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絶望の三菱自動車、経営危機…巨額赤字、販売台数激減、人材流出、研究開発費を大幅削減

文=河村靖史/ジャーナリスト
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三菱・eKワゴン(「Wikipedia」より)

 三菱自動車の経営再建の先行きが危ぶまれている。2月2日に発表した2020年4-12月期連結業績は、2440億円の巨額の当期赤字となり、前年同期の118億円の赤字から20倍以上に膨らんだ。三菱自の池谷光司CFOは、決算発表のオンライン記者会見で「構造改革は想定していた以上の早さで進んでおり、収益改善も見えてきた」と述べ、2021年度の黒字化達成に強い自信を示した。しかし、新車販売台数が想定以上に落ち込み、人員削減や研究開発費の削減などによって従業員の士気も低下している。経営再建を危ぶむ声は強まっている。

 三菱自が収益改善に自信を示す根拠となっているのが、四半期ベースでの赤字額が縮小していることだ。2020年7-9月期の営業赤字は293億円だったのが、10-12月期には41億円にまで縮小した。7-9月期と10-12月期の新車販売台数はそれぞれ約21万台で、ほぼ同じだったことから台当たり収益が改善している。レンタカーなどの大口顧客に価格を大幅に値引いて販売するフリート販売比率を引き下げるなど、値引き販売を抑制してきたためだ。

 三菱自は2020年度から受託生産子会社のパジェロ製造の閉鎖や、人員削減などによる固定費削減、欧州市場向け新型車の開発凍結などの構造改革を進めている。これらリストラは早いペースで実行しており、2年間で固定費を20%削減する計画だったが今期中に18%削減できる見通しだ。

 構造改革によるスリム化に加え、主力のSUV「アウトランダー」を今年2月にフルモデルチェンジして市場に投入し新車販売台数を増やすことで「(2021年度の)黒字化は確実に達成できる」(池谷CFO)と見る。

 しかし、今期の経営状況を見ると楽観できる状況にない。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨年4~5月に世界の各都市でロックダウンが実施された影響などからグローバルで自動車需要は大幅に落ち込んだが、昨年9月ごろから新車需要全体は急回復している。

 こうしたなかにあって三菱自の回復の遅れは明らかだ。三菱自のグローバルでの2020年4-12月期の新車販売台数は前年同期比35%減の56万9000台と、大幅マイナスのまま。とくに三菱自の重点市場であるASEANが同43%減にまで落ち込んでいる。生産拠点があり、主力市場のタイでは「収益重視の販売手法を展開している」(三菱自・矢田部陽一郎Co-COO)こともあって、ライバルであるトヨタ自動車やいすず(「ず」の正式表記は踊り字)自動車に売り負けており、シェアも低下。ルノー・日産・三菱自アライアンスで、ASEAN市場は三菱自がリーダー役を務めるが、市場での存在感は薄れている。

 2021年3月期の通期見通しでは、新車販売台数が計画を下回って推移していることから、販売計画を前回予想から2万2000台引き下げ、80万2000台、前年同期比29%減に下方修正した。

大規模リストラによるツケ

 2021年度の黒字化に向けて推進している構造改革の影響を懸念する声もある。三菱自は固定費を削減するため、昨年11月に人員削減に踏み切った。早期希望退職者550人を募集したところ、計画を大幅に上回る654人の応募があった。ある自動車業界関係者は「コロナ禍で経済の先行きが不透明ななかでも、多くの従業員が三菱自に見切りをつけたことに驚いた」という。早期希望退職の対象ではない45歳未満の若い世代の離職も少なくなく、大量に人が減っていることに残った従業員の士気も低下しているという。

 構造改革で、先行きの懸念材料となっているもう一つが、研究開発費を大幅に削減していることだ。自動車業界では、競争の軸が自動運転や電動化などに変わっていくとの見方が強まっている。これらの分野に強いグーグルやアップルなどのIT大手や米中のスタートアップも参入機会をうかがっている。それだけに自動車メーカー各社は、これらの分野に多額の研究開発費を投じてライバルに先行しなければ生き残れなくなるとの危機感を持ち、コロナ禍で経営が不安定な状況でも、将来技術分野への研究開発投資は抑えていない。

 対して三菱自は今期、短期的な業績改善を図るため、研究開発費を前期と比べて183億円削減する計画だ。ただでさえ人員削減によって技術の遅れが懸念されている。研究開発費を削減することは、三菱自の将来の成長の芽を摘むことになりかねない。三菱自では自動運転や電動化などの先進技術は、アライアンスパートナーである日産やルノーの技術の活用を期待するが、望み通りに技術を供与してくれる保証は何もない。

 巨額赤字を計上し、計画を下回る販売状況でも、リストラの断行で先行き楽観視する三菱自。大規模リストラによる影響のツケが三菱自の経営再建を阻害する要因になりかねない。

(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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