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日産スカイラインのハンズオフ運転“プロパイロット2.0”で、東京・長野を快適に走破!

文=萩原文博/自動車ライター
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自動車の未来のカタチ、夢のハンズオフ運転!

 自動車の未来を示す言葉として、「CASE」がよく使用されている。この「CASE」というのは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字を取った造語である。それぞれ4つの領域で技術革新や普及が拡大しているが、今回はそのなかでも最も未来を感じられるAutonomous=自動運転についての現状を紹介しよう。

 以前、まだあのカルロス・ゴーン氏が日産の会長職にあった頃、「2020年までに一般道での自動運転を実現する」と息巻いていたが、結果的にはまだ実現できていない。しかも、国土交通省が定める自動運転のレベルは1〜5まであるのだが、この発言がなされた頃には、「2020年の目標としては、特定条件下における完全自動運転であるレベル4の実現」とされていたのだが、実際にはまだ、「ドライバーが主体となる特定条件下での自動運転機能(高機能化)」であるレベル2の段階だ。

 ちなみにこの「特定条件」というのは、主に高速道路を指す。つまり現状では、高速道路など歩行者がいない条件下においてのみの自動運転機能が実現している、ということになる。

【参考/日産の開発技術者に話を聞いた記事はこちら】
“プロパイロット2.0”日産スカイラインに乗ってわかった「カーナビは不要」の誤り

日産「プロパイロット2.0」は、時速80km以上の高速走行で自動運転が可能に

 さて、市販化されている自動運転機能において最も進んでいるのが、2019年に日産スカイラインに搭載された「プロパイロット2.0」だ。このシステムは、3D高精度地図データ、車両の周囲360度のセンシング、インテリジェントインターフェースという3つの要素によって、「インテリジェント高速道路ルート走行」を実現する。

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日産スカイライン搭載の「プロパイロット2.0」では、車両の周囲360度のセンシングによって全方位の安全を目指す

 この「インテリジェント高速道路ルート走行」というのは、ナビゲーションシステムで目的地を設定し、高速道路の本線に合流すると、あとはナビのルート通りに自動で走行できるというもの。分岐も含め高速道路走行中は、時速80km以上になるとハンドルから手を離せる「同一車線内ハンズオフ」が可能となっているのだ。

 さらに、ドライバーが設定した速度より遅い車両が前方に走行している場合は、システムが追い越し可能と判断するとディスプレイ表示で追い越しを提案し、ドライバーがハンドルに手を添えてスイッチ操作で承認すると、右側の車線へと車線変更する。そして実際に追い抜きが完了すると、車線変更可能なタイミングをシステムが判断し、同様の操作で元の車線へと戻ることができる。同一車線を走行する際はハンズオフでき、車線変更の提案まではシステムが行えるものの、実際に指示するのはドライバーとなっている。

今後、BMW、レヴォーグ、レクサスLS、そしてベンツSクラスに自動運転導入予定

 一方で現在のところ、高速道路走行中に同一車線で完全にハンズオフ運転できるのはBMWのみ。しかし、BMWは高速道路の渋滞時のみに使えるという仕様で、時速60km以下の走行時にのみハンズオフが可能と、日産のプロパイロット2.0とは真逆の仕様となっている。

 今後、BMWと同様に高速道路などの渋滞時にのみハンズオフが可能になるのが、すでにティザー広告が開始され、10月に販売開始予定のスバル・レヴォーグに搭載されている「アイサイトX」だろう。

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10月に販売開始予定の、スバルの新型レヴォーグ
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「アイサイトX」搭載で、新型レヴォーグでは高速運転走行時にハンズオフ運転が可能となる

 まだ発売前ながら、筆者はレヴォーグのプロトタイプに試乗できたのだが、こちらも日産のプロパイロット2.0と同様、3D高精度地図データを採用している。が、こちらのほうが優れているのが、料金所を認識し、減速そして再加速を自動的で行うという点だ。自動運転技術としては日産のプロパイロット2.0と同じレベル2の領域ながら、自動運転に向けて一歩着実に前進しているのがわかる。

 また、この秋にはレクサスLSのマイナーチェンジ、そして2021年にはメルセデス・ベンツのフラッグシップセダンであるSクラスには「レベル3」の自動運転が導入されるといわれている。かように来年以降、自動運転技術はまた一段と大きく進化するのは間違いない情勢なのである。

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今秋にマイナーチェンジされるレクサスLS
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新型メルセデス・ベンツSクラスには、「レベル3」の自動運転が導入されるという

東京・千駄ヶ谷から長野・プリンス&スカイラインミュウジアムまで250km弱を走破

 それでは、上述の通り現時点での「最新自動運転システム」である、日産スカイライン搭載のプロパイロット2.0は、実際のところどのような使い心地なのか? 今回、実際に運転してトライすることができたので、レポートしてみたい。

 今回テストコースとして設定したのは、本来ならば東京オリンピックの歓声に包まれていたであろう東京・千駄ヶ谷にある国立競技場をスタート地点として、首都高、そして中央道・長野道を経由し長野県岡谷市にある鳥居平やまびこ公園をゴールとしたルート。この鳥居平やまびこ公園にはプリンス&スカイラインミュウジアムがあり、歴代スカイラインの市販車やレーシングカーが展示されている、“スカイラインの聖地”とも呼ばれている場所だ。

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東京・千駄ヶ谷にある国立競技場をスタート地点として、首都高、そして中央道・長野道を経由し、長野県岡谷市にある鳥居平やまびこ公園をゴールに設定
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長野県岡谷市にある“スカイラインの聖地”、「プリンス&スカイラインミュウジアム」には、歴代スカイラインの市販車やレーシングカーが展示されている

 なぜこのコースにしたのかというと理由はシンプルで、東名や新東名のような直線の多い高速道路ではプロパイロット2.0の“本当の実力”は測れないだろう……という意地悪な気持ちがあったからだ。アップダウン、そしてコーナーの続く中央道において、「プロパイロット2.0」の自動運転技術は、どれくらいの実力を発揮できるのだろうか?

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「プロパイロット2.0」の自動運転技術の実力やいかに?
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試乗した「スカイラインハイブリッドGT タイプSP」

スカイラインのプロパイロット2.0、東京―長野の全行程のうち90%で自動運転!

 試乗したのは、車両本体価格616万円の「スカイラインハイブリッドGT タイプSP」。3.5L V6エンジン+モーターのハイブリッドシステムは、システム最高出力364psというハイパワーを発生しながら、燃費性能は、より実走行に近いWLTCモードで12.4km/L、高速道路モードでは14.9km/Lという優れた数値を達成している。このGT タイプSPという最上級グレードは、245/40RF19という大径のランフラットタイヤを装着しているにもかかわらず、乗り味は非常にしなやかで、ランフラット特有の角の硬さも感じない。ハイブリッドシステムのスムーズな走りとしなやかな乗り味で、高速道路での移動もあまり疲労感を感じることがなかった。

 そしていよいよ気になる「プロパイロット2.0」だが、ナビの指示通り外苑入口から首都高に合流したものの、ハンズオフが解禁となったのは、そこから中央道に入り、府中バス停を過ぎたあたりからだった。八王子料金所などではハンドルを握り、減速操作を行った。その後甲府付近まで続くワインディングにおいては、ハンズオフ走行はきわめて快適に行えた。

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全行程の90%をハンズオフ走行できた
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ハンズオフ走行時のインパネ表示

 結果として全行程の90%においてハンズオフによるドライブができたのだが、ハンズオフがキャンセルとなりハンドルを握るよう指示が出たのは、道路上の白線が不鮮明で認識できないようなケース。そして、小仏トンネル、笹子トンネルなど距離の長いトンネルでGPSの電波が届かなくなったときにも、ハンズオフはキャンセルされた。また、中央道から長野道への分岐においても、速度が下がるためにドライバーがハンドルを握ってカーブを曲がることとなった。しかし、ドライバーはあくまでもハンドルを握るだけであり、実際に操作するのはシステムのほうなのである。

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距離の長いトンネルでは、ハンズオフはキャンセルされた
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ハンズオフキャンセル時のインパネ表示。ハンドルを握るよう表示が出ている

法定速度は遵守するが、その分流れに乗れない悲しさ

 約3時間近いドライブだったが、アクセルを踏む必要がないので、疲労感は非常に少なく快適だ。

 しかし一方で、時速80km以上でハンズオフをするということには、相当な“馴れ”が必要だ。やはり、高い速度域でハンドル、アクセルをシステム任せにするというのは、まだまだ人間にとって違和感がある。特にアクセルやブレーキだけならまだしも、ハンドル操作までシステムに任せるというのは、多くの人にとってまだ強い抵抗があるだろう。そう考えると、BMWやスバルのように、渋滞時の速度域が低いシーンでのみハンズオフできる、というほうが、現代のドライバーにとってはまだ違和感が少なく済むのかもしれない。

 それから、プロパイロット2.0の3D高精細地図データには当然、法令上の最高速度データも組み込まれているため、ハンズオフを作動させると、法令上の最高速度+10km/hまでしか速度を設定できない。これによってスピード違反をすることはなくなるが、その分、実際の流れに乗って走る……ということはどうしても難しくなる。便利な機能には違いないが、その分、ルール遵守によって自由度は少なくなることになるわけだ。

 さて、かように、アクセル・ブレーキ操作に加えてハンドル操作までをもシステムに任せられるレベルにまで到達してきた昨今の自動運転技術。このシステムがすべてのクルマに搭載された暁には、アオリ運転なども減少するだろうし、渋滞の発生も少なくなるはずだ。まだメーカーによって技術差はあるだろうが、さらなる進歩を祈りたいものである。

(文=萩原文博/自動車ライター)

萩原文博/モータージャーナリスト

萩原文博/モータージャーナリスト

モータージャーナリスト。1970年生まれ。10代後半で走り屋デビューを果たし、大学在学中に中古車雑誌編集部のアルバイトに加入し、中古車業界デビュー。1995年より編集部員として本格的に携わり、2006年からフリーで活動。中古車の流通、販売の造詣が深く、新車でも多くの広報車両に乗車するなど精力的に取材を行っている。

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