
「日産は“いつまでも甘えるな”と脅しをかけてきたんですよ」――。ある三菱自動車関係者は16日にブルームバーグが報じた「日産が三菱自動車株売却検討着手」報道の背景についてこう話す。
ブルームバーグの記事は、「事情に詳しい複数の関係者」からの情報として、「新型コロナの影響などで業績が悪化している三菱自の回復に想定よりも時間がかかるのではないかとの懸念があるほか、仏ルノーを含めたアライアンス(企業連合)で協業体制を構築しており、資本関係を維持する必要性が薄れてきた」ことが売却の背景にあると報じている。
この記事が配信されると関係者は騒然となったが、国内主要メディアからの後追いはなく、少なくとも現段階では固まった話ではないと考えられる。先の三菱自関係者はこう話す。
「この報道は関係者の間では日産から出たものだと見ています。残念ながら、理由は簡単で、アライアンスによって三菱自から得られる技術や研究費などのメリットがまるでなくなっているのが現状だからです。日産トップにとって三菱自との関係をいつ、どのような形で清算するかが重要な仕事の一つとなって久しいですが、三菱商事の出身で16年にわたり三菱自の再建に尽力してきた益子修会長が今年8月に亡くなられたのを機に、一度観測気球を上げてみようということになったのでしょう。国内メディアではなくブルームバーグというグローバルメディアにリークしたのもそれを裏付けています」
確かに、故益子氏は三菱自の象徴のような人物だっただけに、一介のプロパー社員である後継の加藤隆雄社長では日産やルノーへの発言力が落ちるのは否めない。日産側が、東南アジア以外の市場でろくに利益を上げることのできず赤字を垂れ流す「お荷物」の三菱自を切り捨てて、身軽になりたいと考えるのは合理的だ。
一方で、短期的には日産が三菱自の売却に踏み切る可能性は小さい。日産は2016年、燃費不正問題で経営危機に陥っていた三菱自の第三者割当増資に応じて約2370億円を出資、同社の株式を34%取得し筆頭株主となった。日産が三菱自の株式売却を急ぐ動機があるとすれば、当面のキャッシュの確保だが、日産は金融機関からの借り入れなどにより今年9月末時点で約2兆5000億円を備えており、その心配があるとはいえない。20日時点の終値ベースで日産が三菱自の株式の34%を売却して得られるのは、購入した時の半値以下の約1000億円であることを考えても、無理に急ぐ理由は見当たらない。
日産による三菱自の株式売却は、日産経営陣を長きにわたって苦しめる課題となっている。
三菱商事にとっても三菱自はお荷物
日産による三菱自の株式売却の判断は、コロナの影響がある程度見通せた段階になるとみられるが、そもそも売却先がどこになるかという大問題もある。