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サントリー、死角なき“着実”経営の研究…好調支えるマーケティング&買収・提携戦略

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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サントリー「伊右衛門 緑茶」(サイト「Amazon」より)

 緑茶の「伊右衛門」など清涼飲料水を販売する、サントリー食品インターナショナルが1~6月期の業績を発表した。営業利益は前年同期から69.1%増加の604億円だった。それは2019年上期の営業利益(509 億円)を上回った。同社の収益力は強化されている。

 その背景には2つの重要な要因がありそうだ。1つ目は、国内清涼飲料水市場でのマーケティング戦略がある。2つ目は、欧州やアジア新興国市場など海外市場での買収および提携戦略だ。1~6月期の業績回復はこの2つの要素がうまく機能したことに支えられている。

 今後の展開を考えた時、世界経済全体で健康への意識は高まるだろう。それに加えて、世界各国の政府や企業は、気候変動や環境問題にもより強く取り組まなければならない。健康と環境の両分野でサントリー食品がどのようにマーケティング、および買収・提携などの戦略を実行するか、注目が集まるだろう。

国内清涼飲料水市場でのマーケティング戦略

 2021年1~6月期、サントリー食品の国内の売上収益は前年同期比0.2%減の2,980億円だった。その一方で国内事業の利益は増加した。その背景には、コストの削減に加えて、同社のブランド戦略がある。

 サントリー食品は「サントリー天然水」、コーヒー飲料などの「BOSS」、緑茶の「伊右衛門」、「GREEN DA・KA・RA」など有力なブランドを持つ。現在、ブランド販売数量全体の65%を天然水、BOSS、伊右衛門が占める。注目したいのが、国内での販売数量全体が回復するなかで、天然水と伊右衛門の販売数量の伸びが顕著なことだ。

 それを支えるのが、高付加価値を目指すブランド戦略だ。例えばサントリー食品は「南アルプスの天然水&ヨーグリーナ」のように、天然水に新しい価値を付加して競合商品との差別化を徹底し、顧客の支持を得た。同じことは、「特茶」や「京都の高級なお茶」というイメージを持つ伊右衛門にも当てはまる。

 また、わが国では人々の健康への意識が高まっている。特に、コロナ禍の発生によって健康に気をつかう人はこれまで以上に増えただろう。カロリー摂取を控える人の増加によって、代替肉への需要が高まっていることは顕著な変化だ。健康意識の高まりは、天然水や緑茶飲料への需要を高め、新しい体験を提供してきた天然水と伊右衛門が特に強く支持されたと考察できる。

 以上をマーケティング理論の5Aから分析すると、消費者(顧客)はテレビコマーシャルなどでサントリー食品の清涼飲料水の存在を知り(認知=Aware)、天然水や伊右衛門など特定のブランドに関心をもつ(訴求=Appeal)。その上で重要なのが、今日の消費者はSNSによって多種多様な情報に触れることだ。消費者は自分が気に入ったブランドを周囲がどう評価しているかをSNSなどで調べ、天然水や伊右衛門の良さを確認する(調査=Ask)。良いと確信が得られれば消費者はそのブランドを買い(行動=Act)、再購入し周囲に「これは良い」とSNSで発信する(推奨=Advocate)。サントリー食品はブランド戦略の強化によって健康を大切にしたい顧客の共感を獲得したと評価できる。

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