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バルミューダ、「悪意はなく錯誤」説明の不可解さ…スマホ開発の発表直前に株購入

文=編集部
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バルミューダフォン(バルミューダ公式サイトより)

 家電メーカーのバルミューダ(寺尾玄代表取締役社長)は18日、『社外役員による社内規程違反に基づく社内処分に関するお知らせ』と題するプレスリリースを公表した。同社取締役会は、同社の社外役員がインサイダー取引の疑いのある取引を行ったとして、同役員に対し、5月以降の月額基本報酬を全額返上し、11月以降3月までの報酬を100%減額する処分を決議したと報告した。なお、同取引に社外役員の「悪意」はなく「錯誤」によるものとしている。

 同社は5月13日午後3時、東京証券取引所などが共同運用する「適時開示情報閲覧サービス」などを通じ、『携帯端末事業(5Gスマートフォン開発及び販売)参入のお知らせ』を公表した。一方、同社は同日午前11時、今回処分された社外役員、ジンズホールディングス代表取締役社長の田中仁氏の申請を受け、社内規定に基づいて同社株式の買付けを承認した。買付け可能期間(売買承認期間)は14日から20日だったが、田中氏は13日正午午ごろに同社株式の買い付けを行ったのだという。

 田中氏は14日午前0時ごろ、同社に対し「誤って売買承認期間外において本取引を行った」と申告。同日、取締役、監査役、東京証券取引所、証券取引等監視委員会の情報提供窓口に報告したのだという。

 なお14日、同社が上場する東証マザーズでの同社株価の終値は6790.0円のストップ高 で、前日比+17.27%となっていた。

 今回の処分に関するプレスリリースによる経緯は以下の通り。原文ママで引用する。

<1.社内規程違反の内容

 当社は、社外役員に対し、内部者取引の未然防止に関して定めた社内規程(以下「社内規程」という。)に規定する手続に基づき、2021年5月13日午前11 時頃に、同月14日から同月20日までの期間(以下「売買承認期間」といいます。)において当社株式の買付けに関する承認を行いました。社外役員は、売買承認期間に対する錯誤から、売買承認期間外である同月13日正午頃に当社株式の買付けを行い、結果として内部者取引に該当するおそれのある当社株式の買付け取引(以下「本取引」といいます。)を行うこととなり、社内規程に違反するに至りました。

2.本取引発生から、本処分までの対応

 当社は、本取引が行われた 2021 年5月13日の24時頃に、社外役員より、誤って売買承認期間外において本取引を行った旨の申出を受け、当該申出をもとに事実確認を行うとともに、翌14日には、東京証券取引所及び証券取引等監視委員会の情報提供窓口(以下、あわせて「関係機関」といいます。)に報告し、取締役及び監査役へも事実関係の報告を行いました。

 当社としましては、当時、本取引に関連する社内調査の結果、社外役員が、本取引に際して社内規程に基づく承認を取得していること、本取引の注文を行った当日中にはその旨を当社に申し出ていることから、本取引は売買承認期間に関する錯誤によって行われたものであり、悪意をもって行われたものではないと考えておりました。他方で、関係機関への報告を行っていたため、法令等に基づく調査があれば協力し、その処分が出された際に当社としての対応を検討するとの認識でおりました。

3.本処分に至った理由

 本取引に関しては、法令等に基づく調査に対して誠実に対応していくことを考えておりました。今般、新しいコーポレートガバナンス・コードへの対応を検討していく中で、本取引への対応に関して、金融機関、弁護士などの第三者の意見を聞くなどして、再度検証を行いました。その結果、社外役員においては、錯誤によるとはいえ、社内規程に違反したという事実に対して厳正に処分する必要があるとの認識に至りました。

 また、本取引が発覚した時点で遅滞なく社内処分の検討等を適切に行わなかったことについても、取締役会及び代表取締役社長において、しかるべき措置を講じるべきであったとの結論に至り、以下のとおり、本処分を実施いたします。なお本取引への対応に関し、監査役会からも反省すべき事案である、と意見表明されております。>

売買承認期間の「錯誤」はあり得るのか?

 同社の処分公表に対し、大手証券会社関係者はいぶかしむ。

証券取引等監視委員会が管轄するインサイダー取引規制では、上場会社の役職員等の会社関係者が、事業等に関する重要事実を、自身の職務等に関して知った場合、その『重要事実』が公表される前に、その会社の株式の売買をしてはならないことになっています。

 一般的に『重要事実の公表』というのは、東証などが運営しているTDnetを通じて、証券取引所などに対しリアルタイムで通知・公表することを指します。インサイダーに関していえば、それがいつ公表されたのかが重要になるので、こうした案件で自社株を購入する際は、『売買承認期間』を厳密に守る必要があります。少なくとも『自社取引の承認を受けた時点』とはならないのが常識といえば常識なのですが……。

 この期間内のギリギリのタイミングを狙って仕込むケースは数多くありますが、“フライング”はどうやってもアウトです。インサイダー規制が強化されて以降、多くの企業関係者、投資家は気を付けていると思います。

 いずれにしても『売買承認期間』を『錯誤する』というのは、いったいどういう状態で起こり得るのか。非常に不可解です」

 今回のインサイダー疑惑発覚を受けて、同社が田中氏や寺尾社長に社内規定で処分を行ったことなどを踏まえ、「重い社内処分は、当局からの課徴金逃れのための予防線ではないのか」との指摘も見られる。

 なお、バルミューダは、違反の事実発覚の翌日、当局に通報している。インサイダー取引を含む、証券取引等監視委員会が管轄する各違反行為のうち、違反者が当局の調査前に証券取引等監視委員会に対し報告を行った場合、課徴金の額を半額とする『課徴金の減算制度』の適用対象になり得る。

 証券取引等監視委員会事務局開示検査課審理係の担当者は同制度に関し、次のように説明している。

「仮に企業内で違反者が処分されても、当方の減算制度に影響することはありません。この制度は企業自身が『自分たちで常日頃から、誤りがあった場合はすぐに報告する』という自浄機能と改善姿勢を徹底していただく趣旨で定められています。なおバルミューダさんの件が今後どうなるのかというのは、同社と当委員会での調査次第となります」

(文=編集部)

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