
新電力大手のF-Power(エフパワー、東京・港区)は3月24日、東京地裁に会社更生法を申請した。申請時の負債は債権者315名に対して約464億円(帝国データバンク調べ)。新電力の倒産では16年4月に破産申請した日本ロジテック協同組合の負債約162億円を上回り、過去最大となった。
エフパワーは2009年4月に設立した独立系の新電力事業者。自社では発電設備を持たず、グループ会社の新中袖発電所や新潟ニューエナジー、民間発電所・自治体の清掃工場などから電力を調達するほか、電力使用量の増加で供給が不足する場合は日本卸電力取引所(JEPX)からスポット取引で調達。事業者向けを主体に高圧電力および特別高圧電力、一般家庭用に低圧電力の小売りを行っていた。
低料金を武器に18年4~7月に契約電力400万キロワット以上となり、新電力で首位に立った。しかし、原油価格と卸売市場価格の高騰が直撃して18年6月期は120億円の最終赤字を計上。19年6月期は売上高は約1606億円となったものの、需要期の卸売価格の変動が響いて最終赤字が約184億円に拡大し、債務超過に転落した。
そのため、料金を見直したり、火力発電所子会社などの資産を売却して自力再建に取り組んだ。20年6月期の売上高は722億円に減少したが、最終損益は約2億円の黒字となり、2期連続の赤字から立ち直った。だが、21年初頭の電力逼迫による電力卸市場の調達価格の急騰で再び業績が悪化。関連費用の追加支払いが重なり自力再建を断念した。
猛烈寒波で卸電力の価格が10倍に急騰し逆ザヤに
電力自由化で誕生した電力小売事業者(新電力)が曲がり角に立っている。事業者数は700社に増え、顧客獲得競争が激化。昨年末からの寒波襲来に伴う電力需要の急増で苦境に陥った。液化天然ガス(LNG)火力発電所の燃料が不足したことが引き金となり、今冬の電力需給が逼迫。日本卸電力取引所(JEPX)の価格は、通常は1キロワット時当たり10~20円で取引されていたのが、1月中旬には一時251円と10倍超にまで跳ね上がった。
自前の発電設備を持たない新電力の多くはJEPXを通して大手電力会社から出た余剰電力を調達している。新電力は仕入れコストが膨らんでも、それを電気料金に転嫁できない。電気料金を大幅に値上げしたら解約が相次ぐことになるからだ。その結果、仕入れコストが電気料金を上回る逆ザヤが発生した。
加えてインバランス料金の高騰が新電力の経営を圧迫した。インバランスとは新電力が電力を調達できない場合、電力会社が穴埋めする仕組みのことで、電力供給はストップせず、停電などにならずに済む、いわゆるセーフティガードだ。