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日本の重電の雄・三菱重工の強烈な危機感、脱・重電で変貌…「脱炭素」に巨額投資

文=真壁昭夫/多摩大学特別招聘教授
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三菱重工業のHPより

 三菱重工業は、ビジネスモデルをダイナミックに変化させ始めている。コロナ禍が発生するまで、同社は「三菱スペースジェット(MSJ)」の開発に象徴される航空機に加えて、製鉄関連の製造装置など、どちらかといえば重厚長大な事業を中心に収益を獲得していた。特に、MSJは同社の社運をかけた事業として経営陣が強くコミットした。

 しかし、コロナ禍の発生を一つのきっかけにして、重厚長大分野を主とする従来の事業ポートフォリオの収益性は急速に低下した。特に、航空機、ジェットエンジンなどの需要の停滞は大きい。その一方で、脱炭素など世界経済の環境変化が加速した。その上にウクライナ危機をきっかけに世界全体でエネルギー資源価格が一段と上昇するなど、同社を取り巻く変化のスピードは加速している。

 生き残りをかけて三菱重工はMSJの開発を凍結するなど、事業構造の立て直しを急いでいる。そのなかで同社の経営陣は、脱炭素や物流関連など中長期的な成長期待の高い分野に経営資源を再配分している。経営陣は、過去の発想では生き残ることはできないという危機感を強め、それを組織全体で共有しようとしているように見える。今後、三菱重工を取り巻く競争環境は激化するだろう。同社経営陣に求められるのは、あきらめることなく世界経済の先端分野での事業運営体制を強化することだ。

MRJ事業凍結にみる三菱重工経営陣の危機感

 2015年夏場以降、三菱重工の株価は上値の重い状況が続いてきた。それは、世界の主要投資家が同社の中長期的な成長を期待することが徐々に難しくなったことの裏返しといえる。そのひとつとして中国経済の成長率が低下傾向となったことは大きい。2015年夏に中国では株価が大きく下落した。株価の急速な下落によって中国では個人消費や企業の設備投資が減少し、三菱重工が得意とした製鉄やエネルギー関連の製造装置やプラント関連の需要が伸び悩み始めた。その後も中国の経済成長率は低下傾向をたどり、鉄鋼や石炭など多くの分野で過剰生産能力が深刻化した。コロナ禍の発生、2020年夏場の中国不動産バブル崩壊もあり、三菱重工への逆風は強まった。

 もうひとつが2008年に事業化が決定され“日の丸ジェット機”として内外から期待を集めたMSJの収益獲得の目処がたたなかったことだ。当初、三菱重工には世界経済のグローバル化が進むことによって、ビジネスや観光などの目的での小型ジェット機需要が高まるとの見方があった。それ自体は世界経済の変化に沿った発想だったといえる。しかし、MSJの開発は当初の予定よりも大幅に遅れた。設計や機器の変更によって2020年までに6回の納入延期が発表され、開発費は1兆円を超えた。航空機設計の専門家によると、第2次世界大戦後、十分な航空機の設計や開発、および生産のノウハウと経験がないにもかかわらず、三菱重工が自前主義から脱却できなかったことは大きなマイナスの要素になったと考えられる。

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