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抜群の高収益企業・東映アニメ、親会社の東映の時価総額の2倍に…抱えた問題

文=編集部
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 親子上場の解消は待ったなしだ。注目銘柄のひとつが、東証1部上場の映画の東映と、ジャスダック上場のアニメ制作会社の東映アニメーションである。東証で準備が進む市場再編が親子上場解消の背中を押す。東証1部、2部、ジャスダック、マザーズの4つの市場が2022年4月4日、プライム、スタンダード、グロースの3市場に再編される。

 現在の東証1部上場企業の多くは、最上位市場に位置付けられるプライムに移るとされるからだ。実現するためには、「流通株式比率35%以上」といった基準をクリアしなければならない。ジャスダックに上場している銘柄についても「25%以上」の流通株式比率が求められる。流通株式比率とは、発行済み株式数から10%以上所有する主要株主や企業同士の持ち合い株式などを除いた株式の割合を示す数字だ。

 東映アニメ―ションの大株主は、第1位で親会社の東映(持ち株比率33.57%)、以下、テレビ朝日(19.64%)。バンダイナムコホールディングス(10.08%)、フジ・メディア・ホールディングス(10.07%)と続く。21年3月末の大株主比率は87.93%に達する。東映アニメは新市場区分で求められる「流通株式比率25%以上」をクリアできていないとみられている。

 親会社の東映がTOB(株式公開買い付け)を実施して親子上場を解消するのも一案だ。しかし、東映アニメの時価総額は東映の2.2倍。親子関係が完全に逆転しているのである。

東映アニメの時価総額は一時、1兆円の大台に

 2社の評価に、これだけの差がついたのはこの1年のことだ。20年6月には約2100億円とほぼ同程度だった時価総額の差が急激に開いた。

 東映アニメの株価は連日、上場来高値を更新。9月15日に史上最高値の2万5110円をつけ、前日比6.72%高の2万4920円で取引を終えた。終値時点の時価総額は1兆466億円。初めて1兆円の大台を突破した。東証ジャスダック市場で時価総額でトップに立った。「東映がTOBを実施するのではないか」との思惑から買われた。

 東映アニメは00年12月に株式を公開した。公募価格は4300円(株式分割前)、当時の時価総額は301億円だった。それが21年間で約35倍に膨れ上がった。同社は1948年に創業した国内でもっとも歴史が長いアニメーション制作の老舗だ。2022年3月期の連結決算の売上高は前期比1.2%減の510億円、営業利益は6.5%減の140億円、純利益は7.8%減の102億円を見込む。

 今期、売り上げを計上する予定だった大型劇場作品の公開が来期以降にずれ込むため減収減益となるが、利益率が高い海外の版権事業で「ドラゴンボール」シリーズや「ワンピース」、「デジモンアドベンチャー」が寄与する。

 売上規模は大きくはないが、売上高営業利益率は28.4%と抜群の高収益企業なのだ。対する親会社の東映の22年3月期の連結決算は、売上高が前期比0.6%減の1070億円、営業利益は6.1%減の122億円、純利益は14.9%減の62億円を予定している。

 東映の21年3月期の実績を見ると、映画・アニメなど「映像関連・興行関連事業」の連結売上高が8割超を占める。東映アニメが連結売り上げに占める比率は、過去5年で4割弱から5割強に高まった。

 コロナ禍で東映の経営環境は厳しい。映画館など興行関連の売り上げが半減し、配給など映像関連も減った。東映アニメの海外版権ビジネスがそれを補っているという構図である。親子上場を解消する早道は、東映がTOBで東映アニメ株を買い取ることだが、東映アニメの時価総額が高いことからコスト高が大きなネックになっている。

 11月5日終値時点の時価総額は、東映アニメが7757億円、東映が3410億円。2.2倍の格差がある。東映以外の株主が持つ株式を取得するのに5000億円規模の資金が必要になると試算されている。東映の総資産(3241億円=21年3月期)をはるかに超える金額である。

 東映アニメを東映の完全子会社化して上場廃止にするのか。東映が株式放出し流通株式比率を高めて、プライム市場、あるいはその他の新市場で上場を維持するのか。東映は待ったなしの選択を迫られている。

流通株式比率が20%を下回る親子上場銘柄

 流通株式比率が20%を下回る親子上場銘柄は9銘柄あるとされる。東証1部上場のゆうちょ銀行は時価総額4兆円を超える巨大企業だが、プライムへの移行基準の「流通株式比率35%以上」が未達であるため、関係者の関心を集めている。親会社の日本郵政が株式の74.16%を保有しているからだ。

 日本郵政は25年度までの中期経営計画で、ゆうちょ銀への出資比率を50%以下にするとしており、それに呼応して、ゆうちょ銀も「プライム市場残留を目指す」と“公約”済みだ。イオングループも注目だ。イオンは地域子会社を次々と上場させてきたが、そのツケが回ってきた。イオンが75.50%出資するイオン北海道、72.81%出資のマックスバリュ西日本、75.11%出資のイオン九州をどうするのかである。交通整理が必要になろう。流通株式比率が低い親子上場銘柄は親会社の資本政策で命運が決まることになる。

メルカリはプライムへの移行を準備

 フリマアプリ大手のメルカリはプライム市場への移行を表明した。10月29日、2021年7~9月連結決算を発表したが、「プライム市場への申請準備を進める」と明言した。「知名度向上や優秀な人材を確保するための基盤をつくる」のが目的だ。

 ただし、22年4月の移行日には新興企業向けのグロース市場に移り、市場再編後にプライム市場を目指す、という2段階方式をとる。

BusinessJournal編集部

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