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楽天モバイル解約者が他キャリアの草刈り場状態…0円廃止で携帯電話事業に暗雲

文=竹谷栄哉/フリージャーナリスト
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楽天モバイルの公式Twitterアカウントより

 楽天モバイルが携帯電話の使用容量1GB未満の利用料金を、現行の0円から7月以降に有料にするよう料金プランを切り替えた。これを受け離反したユーザーが他社の草刈り場となっている。KDDIやソフトバンクのサブブランドのほか、格安スマホ業者のインターネットイニシアティブ(IIJ)などが低容量低料金プランで争奪戦を展開している。月間の使用容量が1GB未満のユーザーは全体の3割を占めるとの調査結果もあり、「いくら通信料収入につながらないフリーライダーとはいえ、楽天が逃した魚は大きい」(携帯大手関係者)との声も上がる。

「povo」に2.5倍の流入、IIJも新規契約が増加、ソフトバンクも争奪戦に参入

 楽天が5月13日、これまで0円だった1GB未満の使用容量のユーザーも7月から1078円(税込、以下同)の月額最低料金がかかる新料金プランを発表した。同日の記者会見で楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が「ぶっちゃけ、ずっと0円で使われても困る」といったぶっきらぼうな発言をして反感を呼び、ネット上では「裏切られた」などの批判が上がったことはすでに報じた

 この結果、楽天モバイルからの解約者が相次ぎ、KDDIのサブブランドで基本料金0円で利用できるプラン「povo2.0」に申し込みが殺到。一時は本人確認に時間がかかるほどだった。同社の高橋誠社長は、楽天モバイルが「1GB未満0円廃止」を発表してからpovo2.0への申し込みが以前と比べて2.5倍に増えたことを明らかにしている。さらに、格安スマホのIIJも17日、本人確認などの手続きが遅れていることを発表しており、こちらも主要な流入先になっているとみられる。

 楽天モバイルから離れたユーザーの争奪戦にソフトバンクも参入した。ソフトバンクは20日、サブブランド「LINEMO」の月3GB、990円の「ミニプラン」への新規契約や乗り換えについて、月990円分のPayPayポイントを最大6カ月付与し実質半年間の無料キャンペーンを開始すると発表した。楽天が「0円廃止」を発表した13日以降の週末と4月の週末(9〜10日)を比べたところ、ミニプランの契約者が2.6倍に急増したという。

民間調査「月間使用容量1GB未満は約3割」、各社は独自の経済圏への囲い込みが主眼か

 携帯電話業界の市場調査などを手掛けるMM総研が1月に発表した昨年末時点での調査結果によると、ユーザーの月間使用容量で3GB未満は約6割、1GB未満が約3割を占めており、楽天モバイルが今回の「1GB未満0円廃止」で手放した1GB未満のユーザーは軽視できない数にのぼると考えられる。

 国内携帯電話市場が飽和状態のなか、楽天からの流入組が通信料金をまったく払わないフリーライダーであったとしても、KDDIやソフトバンクにとっては自社のECや金融といった非通信分野の利用者となってくれるメリットはある。KDDIがpovoの利用者がクレジットカード「au PAYカード」に加入すれば最大10GBを還元するキャンペーンを実施したことからもその狙いは明らかで、ソフトバンクもPayPayやヤフオクなどの利用者増につなげたい考えだ。

楽天モバイルの大赤字で「0円廃止」も、ユーザー離れは長期的にはマイナスとの見方

 そもそも楽天モバイルが今回の「0円廃止」に踏み切ったのは、収益構造の改善のためだった。楽天グループの22年1〜3月期連結決算では、携帯電話事業部門で携帯基地局の建設費用がかさみ1350億円の大幅な営業赤字となったため、使用容量が1GB未満で通信料収入が得られないばかりか回線使用などでコストがかかるユーザーを切り捨てる決断をした。楽天モバイルは事業を本格的に開始してから2年が経ち、人口カバー率97%を達成、契約者数が500万人を超えるなど事業会社として一定の成長を遂げたことも大きい。

 そもそも楽天グループがなぜ大赤字を垂れながしながら携帯電話事業を拡大してきたかといえば、楽天市場、楽天ポイントといった楽天経済圏を拡大するという目的が大前提にあったはずだ。短期的にはフリーライダーを切り捨てることが収益改善につながるのは間違いないが、長期的には経済圏が伸び悩む原因となりはしないか。

 楽天の株価も「0円廃止」の新料金プランを発表した13日は上昇したが、翌営業日の16日から23日までは下落が続いている。市場関係者は「当初は収益改善につながるとの評価で買いが優勢になったが、連日他社への乗り換えが報じられると今後楽天モバイルの新規契約が伸び悩むのではないかとの懸念が強まり、次第に売りが優勢になった」と分析する。

 前回も指摘したが、今回楽天モバイルから解約が相次いだのは、新料金プランの打ち出し方で三木谷氏が「ずっと0円で使われても困る」とユーザーを突き放すような印象を与えてしまったことが大きい。料金やサービスが基本的に各社横並びに近いため、ユーザーの信頼を損ねたことは今後の携帯電話事業の運営に少なくない支障をきたしそうだ。

竹谷栄哉/フリージャーナリスト

竹谷栄哉/フリージャーナリスト

食の安全保障、証券市場をはじめ、幅広い分野をカバー。

Twitter:@eiyatt.takeya

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