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木下隆之「クルマ激辛定食」

スバル、クロストレックに託した使命…怒涛のSUV攻勢、真の狙いは購買層の若返りか

文=木下隆之/レーシングドライバー
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スバル、クロストレックに託した使命
スバル・クロストレック

 スバルのSUV攻勢が止まらない。今回も新たに「クロストレック」を日本市場に送り込んできた。

 個性的なモデルに専念して新車をリリースするスバルのSUVへの意気込みは、ただならぬものがある。「レガシー・アウトバック」を頂点として、「フォレスター」「XV」と“SUVピラミッド”を形成するばかりか、スバル初のBEV「ソルテラ」をSUVにして生み出した。ほぼSUV(厳密にはツーリングワゴン)の「レヴォーグ」と「インプレッサ・スポーツ」を加えるならば、スバルがラインナップする10モデルの中の6台がSUVということになる。

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 そもそもスバルの歴史は、雪路性能の高さが源流にある。降雪地域の作業車としてフルタイム4WDの「スバルワゴン」を投入してから、AWDのパイオニアとして君臨してきた。おのずとアウトドアアクティビティと相性がいい。SUVラインナップが充実するのも必然なのだ。

 その流れを受けて新型クロストレックは、行動力のあるユーザーをターゲットにしている。車名となったクロストレックとは、クロスカントリーとトレッキングを掛け合わせた造語だという。

 実は新型クロストレックは、XVのフルモデンチェンジである。日本名XVは、北米でクロストレックの名で販売されていた。今回のフルモデルチェンジを機に、グローバルで車名が統一されたことになる。

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 したがって、新型クロストレックはXVの流れを受け継ぐ。スバルSUVラインナップのなかで、もっともコンパクト。搭載するパワーユニットは水平対向4気筒2リッター+e-BOXERのみ。ガソリンエンジンは廃止されている。ハイブリッドに統一された。

 XVに比較して、若返りが期待されているのが特徴だ。というのも、XVの購買層は驚くほど高かった。50代から70代に支持されていたという。ボディはコンパクトであり、したがって価格帯も低い。てっきりアクティブなレジャーを楽しむ若年層に支持されているのかと認識していたものの、実際には高年齢層に受け入れられていたのだ。その購買層の空白地帯、つまり20代から30代にシフトする使命がある。総じてスバルを好む年齢層は高い。将来性の高い層を獲得することで、先の長い販売力を維持することも狙いだ。

 それゆえに、ヤングアットハートな仕掛けがある。基本的なデザインテイストは受け継ぐものの、細部にアグレッシブなテイストを注いでいる。

 ただし、乗り味は格段に洗練度を増した。いたずらに操縦フィールを尖らせたわけではない。素直なハンドリングを求めている。安易な若返りではないのだ。たとえば、車内の静粛性を高めるなど乗り心地も整った。群馬大学医学部と共同で、三半規管の移動力の少ないシートを開発するなど、老若男女が満足できる道を選んだ。

 11.6インチのモニターは現代的だし、インフォテイメントも若々しい。だが、ターゲットをガラリとチェンジさせた形跡はなく、万人に受け入れられる仕様としている。

 得意の安全運転支援技術も進化させている。新たな広角の単眼カメラを組み込むなどして、路地からノーズを覗かせるような場面で、左右からの障害物を正確に捕捉するようになった。夜間の視認性を高めるために、コーナリングランプも組み込まれた。運転中に意識を失ったような場面でも、安全に停止し救急支援を要請するようなシステムも追加された。ターゲットは若年層でも、高齢者層を捨てたわけではないのだ。

 正直に言って、これだけの施策で購買層が一気に低年齢化するとは思えないが、少なくとも多くのユーザーに支持されるようになったことは確かだろう。

 今後のクロストレックの販売を見守りたい。

(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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