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渡辺陽一郎「いちばん詳しい『人気の新車』完全ガイドシリーズ」

ジムニー、今も納期1年以上で中古車価格が高騰…人気の秘密と販売好調の理由を徹底解説

文=渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト
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ジムニー|スズキ – スズキ株式会社」より

どんなクルマなのか?

 スズキジムニー」は軽自動車サイズのSUVですが、スズキ「ハスラー」やダイハツ「タフト」のような前輪駆動を基本にしたシティ派モデルではありません。後輪駆動をベースにした4WDを搭載する悪路向けのSUVです。トヨタ「ランドクルーザー」を小さくしたようなクルマです。ボディ、エンジン、サスペンションなどは梯型のフレームに装着されて耐久性を高めました。4WDには悪路で駆動力を増強できる副変速機も採用されています。

 ボディが軽自動車サイズなので、曲がりくねった道幅の狭い林道にも最適です。そのためにジムニーの悪路走破力は、日本で購入できるSUVでは最も優れています。なおジムニーのボディに、直列4気筒1.5Lエンジンを搭載した小型車の「ジムニーシエラ」も用意されています。

人気を得ている理由

 ジムニーは悪路向けのSUVとしては、きわめて好調に売れています。2021年1~6月には1カ月平均で約3700台が販売され、この数字は売れ筋になる軽乗用車のホンダ「N-WGN」に近いです。

 好調に売られる背景には、最近のSUVに見られる原点回帰のトレンドがあります。今はSUVが人気のカテゴリーになりましたが、売れ筋は「ハリアー」「ヤリスクロス」「ヴェゼル」といったシティ派です。カッコ良くてワゴンのように快適に使えることから人気を高めましたが、最近はこのタイプが増えすぎた傾向も見られます。

 そこで、SUVの原点に帰った野性的な車種が注目されるようになりました。輸入車では「ジープラングラー」が、メルセデスベンツ「Aクラス」や「フォルクスワーゲンポロ」などに混ざって好調に売れています。日本車では、前輪駆動をベースにしながら悪路走破力を高めた「RAV4」が人気を高めました。

 そして、原点回帰のトレンドに沿った野性的な悪路向けSUVは車種が限られ、ランドクルーザー(プラドを含む)やジープラングラーは、ボディが大きくて価格も高いです。つまり、日本で手軽に購入できるコンパクトな悪路向けSUVは、ジムニーと同シエラだけなので、需要が集中して好調に売れています。

気になる8つのポイントチェック&星取り採点

(1)居住空間の広さとシートの座り心地

★★☆☆☆

 前席は適度な空間があってシートの座り心地も快適ですが、後席は足元が狭いです。クーペに近い広さです。

(2)荷物の積みやすさとシートアレンジ

★★☆☆☆

 荷室の広さも最小限度です。大きな荷物を積むときは、後席を畳む必要があります。荷室高も不足しています。

(3)視界や小回り性能など運転のしやすさ

★★★★★

 軽自動車では小回り性能はあまり良くないですが、走破力の高い悪路向けのSUVでは、抜群に運転しやすいです。

(4)加速力やカーブを曲がるときの安定性

★★★☆☆

 先代型に比べると安定性を向上させましたが、操舵感は鈍めで曲がりにくく感じます。動力性能は平均的です。

(5)乗り心地と内装の質感などの快適性

★★★☆☆

 足まわりが悪路向けなので、乗り心地は硬めで前後方向の揺れも感じます。内装のつくりや質感は満足できます。

(6)燃費性能とエコカー減税

★★☆☆☆

 4速ATのWLTCモード燃費は13.2km/Lです。この数値は2Lエンジンを積んだハリアーやRAV4よりも悪いです。

(7)安全装備の充実度

★★★★☆

 衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、サイド&カーテンエアバッグなどが用意されて安全性を高めました。

(8)価格の割安感

★★★★☆

 軽自動車では高価格ですが、後輪駆動をベースにした4WDを備える悪路向けのSUVとしては価格が割安です。

選ぶときに確かめたい3つのメリット

・悪路走破力を高める副変速機を備えた4WDシステムなどを確認しましょう。

・直線基調のボディで四隅の位置もわかりやすく、運転しやすいです。

・メーターの視認性、スイッチの操作性、前席の乗降性などが優れています。

後悔しないための3つの要チェックポイント

・後輪駆動がベースだからボンネットが長く、後席と荷室のスペースは狭いです。

・悪路向けのSUVだから、舗装路では操舵感が鈍めで乗り心地も良くないです。

・ATが4速になる影響もあって燃料消費量が多く、動力性能は特に高くないです。

こんなユーザーにおすすめ

 ボディが小さいので、街中を中心に舗装路だけを走る使い方も可能ですが、ジムニーの真価を発揮できません。特にジムニーの4WDには、カーブを曲がるときに前後輪の回転数を調節する機能が装着されないので、舗装路は後輪駆動の2WDで走ります。そうしないと4WDシステムを破損する心配があるからです。4WDは滑りやすい路面だけで使うため、舗装路だけを走ると、4WDの機能も活用できません。

 こういった点も考慮すると、ジムニーには悪路や雪道などを走る機会の多いユーザーがふさわしいです。また、後席と荷室が狭いので、ファミリーには不向きです。2名以内で乗車するユーザーに適しています。

今後のモデルチェンジ予想

 悪路向けのSUVは、商用車と同様、フルモデルチェンジを行う周期が長いです。特にジムニーは軽自動車で価格が比較的安いため、開発費用などを償却するには大量に生産する必要があります。

 それなのに一般の乗用車に比べると、1年間の販売台数が少ないため、長くつくります。そこで先代型は、20年間にわたりフルモデルチェンジをしませんでした。

 従って現行型も長くつくるでしょう。発売は2018年なので、当分の間、モデルチェンジは行いません。販売店によると「今でも納期は1年以上」とのことなので、販売促進のための特別仕様車を追加する必要もありません。しばらく現状を保ちます。

最近の販売状況と安く買うための商談方法

 前述の通りジムニーは生産規模のわりに受注台数が多く、納期は今でも1年以上と長いです。販売店によると「発売当初に比べて生産台数を増やしましたが(発売直後の販売台数は1カ月に約1900台で今は約3700台)、納期は縮まりません。今後の見通しもわかりません」と述べています。

 そのために中古車市場では、現行ジムニーが新車価格を超えるほどの高値で売られています。購入しにくい状態が続いています。

リセールバリュー/数年後に売却するときの価値

 現時点では新車の納期が長く、中古車価格も高額なので、好条件で売却できます。新車の納期が落ち着けば売却額も下がりますが、それでも好条件を維持します。

これが結論!/このクルマの総合評価&コメント

★★★★☆

 2名以内の乗車で、悪路や雪道を走る機会の多いユーザーには、選ぶ価値の高いクルマです。悪路向けのSUVなので、運転すると多少の違和感は生じますが、雪道などでは走破力が高く扱いやすいです。積雪地域の移動手段にはピッタリです。

 またホイールベース(前輪と後輪の間隔)が2250mmと短く、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)には205mmの余裕があるため、デコボコも乗り越えやすいです。これも悪路走破力を高める大切な要素ですが、自宅と道路の間に普通の乗用車では乗り越えられない大きな段差があり、そこを通過するためにジムニーを選ぶユーザーもいます。

 ジムニーはスズキ「スペーシア」やホンダ「N-BOX」とは異なる軽自動車ですが、日本のユーザーの生活に密着していることは共通です。グレードは3種類を用意しています。最も推奨できるグレードは、LEDヘッドランプなどを標準装着した上級のXC(187万5500円/4速AT)になります。

(文=渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト)

渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト

渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト

1961年生まれ。神奈川大学卒業。1985年に自動車雑誌を中心に扱うアポロ出版株式会社に入社。その後、同社で複数の自動車雑誌やアウトドア雑誌を手掛け、1989年に自動車購入ガイド誌「月刊くるま選び」の編集長に。1997年にはアポロ出版株式会社の取締役も兼任。2001年6月に40歳を迎え、同月に「カーライフジャーナリスト」の肩書でフリーランスに転向。

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