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旧村上ファンド系、コスモHDの筆頭株主に…出光との統合観測も

文=Business Journal編集部
旧村上ファンド系、コスモHDの筆頭株主に…出光との統合観測もの画像1
「Wikipedia」より

 4月6日の東京株式市場。コスモエネルギーホールディングス(HD)の株価が一時、17.9%高の3265円まで上昇した。その後、4月19日に3425円の年初来高値をつけた。今年の高値は5月17日の3665円である。村上世彰氏が関わる投資会社シティインデックスイレブンス(以下、シティ社)が実質的な筆頭株主になったことを受け、再編や株主還元策への思惑で継続して買われている。

 シティ社が関東財務局に提出した大量報告書によると、3月29日までにコスモHD株約438万株(発行済み株式の5.14%)を取得。村上氏の長女の野村絢氏もユーロ円建ての新株予約権付社債(転換社債=CB)を、およそ57万株分入手した結果、旧村上ファンド系の保有比率は合計で5.81%となった。

 4月6日には、シティ社が筆頭株主の石油精製専業・富士石油の株価も連動して高くなった。富士石油は旧アラビア石油である。シティ社は21年5月、富士石油の株式を5%取得、21年末には約10%まで買い増し、筆頭株主になった。

 同日、出光興産の株価も一時、4.4%高の3445円をつけた。石油元売りの業界再編が進むとの思惑から出光興産株にも買いが入った。出光興産の株価は3400円台で推移している。コスモHDの筆頭株主だったアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の政府系ファンド、ムバダラ・インベストメントが、保有株を売却したことがきっかけとなり、業界再編の機運が高まった。シティ社はこの間隙を突いた。

 ムバダラは07年、コスモHDの筆頭株主となり、社外取締役を2人送り込むなど経営にも関与してきたが、世界的な脱炭素の流れを受け、化石燃料以外に投資資金を振り向けると表明。21年8月、コスモHD株を一部売却し、出資比率は20.76%から15.69%に低下。22年3月に残る全株を売却した。

 村上世彰氏側はムバダラが放出した株を市場で拾い集めた。「(村上氏には)コスモHDの株式を大量に保有することで石油元売りの再編を主導したいとの思いがある」(“物言う株主”の動向に詳しいアナリスト)

石油業界の再編の第二幕

 出光興産と昭和シェル石油が経営統合した際、マーケットでは「次はコスモ」と盛んにいわれた。出光と昭和シェル石油の統合の仲立ちをした村上氏が、コスモHDをターゲットにしたことについて「予想通り、いいところを突くね」と評する市場関係者が多かった。これで俄然、石油業界の再編の第二幕が注目された。

 コスモHDは石油元売りでENEOSホールディングス、出光に次いで国内第3位だ。売上高(21年3月期)は1位7.6兆円、2位4.5兆円、3位2.2兆円だ。2位と3位の連合でENEOSに対抗すると考えるのが普通だ。ENEOSの株価は5月23日に525.4円と年初来高値を更新した。

 村上氏は旧通商産業省(現経済産業省)の官僚として、石油政策に関わった経歴を持つ。18年の出光興産と昭和シェル石油の経営統合では、統合に反対した出光創業家との間を取り持つなど再編を後押しした。「2つほどの企業グループに収斂させて、適正な競争の下で供給と価格の安定が両立するのが望ましい」というのが村上氏の持論だ。

「村上氏は出光の創業家を説得したことで、出光の経営陣に“恩を売った”。出光とはパイプがある。コスモHDの筆頭株主になったことで、両社の統合へ動くのでないか」(エネルギー業界担当のアナリスト)

 石油元売りとセットで川下のガソリンスタンドの再編が視野に入ってくる。スタンドは地方の名士が経営していることが多いが、先行き不透明なうえに、EV(電気自動車)の充電設備の拡充や水素ステーションの新設など莫大な新規投資が必要になる。

クレディセゾンとオリックス

 このところ、半導体商社やゼネコンの再編を仕掛けるなど村上氏の剛腕ぶりが目立つ。石油元売りを並んで関心を呼んでいるのがゼネコン、マリコンである。東日本大震災の復興や東京五輪で建設投資は60兆円台に乗ったが、ピークアウトするとの見方が強く、生き残りを賭けたM&Aに発展した。

 旧村上ファンドはシティ社などの名義で三井住友建設、大豊建設、東亜建設工業、東洋建設の株式を保有している。西松建設に対して、シティ社が大豊建設との経営統合を繰り返し提案していたことが、西松建設の株主総会の招集通知に明記されたことでわかった。西松建設は21年10月、TOB(株式公開買い付け)でシティ社が保有している株式を買い取り、最終的に伊藤忠商事がホワイトナイトとして登場し、西松建設の筆頭株主になった。

「西松建設で上げた利益をシティ社はどこに振り向けるのか」と噂された。21年末、三井住友建設株を買ったことが判明したが、同社のバックには三井住友フィナンシャルグループがおり、ホワイトナイトは見つけやすい。21年4月、三井住友銀行出身者が三井住友建設の社長になったばかりだ。資材価格の高騰やロシアのウクライナ侵攻で発生した木材の不足(ウッドショック)などで建設業界は揺れている。

 旧村上ファンド旋風はまだまだ続く。4月18日、クレディセゾンがストップ高(300円高)の1637円で年初来の高値を更新した。4月20日には1642円まで株価は上伸した。これが今年の高値である。シティ社が4月15日の取引終了後、5.06%の新規取得の大量保有報告書を提出したためだ。セントラル硝子株の買い増しも判明した。セントラル硝子株は5月23日に2673円の年初来高値をつけた。

 M&A業界では、「クレディセゾンとオリックスの合併が次の大きなテーマになる」と見られている。かつてオリックスを率いる宮内義彦氏がクレディセゾンの当時の社長だった林野宏氏(現会長)に経営統合を働きかけたが、クレディセゾンと業務提携していたみずほフィナンシャルグループの反対で潰れたといわれている。クレディセゾンは2019年、みずほFGとの業務提携を解消しており、反対する勢力はいなくなった。旧村上ファンド旋風はノンバンク業界でも巻き起こるのであろうか。

(文=Business Journal編集部)

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