
僕の子供の頃から、どこにでも売っていた井村屋の「あずきバー」。超ロングセラーですが最近、またブームが到来して売り上げも大きく上がっているそうです。一番好きなアイスキャンディとはいかなくても、ベスト5くらいに入っているという方も多いかと思います。
そんなあずきバーをあらためて食べてみると、「こんなに固かったかなあ?」と思うくらい固いのです。インターネットで探ってみても、「固さがどんどん増している」と話題になっているようで、実際に井村屋も認めています。
そもそも、あずきバーは素材のあずきの良さを味わってもらうために、通常のアイスに比べて空気が少なく、柔らかさを出すために加えられる乳原料を使っていないそうです。つまり、あずきバーの固さは小豆の素材感を追求した結果なのです。
特に最近は甘さ控えめが好まれることから、砂糖を減らし、相対的に全体に占める氷の割合が高くなり、固くなっているようです。そういえば、以前よりも甘さも控えめです。そんな事情も知らずに、子供時代の頃のようにガブリとかじりついたところ、治療中の仮歯が取れてしまいました。
素材の味を100%生かすために、”小豆だけ”にこだわっている井村屋のあずきバー。実は、オーケストラの楽器にも似たようなことがあります。
まずは弦楽器です。ヴァイオリンなどの弦楽器は、木材で制作された楽器自体が音を出すのではなく、楽器に張られた弦を、弓に張られた毛でこすって音をつくり、それが楽器を通して美しい音を出す仕組みです。その弓の毛は、馬のしっぽの毛でないといけないのです。今の時代になっても、ナイロン糸を1本混ぜ込むだけでも絶対にダメで、どうしても馬のしっぽだけです。160本程度のしっぽの毛を束ねて弓に張ってありますが、なかでもモンゴル産の白馬の毛が最高品だそうです。世界中のヴァイオリニストが、モンゴルの馬のしっぽの毛で、モーツァルトやベートーヴェンを弾いているのです。
弦は羊の腸です。とはいえ、現在の主流はスチール製やナイロン製ですが、20世紀半ばごろまでは、羊の腸でつくられていました。今もなお、羊の腸の弦だけが出せる独特な音にこだわっている奏者も多く、馬のしっぽと羊の腸という、動物の素材にこだわったのが弦楽器です。日本の代表的な弦楽器のひとつの三味線も、猫や犬の皮でないと本当に良い音が出ないといわれているのと似ています。
フルート以外の木管楽器、オーボエやクラリネット、バスーンも素材100%にこだわっている楽器です。こちらも楽器自体より、実際に音をつくり出すリードにこだわりがあり、アシ100%なのです。アシとは、川べりや湖沼によく生えている植物です。もちろん、アシならなんでもいいというわけではなく、日本ではダンチクと呼ばれている種類のアシです。そのアシを削り、形を整え、楽器に取り付けて音を出します。最近では、プラスチック製のリードも出始めているそうですが、やはりダンチク・アシでつくったリードでないとダメだそうです。