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赤石晋一郎「ペンは書くほどに磨かれる」

中小企業が外資銀行の“草刈り場”化か…コロナ禍で「改正銀行法」強行、産業空洞化の懸念

文=赤石晋一郎/ジャーナリスト
中小企業が外資銀行の“草刈り場”化か…コロナ禍で「改正銀行法」強行、産業空洞化の懸念の画像1
金融庁のHPより

「この法律はコロナ禍で財政難に苦しむ日本企業を“叩き売る”ための法律にしか思えない。日本経済にとって、あまりにリスクが大きすぎる」

 5月下旬、私はある経営者に呼び出された。彼が「リスクが大きすぎる」と嘆いたのは、5月19日に可決した「改正銀行法」についてだった。この改正銀行法およびその関連法案については、法案に賛成した国会議員の中にもその内容をよく理解していないものが多いと言われている、“謎めいた”法律なのだ。

 5月19日の日本経済新聞(電子版)はこのように改正銀行法について報じている。

<業務の範囲が制限されてきた銀行に人材派遣やシステム販売などを新たに認める改正銀行法が19日、参院本会議で賛成多数で可決、成立した。事業会社への出資上限を原則5%(持ち株会社では15%)としてきた規制も緩め、地元産品の販売など地域経済に寄与する非上場企業には100%出資を可能とする。超低金利で事業環境が悪化した銀行の収益機会を広げる。(中略)

 海外当局に登録が済んでいて運用実績がある海外の投資ファンドが日本に参入しやすくするよう、登録手続きを簡素化する改正金融商品取引法も可決、成立した>

 この記事で注目ポイントとなるのは2つ。

「非上場企業への100%出資」を可能にしたことと、「海外投資ファンドの参入簡素化」など外資規制が緩められたことにある。つまりは「ハゲタカファンドによる日本買い」(前出・経済人)の再来が、大きな懸念として浮上しているのだ。

 かつて日本はバブル後遺症に苦しんだとき、様々な企業や資産がハゲタカファンドと呼ばれる外資系金融機関に食い荒らされた。ハゲタカという言葉は、作家・真山仁による一連の経済小説『ハゲタカ』シリーズで脚光を浴び、2007年にはNHKでドラマ化され、2018年にはテレビ朝日でドラマ化されるなど人気を博した。ドラマなどで描かれたハゲタカファンドの手口は、企業の株や債券を購入した後、自ら経営に介入し、リストラなどを行った後に売り飛ばすというものだ。

 バブル後には大手企業などがターゲットとされたが、改正銀行法により今度はコロナ禍で苦しむ非上場の優良企業がターゲットにされる可能性が高まっていると懸念されているのだ。

 金融政策に詳しい経済アナリストはこう解説する。

「改正銀行法の名目としては、地銀生き残り策を考える中でエクイティの幅を広げていくものとしていますが、もう一つの目的は外資銀行の活動範囲を広げることにあります。これまで地域で活動する外銀はわずかでしたが、改正銀行法で支店をつくりやすくなっているので、外銀・外資ファンドによる中小企業の買収活動が活発化する可能性は高い。昨年の外為法改正により上場企業株式については外資の存在に国が目を光らせるようになりましたが、中小企業は監視対象外です。中小企業が債権売却、外銀がそれを購入し、DES(デット・エクイティ・スワップ:企業の債務を株式に転換して財務を改善する手法)による経営権掌握という流れが今後多くなることが容易に想像できます。

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