道路状況を把握してクルマを的確に導く
まさにこの3D高精度地図データによって、高速道路のハンズオフが可能になったということですね。
「ハンズオフばかり注目されるのも困りますが(笑)、それくらい安全に、そして安定して走行できるということですね。もう少し具体的にいうと、設定したルートの“先読み”ができてしまうのです。突発的な工事や事故の把握まではなかなか難しいですが、クルマの動きを、その道にもっとも合うようにコントロールすることが可能になるのです。
カーブにさしかかってから初めて減速したりハンドルを切ったりするのではなく、何キロ先に半径がこれくらいでカントがこれくらいのカーブがあるから、そこをもっとも安定して走行するためには、速度はどれくらいで、そのカーブのどれくらい前からハンドルを徐々に切っていけばいいのか――ということをすべて把握したうえで操作する。そういったことが可能になるわけです。現在は高速道路だけにしか対応していませんが、今後は一般道にも対応させていかないといけないと思っています」
となると逆にいえば、3D高精度地図データさえ搭載していれば、スマホとの連携は意味がない、必要ない――ということになるのでしょうか。
「いえいえ、まったくそうではありません。ナビゲーション的な部分においては、昨今はもうスマートフォンで目的地検索されることのほうが多いということは我々もわかっていますので、スマートフォンとはアプリケーション経由でリンクすることが可能です。つまりグーグルマップやテキストで目的地を設定し、それをクルマに転送することもできるのです。フロントシートだけでなく、リアシートの乗員も操作ができるので、利便性はより高くなっていると思います。ただ、スマートフォンの地図データと運転支援システムをリンクさせるのは、精度と質という点から、現時点ではかなり厳しいと思いますね」
こうして話を聞いてみると、「もはやクルマにナビは必要ない」という考えはあまりにも短絡的だということがわかってくる。いや、むしろ今後の「自動運転技術」のさらなる進化のためには、単なるナビゲーション用のデータとは比較にならないような、さまざまな道路データも含めたハイレベルな地図データが必要とされるのだろう。そうしたシステムによってクルマが導かれるようになれば、交通事故なども劇的に減っていくのかもしれない。
(文=萩原文博/自動車ライター)