにわけ、一方に本物のワクチンを接種し、他方に食塩水のようなもの(プラセボ)を注射しました。しばらくして94人が新型コロナに感染した、という報道内容でした【注2】。
どちらのグループから何人が感染したのかは発表されていませんが、その割合がどうだったにしろ、人数が少なすぎて統計学的な有意性を証明することはできそうにありません。製薬企業の研究者たちは、さらに感染者が増えるのを待って正式な申請をするとしています。
この数字の意味が、抗体ができた割合なのか、実際に感染を防ぐことができた割合なのか、それとも死亡率が下がった割合なのかも示されていません。もし抗体ができた割合なのであれば、それで感染が本当に防げるのか、そしてどれくらいの期間、有効なのかを示す必要があります。
かりに90%の人で感染を防ぐことができたというデータなのであれば、驚くべき数字です。なぜなら60年近い歴史のあるインフルエンザ・ワクチンでさえ、効果が証明されたのは、やっと2年前で、しかもインフルエンザ感染をかろうじて59%減らせるようだと報告されていたからです【注3】。
インフルエンザ・ワクチンの効果についての同報告は、過去に発表された無数の調査論文のデータを集計し、「1シーズン中にインフルエンザ検査が陽性となった人の割合」を、ワクチン接種を受けなかった人たちと比べたものでした。したがって「パーセント」の意味も明快です。
ただしインフルエンザ・ワクチンに重症化を防ぐ効果はなく、かつ副作用のせいで発熱を訴える人が、むしろ増えてしまっていたとも述べているのです。さらに、集計の対象とした全論文のうち、3分の1はワクチンメーカーが調査のスポンサーとなっていたことから、59%という数字も割り引いて考えなければならないかもしれないと考察しています。