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生活困窮者自立支援金も住居確保給付金も“穴だらけ”…来年3月以降、破産者続出?

文=編集部
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厚生労働省公式サイトより

 新型コロナウイルス感染症の拡大がトリガーになり、脆弱な生活基盤ながらも「なんとかやりくりできていた人々」が一気に貧困状態に転落する。そんな実態が少しずつ明らかになってきている。コロナ禍の生活困窮者などの相談に電話で応じている「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る何でも電話相談会」は今月3日、衆議院第1会館内で会見を開き、昨年4月から1年間の相談内容の結果を公表。「相談者の預貯金の中央値は2万円」「全体の55.9%が減収」「約35%に借金や滞納がある」などという厳しいデータを示した上で、国の支援の必要性を強調した。コロナ禍で進む貧困は今、どのように進行しているのか。

相談者の約半数が無職

 相談会は労働組合や弁護士、司法書士、社会福祉士、作家らのボランティアがつくる実行委員会が主催。昨年4月から、2ヵ月に1回に開催され、今月12日までに計8回開催された。第1~7回までの相談件数は9161件。このうち第3~7回の2970件について、立教大学コミュニティ福祉学部の後藤広史准教授が相談者の属性・相談内容の詳細分析を行った。

 後藤准教授の分析によると、「電話相談」という手法から相談者の平均年齢は56.1歳。相談者の職業上の地位の変遷については以下の通りになったという。

・自営業者 2020年10月、12月にいったん減少したものの、その後の相談者の4分の1を占める。

・非正規の割合は漸減傾向。一方で無職が増え、直近の4月には約47%。

・無職のうち、失職したと考えられる者は、確認できた範囲で136人。

 年齢・職業上の地位に関しては、年齢が上がるにつれて、自営業等の割合が増加し、65歳以上では働いている人の約25%が自営業だった。49歳以下では非正規労働者の割合が29.4%。無職者の年齢別の割合は65歳以上の50.9%、49歳以下の36.6%、50~64歳の41.5%だった。男性は自営業、正規雇用の割合が高く、女性は非正規の割合が高かった。

49歳以下の4割が貯金ゼロ、約4割が家賃やローンなどを滞納

 収入の増減に関して回答があった800人のうち、55.9%が減収したという。特に今年2月の相談者では71.7%が減収したと回答したという。借金や滞納の有無に関して回答した1208人中、約35%に借金や滞納があり、その内訳は住宅ローンが29.6%で最多、次いで家賃が21.2%、公的保険料18.5%、税16.8%で、「住まいに関わる滞納が目立つ」としている。

 さらに深刻なのは相談者(本人)の預貯金だ。相談者の預貯金の中央値は2万円。0円が41%、1~10万円未満が23%という結果だった。特に49歳以下の相談者222人のうち、預貯金0円の割合は95人42.8%だった。

 相談内容の種類は「生活費問題」が各相談会で最も多く40%強。「給付金・助成金」に関しては今年2月以降増加傾向にあり、「労働問題」は企業の四半期決算の節目にあたる昨年8月、12月で割合が高かった。

「貧困状態者の住居確保が困難に」

 一連の電話相談のデータ分析を踏まえ、後藤准教授は次のように提言した。

「相談者全体に言えることですが、預貯金がかなり少ない。これが支出の項目の中で大きなウエイトを占める住宅関連の滞納につながっていると思われます。一方で、生活保護へのスティグマ(負のイメージ)が強いです。住居確保給付金はスティグマも少なく、制度へのアクセスビリティが高いことをかえりみると、当面はこれを拡充・持続していくことが必要だと思われます。

 住居を失うと、貧困状態にある人たちへの支援からホームレス支援へと政策のカテゴリーが変える必要があります。住居があるうちに支援するほうが、本人にとっても支援する側にとっても楽であり、ホームレス状態を防ぐことが一義的には重要だと考えています」

 また、一方で「これがコロナ禍によるものなのか、コロナ禍をトリガーとして、元からあった日本のセーフティネットの脆弱性が顕在化したのかを良く調べる必要性があると思います」とも語った。

このままでは来年3月末の償還据置期間終了後、破産者が続出?

 電話相談の運営者の1人、小久保哲郎弁護士は現状のコロナ禍での政府支援の不備に関して以下のように指摘する。

「政府が今年になって新たに打ち出した生活困窮者自立支援金は、これまでの特例貸付(緊急小口資金や総合支援資金など)の限度額200万円を借り切らないと受けられない矛盾がある。それで支援金を受けられたとしても、月額6万円(単身)、8万円(2人家族)、10万円(3人以上)というセコさです。とにかく政府には『貸付至上主義』のドグマがあると思います。このままでは来年3月末の(生活困窮者に対する特例貸付けの償還)据置期間終了後、破産者または借金返済による生活苦が増産されることになってしまいます」

 厚生労働省によると緊急小口資金は「新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、休業等による収入の減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯」、総合支援資金は「新型コロナウイルスの影響を受けて、収入の減少や失業等により生活に困窮し、日常生活の維持が困難となっている世帯」が対象だ。

 緊急小口資金の上限額は20万円、総合支援資金は2人以上の世帯で月20万円以内、単身世帯で月15万円以内、期間は最大3ヶ月なっている。いずれもあくまで貸付であり、いずれ償還しなければならない。償還が免除されるのは「住民税非課税世帯」のみだ。

住居確保給付金は持ち家家庭は対象外→続くローン地獄

 そうした政府の貸付に比べ、心理的に受給しやすいという住居確保給付金にも穴はあるようだ。中学生の息子を育てる東京都区内の40代のシングルマザーは次のように将来の不安を語る。

「都内の大手企業の契約社員でしたが、コロナ禍に伴う緊急事態宣言もあり、5月末に契約が更新されませんでした。昨年の夏ごろから、会社は開店休業状態でしたが、今年に入ってからはほぼ半数の社員に仕事がない状況でした。副業も認められ、会社からは暗に『自分で稼げ』と言われているように感じていました。

 今は水道料金の検針員をしてなんとか糊口をしのいでいます。今住んでいるマンションは、離婚後、私と元夫と折半してローンを支払っていました。元夫は正社員だったものの解職されたらしく昨年末くらいから連絡がとれなくなっています。養育費の支払いも止まったままです。

 住居確保給付金は、持ち家は対象外です。売却して賃貸に引っ越すにしても、そもそも夫の所在が不明なので、マンションの売却契約ができません。しかも不動産価格の下落で今、仲介会社からはマンションを売却してもローンの全額返済は難しいと言われてしまったので、ローンを支払い続けいます。

 そうした支払いで給料の半分以上が飛んでいき、みるみるうちに貯金が目減りしました。今は5万円を切っています。当座の子どもの養育費と食費だけでもねん出しなければならないので緊急小口資金を借入れようと思っています。年齢も年齢ですし、これから良い仕事に就けるかどうかもわからず、返していけるか不安です」

 コロナ禍で困窮する人々の状態は千差万別だ。政府が壊れたレコードのように繰り返す「きめ細やかな困窮者対策」は、実際のところ“穴だらけ”というのが実情のようだ。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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