家電量販店大手、ヤマダホールディングス(HD)とホームセンターのアークランドサカモトが店舗開発で業務提携した。両社は2022年から、延床面積2万坪の次世代型新業態「総合生活提案型ショッピングスクエア」を展開する。家電量販店、ホームセンターという異業種が協業して、商業施設を開発・運営するのは初めてだ。3年間で6店舗の出店を計画。22年、愛知県一宮市、東京都八王子市、23年、神奈川県平塚市、石川県野々市市、24年、長野県須坂市、大阪府茨木市に出店する予定だ。
大型駐車場完備の広大な敷地に家電量販店(約4000坪)、広域商圏型スーパー(約1000坪)、アークランドサカモトのホームセンター(約6000坪)、SDGs(持続可能な開発目標)対応型スマートハウス展示場、専門店街を形成する。店舗には超大型の太陽光発電装置を設置し、地域の防災拠点として非常用自家発電装置・給水設備を備え、サスティナブル(環境を破壊せずに維持・継続できる)社会を目指す。
9月22日の東京株式市場でアークランドサカモト株が一時、前日比104円高の1843円を付けた。ヤマダHDとのコラボが業績に貢献することを期待した買いが入った。新潟県が地盤のアークランド(本社は新潟県三条市、東証1部上場)の2021年3~8月期の連結決算の売上高は前年同期比2.5倍の1614億円、営業利益は47%増の113億円、純利益は3倍の139億円だった。
20年11月に連結子会社にしたビバホームが寄与し、小売事業の収益が大きく増えた。とんかつ専門店「かつや」などの外食部門も堅調に推移した。22年2月期の連結決算は売上高が3650億円、営業利益223億円、純利益は195億円の見込み(決算期を2月20日から2月末日に変更したため、通期の増減率を会社側は出していない)。便宜上、21年2月期の業績と比較すると売上高は2倍、純利益は2.2倍となる。ビバホームの買収がいかに大きかったか、一目瞭然だ。
ホームセンターは戦国乱世に突入
ホームセンターは店舗数が増え続けているが、市場規模は4兆円程度で横這いが続く。新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛でDIY用品が伸びたが、ショッピングモールやドラッグストアと激しく競合している。
業界再編の口火を切ったのがアークランドサカモトである。20年6月、LIXILビバ(現・ビバホーム)を完全子会社にすると発表した。買収金額は1085億円と巨額だった。ホームセンター「ムサシ」(38店)を展開するアークランドは独立系で、超大型店という特徴を前面に押し出してきた。上場子会社でカツ丼専門店「かつや」などを運営するアークランドサービスホールディングス(東証1部上場)が成長のエンジン役を担う。
LIXILビバはLIXILグループで「ビバホーム」102店を運営。業界11位のアークランドが、2.5倍の店舗数を誇る業界6位のLIXILビバを買収したことから「小が大を呑む」下剋上買収と呼ばれた。
アークランドは首都圏に店舗を持つLIXILビバの買収をテコに、悲願としてきた首都圏への進出を果たした。この結果、業界4位のコメリ(22年3月期の売上高3820億円の予想)に次ぐ業界5位に浮上する。
アークランドとヤマダHDの組み合わせは、ニトリが島忠を買収したのに続く異業種によるホームセンター業界への進出となる。ヤマダとニトリは、家電・家具などお互いが得意とする領域に進出しあってガチンコ対決を繰り広げている。ヤマダはいつ、アークランドと資本提携するのか。戦国時代に突入したホームセンター業界の最大の見どころだ。それともう一つ。ヤマダが外食に本格進出するのかと取り沙汰されている。
両社の連携はいろいろな可能性を秘めながら出発進行する。出足がよければ、提携のウイングは一層広がりを見せるかもしれない。
(文=編集部)