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鈴木純男「保険会社に流されない『コロナ下の保険選び』のツボ」

医療保険の「新型コロナ保障」は本当に必要なのか?太陽生命の新商品がヒットした理由

文=鈴木純男/金融ジャーナリスト
医療保険の「新型コロナ保障」は本当に必要なのか?太陽生命の新商品がヒットした理由の画像1
「gettyimages」より

 2021年になりました。昨年末から再拡大し始めた新型コロナウイルス感染症の収束の時期は、いまだ見えません。12月の第2週には国内での1日の新規感染者数が初めて3000人を超えて、さらにその人数は拡大傾向にあります。

 こうした中、「もしかしたら自分も新型コロナに感染するかも」という不安から、生命保険の加入を検討する人が増えているようです。特に、入院した際に給付金が下りる「医療保険」のニーズが高まっており、昨年の緊急事態宣言が解除された5月以降、保険ショップの店頭などで、医療保険を比較検討する顧客の姿が多く見られました。

 コロナ下で対面販売に制限がかかった生命保険各社にとっても、コロナによる人々の危機意識の高まりや、将来の病気や万が一の死亡に対する不安は、保険需要が高まるという意味では“追い風”となった側面もありました。

 実際、コロナ下において、「コロナ保障」をキーワードとする医療保険の新商品が発売され、注目を集めています。しかし、コロナに罹患することに対する不安から、こうした医療保険に加入するのは得策なのでしょうか。

 もちろん加入するのは各自の判断ではありますが、最低限、以下のことを踏まえて賢い選択をすることが大切だと、個人的には考えています。

新型コロナ感染で医療費はどのくらいかかる?

 まず考えなくてはいけないことは、新型コロナに感染した場合の医療費はどのぐらいかかるか? ということです。新型コロナウイルス感染症を判定するPCR(polymerase chain reaction)検査は、医師が必要と判断した場合に、帰国者・接触者外来など、都道府県などが指定する医療機関などで実施されます。この場合の検査費用は公費で負担されるので、初診料などのわずかな自己負担分以外は、原則的に患者側の負担はありません。

 PCR検査の結果が陽性となり、医療機関での入院となった場合でも、入院患者の医療費は公費で負担されるので無料です。つまり、新型コロナに感染しても、医療費の心配はほとんどいらないということです。もちろん、入院している間は働けないので、個人事業主などの場合は収入減となるリスクは避けられません。ですが、医療費が無料であるため、他の疾病で入院した場合と比べても、家計への負担は小さいということは頭に入れておく必要はありそうです。

 次に、もし新型コロナに罹患して入院した場合に、民間の保険会社から給付金は下りるのか? ということですが、答えはイエスです。新型コロナは入院給付金の支払対象となる「疾病」に該当するため、たとえば医療保険に加入している人は入院給付金を受け取ることができます。入院給付金日額5000円の医療保険に加入している人が14日間入院した場合は、7万円の給付金を受け取れるというわけです。病院のベッドが満床で、ホテルなど臨時施設や自宅などで療養した場合も、入院給付金の支払対象としている生命保険会社がほとんどなので、この点でも安心です。

 万が一、新型コロナが原因で死亡してしまった場合でも、死亡保障がある生命保険に加入していれば死亡保険金が支払われます。加えて、新型コロナを直接の原因として死亡・所定の高度障害になった場合、「災害死亡保険金」や「災害高度障害保険金」を上乗せで支払う特例措置を、生保各社は行っています。

 このように、万が一新型コロナに罹患したとしても、治療費および入院費などの負担に対して、過度に不安に思う必要はないのです。そして、もうおわかりのように、現在加入している医療保険や生命保険があれば、まずはその保障内容を確認する必要があるということです。入院保障があれば、単にコロナに対しての不安解消のために、新たに医療保険に加入する必要はありません。もし、新たに医療保険への加入を検討する場合も、ことさら新型コロナだけを意識する必要はないと思うのです。

「新型コロナ」だけを保障する保険はない

 こうした中、人々の医療保障に対するニーズが高まっている環境下に商機を見いだし、「新型コロナ保障」を全面に押し出した新商品が発売されています。

 たとえば、太陽生命保険が2020年9月1日から売り出した「感染症プラス入院一時金保険」(無配当災害入院一時金保険<無解約払戻金型>)は、「新型コロナウイルス感染症を含む所定の感染症等で入院された場合、業界最高水準である最高40万円を日帰り入院でも一時金でお受け取りいただけます」(同社8月18日発表のニュースリリースによる)というのが最大の特徴です。

 ただ、同商品は、従来同社が発売している「入院一時金保険」(一時金の最高は20万円)に新型コロナなど所定の感染症と不慮の事故による傷害など「災害入院一時金保障」(同20万円)を組み合わせたもので、新型コロナウイルス感染症だけを保障する保険ではありません。

 それでも、「新型コロナで1日以上入院すれば、最大で40万円もの入院一時金が受け取れる」というアピールの仕方は大成功で、同保険は発売からわずか4カ月で販売件数が5万件を超えるヒット商品となりました。コロナ下で在宅の人やテレワークの人が増えていたことから、インターネットでも加入できる利便性の高さも、売れ行き好調の背景にあるようです。ただ、40万円というのはあくまで保障額の最大値であり、それだけの保障を得ようとすれば、当然ながら、それに見合った保険料を支払わなくてはなりません。

 また、少額短期保険業者のjustInCase(ジャストインケース)は2020年5月1日という緊急事態宣言の真っ只中に、1泊2日以上の入院で一時金を受け取れる「コロナ助け合い保険(シンプル医療保険)」を発売しています。この保険も、新型コロナだけを保障するわけではなく、他の病気やケガでも入院した場合が保障対象となります。

 このように、商品の特徴や商品名において「新型コロナ」を全面に押し出した医療保険が発売されているのは、「コロナ」というワードを盛り込むことで人々の関心と注目を集める狙いもあるのでしょう。

 新型コロナ関連の保障で言えば、既存の医療保険の保障を充実させて、コロナに罹患した場合に入院給付金を増額して支払う動きも見られます。たとえば、富国生命保険が12月28日から取り扱いを開始した「感染症サポートプラス」は、新型コロナを含む所定の感染症を直接の原因として入院開始した場合、「入院見舞給付金」の支払額が従来の2倍になります。

 同社の医療保険に加入している既契約者もその対象になっており、新たに医療保険に加入しなくても新型コロナに関する保障が得られます(20年12月28日から22年1月31日までの間に入院を開始した場合に限る)。

 将来どうなるかはわかりませんが、前述のように、現状では新型コロナの入院では医療費の負担はほとんどかかりません。「新型コロナ」を過度に不安視するのではなく、冷静になって保険加入の必要性を検討することが大切だと思います。

(文=鈴木純男/金融ジャーナリスト)

鈴木純男/金融ジャーナリスト

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