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木下隆之「クルマ激辛定食」

ホンダ・新ステップワゴン、圧倒的な快適さ!開発責任者「3列目が特等席」

文=木下隆之/レーシングドライバー
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ホンダ・新ステップワゴン、圧倒的な快適さ!

 本田技研工業(ホンダ)が、主力ミニバン「ステップワゴン」のフルモデルチェンジを敢行。装いも新たに誕生した。印象的なのは、「ミニバンネイティブ世代」を意識したつくり込みである。

 ミニバンがファミリーカーの主要モデルになって久しい。生まれながらにしてミニバンのある生活を過ごしたユーザーが多いことに着目。「家族のための大空間」をコンセプトに掲げた。だから、クルマというよりも、むしろリビンクであるかのような居心地のいい配慮が行き届いている。

 インテリアの造形はシンブルである。ダッシュボードには一切の凹凸がなく水平基調である。それはリビングの棚のようなしつらえだ。左右の窓枠も、路面に水平に真っ直ぐに延びる。うねらせたり捻らせたりするのが流行の中、気をてらうことなくすっきりとした空間にしていることは好感が持てる。

 たとえば天井も、すっきりとフラットが保たれている。自動車である以上、天井付近にも剛性を保つ必要から、ルーフを鉄板で補強する。それが凹凸となり機械的な印象を与えてしまう。だが、ステップワゴンは気持ちいいほどすっきりとした空間を確保しているのだ。

ホンダ・新ステップワゴン、圧倒的な快適さ!開発責任者「3列目が特等席」の画像2

 特徴的なのは、2列目や3列目の快適性を高めたことだ。2列目の座面は1列目より40mm高い。3列目は70mmも嵩上げされている。それゆえに、後列からも前方の視界が確保されている。学舎の階段教室であるかのように、あるいは映画館の座席のように、前方が見渡せるのは気持ちいい。例のすっきりとした天井や直線的に伸びる窓枠の効果もあって、3列目の圧迫感も少ない。

 しかも、3列目シートの座面は先代に比較して21mmも厚くなっている。背もたれは45mmも天地に高い。これまで3列目はエマージェンシーシートといった趣だった。緊急の送迎用がメインであり、ともすれば日常では折り畳むことで荷室を優先にされてることも少なくない。いわば“我慢のシート”だったのだ。だが新型ステップワゴンでは、2列目や3列目にすら快適性を求めている。開発責任者である四輪事業本部ものづくりセンター・LPLシニアチーフエンジニア、蟻坂篤史氏の言葉を借りれば「3列目が特等席」だというのだ。

ホンダ・新ステップワゴン、圧倒的な快適さ!開発責任者「3列目が特等席」の画像3

 もちろん、2列目も特等席に近い。キャプテンシート仕様には、腿下をリラックスさせるオットマンが引き出される。そもそも最大865mmという超ロングスライドが可能なばかりか、2列目は左右にもスライドできるというから驚きである。

 たとえば、2列目と3列目の背もたれを倒せば、キャンピングカーかと思えるほどのフラットな空間が現れる。助手席と2列目左側を前にスライドさせ、その2列目にチャイルドシートを乗せて中央よりに横スライドさせれば、ドライバーは運転席に着座しながら子供の世話をすることができる。

 チャイルドシートごと最後端まで下げれば今度は一転、2列目と3列目の乗員が世話することも可能になる。もちろん3列目シートを床下を畳んだうえに2列目をロングスライドさせれば、足元に余裕たっぷりのラウンジ空間になる。変幻自在のアレンジが可能だというわけだ。もはやクルマというより、リビングであるかのようである。

 もちろん3列目シートの格納も完璧である。ステップワゴンは伝統的に、床下に格納するスタイルを採用し、しかもその作動がたやすい。片手でレバーを引くだけで、なんの造作もなく床下に吸い込まれ、フラットな空間が現れるのだ。

 3列目シートの処理には各メーカが知恵の絞りあう。ライバルである日産自動車「セレナ」とトヨタ自動車「ノア/ヴォクシー」は、サイドに跳ね上げる方式を採用している。だが、すっきりとした空間という意味では、床下収納のステップワゴンに軍配が上がる。格納がワンタッチである点も理想的だ。この手のカラクリを開発させると、ホンダは天才的な才能を披露する。

 残念なのは、先代で好評だったワクワクゲートを廃止してしまったことだ。リアハッチが2分割になり、縦にも横にも開いたそれが、一般的なリアゲートになってしまったのだ。半分だけ横に開けて小さな荷物を取ったり、あるいは縦に大きく開けて大きな荷物を積み込むといった自在さがなくなった。

 実際に使ったユーザーのほとんどはその便利さを実感していたというが、リアハッチに縦に切れ目があることから、視覚的に敬遠するユーザーが少なくなかった。縦割れしているので、後方視界にも多少の障害があったようだ。

 ともあれ、新型はより一層リビング感を高めて誕生した。完成度が高い。家族団欒の笑い声が聞こえてきそうである。

(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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