ファストリは最低投資額728万円、任天堂は505万円…個人投資家を排除する東証
東京証券取引所による2022年4月の市場再編に向けた動きが本格化しています。東京証券取引所市場第1部、いわゆる「東証1部」が、一定の条件を満たせばほぼすべての上場企業をウエルカムとしたため、2183銘柄(2021年11月24日現在)にまで膨張したことなどが大きいようです。
それ以外にも市場再編の理由はあるのですが、詳細はさまざまな専門報道等に譲るとして、筆者には再編は個人投資家を蔑ろにしているように思えてならないのです。今回の市場再編では、現在の東証1部、東証2部、JASDAQ、東証マザーズの4つの市場を「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つに再編する予定です。
筆者が個人投資家を蔑ろにしていると思えるのは、過去「貯蓄から投資へ」、現在は「貯蓄から資産形成へ」と個人が保有する貯蓄(現金・預金)を株式市場(投資信託を含む)に促す御旗が何度となく振られているにもかかわらず、個人投資家がなかなか購入することができない個別銘柄が多数あるからです。
2021年に入ってもたびたび過去最高値を更新している米国の株式市場。アマゾン、アップル、テスラなど世界的に有名な大企業は簡単に投資できないのではと思われるかもしれませんが、米国株は1株から売買は可能です。1米ドル=115円換算でアマゾンは約41万61750円、アップル同1万8620円、テスラは同12万8340円(いずれも11月24日終値)から投資できるのです。代表的な銘柄ではアマゾンやアルファベット(グーグルの親会社、約33万7450円)こそ少々高めかもしれませんが、日本の個別企業と比較すれば雲泥の差があるのです。
ファーストリテイリング(ユニクロ)は728万9000円、任天堂は505万円、ニトリホールディングスは202万3500円(いずれも11月24日終値)等々、最低投資金額が100万円超えの銘柄がゴロゴロしているのです。トヨタこそ9月末に1対5の株式分割を行い最低投資金額は21万2450円になりましたが、大多数は高株価を放っておいている状況なのです(最低投資金額は売買手数料等を考慮していません)。
個人投資家が買ってくれなくても機関投資家、あるいは投資信託(ETFを含む)が買ってくれるので大丈夫と高をくくっているのかもしれませんが、たとえばファストリ、任天堂、ニトリなどは主要顧客層は個人。であれば消費者である個人をないがしろにせず、SGDs(持続可能な開発目標)的な観点からいえば、個人(投資家)が株主となって喜んでくれる企業にする必要があると思えてならないのです。
個人投資家の資産形成を後押しするために、NISA(小額投資非課税制度)などが導入されていますが、NISAの年間非課税投資枠は120万円。ファストリ、任天堂、ニトリなどの高株価銘柄は同制度を利用しての投資ができないのです。各企業が株式分割を行って最低投資金額を引き下げる動きがないなら東証が動けばようものを、取引所が個人投資家のことを考えて動く気はないように思えてなりません。
確かに、数年前には売買単位を100株単位にくくり直しを行いましたが、それでも100万円超えの銘柄がゴロゴロしているのです。市場の再編の前に日本も米国に倣って最低投資単位を1株にくくり直すべきだと思われてならないのです。1株になれば売買は活況になり、これまで参加できなかった個人投資家の参加も期待できると思われるのです。東証さん、1株単位に売買単位をくくり直してもらえませんかね――。
(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)