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突然、有料プランに強制移行…楽天モバイル「0円」中止で解約続出の失態

文=竹谷栄哉/フリージャーナリスト
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楽天モバイルのHPより

「ぶっちゃけ、ずっと0円で使われても困る」――。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は13日、楽天モバイルの使用容量1GB以下まで0円としていた料金プランの見直しを発表し、こう本音を漏らした。7月1日から全ユーザーが自動移行する新料金プランでは最低料金1078円(税込、以下同)がかかる。楽天モバイルは携帯電話事業で基地局建設など多大なコストがかかっているため、収益構造の改善を図りたい考えだが、ユーザーからは「裏切られた」などネット上で批判が相次ぎ、契約解除が続出する懸念が高まっている。

突然の記者発表、自動移行がユーザーに不評、KDDIのpovoへの流出

 13日に発表された「新料金プラン」では、0〜3GBは月額1078円、3GB〜20GBは月額2178円、20GBを超過した場合は月額3278円となっている。現在の「1GB以下は0円」を撤廃したこと以外は同じ料金設定だが、「万が一のためのサブ回線として持っておきたいユーザーなどから反発が起きた」(携帯大手関係者)。さらに、突然の発表や有料プランへの強制移行も批判を強めた。

 楽天モバイルは既存ユーザーについてこれまで通り1GBまでは0円とする現行プランのままにすることも検討したが、電気通信事業法上、全ユーザー一律の移行を決断せざるを得なかったと説明している。また、プランの継続契約者には楽天ポイントでの優遇など代替措置も発表し、離反を防ごうとした。

 ただ、そうした狙いも虚しく、ユーザーの契約解除の動きが進んだとみられ、基本料金0円のプランがあるKDDIのサブブランド「povo」への申し込みが殺到する事態に発展した。同社の高橋誠社長は13日の決算会見で「povoの基本料金0円をやめる予定はない」と発言しており、今後も楽天モバイルユーザーの流出が続く可能性が高い。

楽天モバイルの「0円狙いユーザー切り」、契約者数500万人超えの自信が根拠

 楽天モバイルが今回“0円狙いのユーザー”の切り捨てを図ったのは、冒頭の三木谷氏の発言から見えるように、楽天モバイルが本格的に開始してから2年が経過し、事業会社として一定の目標水準を達成したことが大きい。急ピッチで基地局建設を進めて人口カバー率97%を達成し、契約者数は500万人を超えた。NTTドコモといった大手3社には事業規模で及ばないものの、「最低限の地歩は固めたという自信がフリーライダーに頼らなくても良いという強い判断につながった」(同)。

 楽天モバイルからすれば「ユーザーの質の転換」を図ったというわけだが、確かにユーザーから見れば0円でも楽天サイドには回線使用に伴うコストなどがかかるため、もともとキャンペーンとして始めた「1GBまで0円」をこの時期に撤廃したのは経営判断としては正しいといえる。

 問題は楽天モバイルの新プランの打ち出し方が、トライアルのキャンペーンを猶予期間として設けるなどせず、「ずっと0円で使われても困る」とユーザーを突き放すような印象を与えてしまったことだろう。今回の一件で、ユーザーから「楽天モバイルは突如として強引に料金プランを値上げするかもしれない」と懸念を持たれてしまった以上、それを払拭するには相応の時間とコストがかかるのはやはり痛手だ。

30年までに営業利益率20%超の目標、携帯事業の早期黒字化が課題

 三木谷氏は4月に開いた楽天創立25周年記念式典で、2030年までにグループの連結営業利益率(国際会計基準)を20%超とすることを目指すことを宣言した。この式典でそれまで公然と批判していた岸田文雄首相など現役閣僚を呼ぶなど、ロビイングを強化していることはすでに報じたが、その目標達成の最大の障害となっているのが携帯電話事業の赤字であり、今回の0円撤廃もこれが根底にある。

 楽天が13日に発表した22年1〜3月期連結決算では、携帯電話事業部門の1350億円の大幅な営業赤字が重石となり、全体では1126億円の営業赤字となった。楽天の携帯電話事業の大きな赤字要因は基地局整備とKDDI回線のローミングコストだ。楽天は基地局整備に楽天トラベルなど他のグループ会社の社員を動員してまで取り組んでいるが、その出費が嵩み続けている。また、KDDIへのローミングコストについても、楽天モバイルの自社回線エリアは拡大しているものの、完全に切り替えるのにはまだ時間がかかるとみられる。

 楽天は今回の「1GBまで0円」の撤廃で、これまでの無駄なコストを少しでも圧縮し、30年に定めた目標達成を目指したい考えだ。

 楽天グループには三木谷氏が決めた大方針に向けてなりふり構わず一丸となって動き出すという特質がある。それが勢いとなってうまく働く場合があるものの、楽天モバイルに限っては、昨年3月までに総務省からの7度の行政指導を受けるなど脇の甘さや拙速さが目立つ。今回の0円撤廃でもユーザーへの対応にもう少し慎重さがあれば、ここまでマイナスの印象を持たれずに済んだのではないか。携帯大手3社に対抗するにはイメージ戦略もより重要視すべきだろう。

竹谷栄哉/フリージャーナリスト

竹谷栄哉/フリージャーナリスト

食の安全保障、証券市場をはじめ、幅広い分野をカバー。

Twitter:@eiyatt.takeya

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