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今回問題となった、夫婦ライターユニット「ばぃちぃ」氏による記事。タイトルの通り、3年間にわたるホームレスへの取材を総括した内容となっている。(画像は当該記事ページより)

 コンテンツ配信サイト「cakes」で、またもや“炎上騒ぎ”が起こった。

 同サイトでは10月にも、写真家・幡野広志氏による人生相談形式の連載コラム「幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。」において、DV・モラハラの被害者と思われる相談者の相談内容を嘘だと断じるような回答に対し、多くの批判が集まるという騒動が起きたばかり。そこからひと月足らずで、またもや似た騒動が繰り返された形となった。

 問題となったのは、cakesにおいて11月11日に公開された、「ホームレスを3年間取材し続けたら、意外な一面にびっくりした」という記事。これは、今年2月から3月にかけて開催された「cakesクリエイターコンテスト2020」において優秀賞を獲得した7名のうちのひとり、夫婦ライターユニット「ばぃちぃ」氏による記事で、タイトルの通り3年間にわたるホームレスへの取材を総括した文章であった。

「cakesクリエイターコンテスト」は、cakesを運営するnote株式会社が運営するメディアプラットフォーム「note」上で毎年開催されているもので、受賞者はcakesにて連載を持つことができるというもの。最新回にあたる2020年度のコンテストにおいては6172件の応募があったといい(note公式サイトより)、上記のばぃちぃ氏による文章は、その優秀賞受賞を受け、cakesでの連載開始を宣言するべく書かれたものだったようだ。

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「ばぃちぃ」氏が優秀賞を受賞した、「cakesクリエイターコンテスト」の募集ページ。2020年2月からの2カ月弱の応募期間中に、6172件の作品の応募があったという。(画像はnote公式サイトより)

外部からホームレスを無邪気に観察する差別的な視点

 問題となった記事「ホームレスを3年間取材し続けたら、意外な一面にびっくりした」の具体的な内容を見てみよう。

 記事中では、夫婦ユニット・ばぃちぃの妻が、子ども時代に段ボールハウスに惹かれたのをきっかけにホームレスに興味を持ったことが取材を始める発端であったということや、ホームレスを「おじさん」と呼ぶ独自の接し方について説明。無口なイメージを抱いていたホームレスたちが意外と気さくに話してくれることや、不法投棄された自転車等を彼らが使いやすいように作り変えるスキルを持っていることへの驚き、その魅力が語られている。

 しかし、多くの読者が違和感を感じ、批判を投じることとなる「問題表現」は随所に出現する。

 ホームレスの住む河川敷については、「その空間をある種異世界のようにも感じてしまった」と表現、彼らの生活スタイルについても、「私たちが日常生活をしているなかでは触れる機会が少ない体験をおじさんたちを通してできるという刺激が根本にはある」「おじさんたちの時間にとらわれないゆったりとした生活スタイル【略】私たちが日常を過ごしているなかではめったに出会わない要素がたくさん散りばめられている」と記述したうえで、しかし結局のところ、「とはいえ、私たちはおじさんたちのような路上生活をしようとは思っていないし、現在のテクノロジーに囲まれた生活を続けていきたいと思っている」と結論づけてみせる。

 ここに垣間見えているのは、ホームレスという存在の背後に横たわる多くの社会問題については捨象し、外部から無邪気に観察する差別的な視点ではなかろうか。そこでは、「ホームレスのおじさん」たちはこの一般社会からあえて“降りた”仙人のような存在であり、「『となりのトトロ』に出てくるような森の木々をかき分け」た先に現れる、「テクノロジーに囲まれた」この社会を相対化する存在として描かれる。

 しかしホームレスの多くは、みずから望んでそうなったのではなく、仕事の喪失や病気などによる困窮の果てに致し方なくそういった生活に陥っているケースがほとんどなのはよく知られた事実だ。そしてその背景には、この日本社会におけるセーフティネットの欠如や格差社会の拡大などの深刻な社会問題が横たわっていることも、多くの識者、書き手が何度も指摘してきたことだろう。

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