この9月に登場した大衆車の代名詞、トヨタカローラの新型車にも、「ディスプレイオーディオ」が搭載された。ディスプレイオーディオとは、スマートフォンとの連携を強化した車載用オーディオのことで、ナビゲーションやオーディオはスマートフォンの中にあるアプリやデータを使用するというもの。しかも最近ではナビゲーションのアプリにLINEが参入するなど、車載ナビはスマートフォン依存型へと移行しており、「もう純正ナビなんて必要ない!」とも思えてくる。
確かに、目的地検索や道案内といったいわゆるナビゲーションの機能においては、いまやスマートフォンでもまったく不満を感じないレベルに達している。しかし、今後展開される自動運転の領域において、実は地図データが大きな役割を果たすだろうとされていることをご存じだろうか。
マイナーチェンジを行い、高速道路でのハンズオフ(手放し)運転を可能とした最先端の運転支援システム「プロパイロット2.0」を搭載した日産スカイラインが話題である。その試乗会において、今後の純正ナビゲーションの重要性についてエンジニアに話を聞くことが出来たので、ここで紹介してみよう。
ナビ用のデータとは質量ともに次元が異なる
今回話を聞いたのは、日産自動車の電子技術・システム技術開発本部AD/ADAS&シャシー制御開発部性能・信頼性開発グループ主管の江川健一氏と、同社コネクティッドカー&サービス技術開発本部ソフトウェア&ユーザーエクスペリエンス開発部アプリケーション&サービス開発グループ主担の海老澤雅之氏のお二人。
早速、ここまでスマートフォンのナビアプリが進化すると、純正ナビを装着する必要性はないのではないかと単刀直入に聞いてみた。
「ナビゲーションの使い方というと多くの人にとっては、わからない道を聞くとか、早く目的に着くルートを調べる、あるいはそのルート周辺にあるお店を調べるとか、そういった使い方が一般的だと思います。確かにそういった使い方であれば、スマートフォンのナビアプリで十分要望を満たすことができると思います。
その一方で今回スカイラインに搭載した『3D高精度地図データ』というのは、これから進んでいく道の“状況”が詰まっているものです。つまり、いわゆる道案内用の地図とは別もので、クルマを走行させる上で必要なデータとして必要なのは何か、が追求されています。ゆえに、ディスプレイ上では大差ないように見えますが、単なるナビゲーション用の地図とは、機能的にかなり異なっているのです」
つまり、ディスプレイに映る情報は同じでも、その裏にあるデータ量や情報の質は、まったく異なるということらしい。
「データの質の違い、という点について説明しましょうか。現在一般に使用されているナビゲーションでは、例えば3車線の道路で、現在どの車線を走行しているのかといったことはわかりません。わかることといえば、何メートル先に信号がありますとか、目的地に行くにはそこを左折してくださいといったことがすべてですよね。あるいは、高速道路の出口手前で追い越し車線を走っていたら、出口に向けて徐々に左車線に寄っていってくださいとドライバーにうながすぐらいのことはしてくれるかもしれませんが。
しかし、3D高精度地図データはそういうものとは次元が違います。この先がどのような道になっているのか、現在どの車線を走行しているのか、その道の最高時速が何km/hなのか、そしてこの先のカーブの半径やカント(路面の傾き)がどれくらいなのか、ということまでわかるくらい、データ量が濃密でまた高い精度を持っているのです。つまり、設定したルートに沿って、その道の状況までをも的確に把握してアクセルやハンドル操作をしてクルマを導いてくれるのが、3D高精度地図データだということです」