ビジネスジャーナル > 政治・行政ニュース > 自民党、二階氏へ50億円寄付
NEW

自民党、二階元幹事長へ50億円を寄付、税金投入でも使途不明…政策活動費として

文=横山渉/ジャーナリスト、協力=岩井奉信/日本大学名誉教授
【この記事のキーワード】, ,
自民党、二階元幹事長へ50億円を寄付、税金投入でも使途不明…政策活動費としての画像1
自民党のHPより

 総務省は11月25日、2021年の政治資金収支報告書と02~20年の報告書(公表時点分)を公表した。朝日新聞の報道によれば、政党から政治家個人に寄付された資金「政策活動費」は、主要政党において2021年までの20年間で約456億円に上るという。自民党が総額約379億円で最も多い。

政策活動費はウラ金みたいな都合の良いお金

【寄付の流れ】
個人・団体 → 資金管理団体・政党支部 〇 報告義務あり 
      → 政治家個人      ×
政党    → 資金管理団体・政党支部 〇 報告義務あり
     → 政治家個人(政策活動費)〇 報告義務なし

 政治資金規正法は、個人や企業・団体から政治家個人への寄付を禁じており、寄付は資金管理団体や政党支部で受け、収支報告書を提出するよう義務づけている。1994年の法改正でお金の受け皿となる「財布」を政治団体に絞ったことにより、現在に至る。

 しかし、政党は政治家個人への寄付が認められている。これが政策活動費だ。受け取った議員はその使途を報告書に記載する必要がないため、多額の政治資金の使途がわからなくなっている。「政治とカネ」の問題に詳しい日本大学・岩井奉信名誉教授に話を聞いた。

「1994年の政治改革の1つであり、政治資金制度改革の目的は、政治家個人はお金を触らないようにするということだった。だから、政治資金管理団体とか政党支部などが作られたわけだが、そのときの例外が政策活動費だった。報告義務がないので、ウラ金みたいな都合の良いお金になっている。当初は派閥がお金を集められなくなると困るので、政党から派閥にお金を出す方法、すなわち迂回献金の道具建てとして考えられたようだ。政策活動費を差配するのは幹事長なので、幹事長のところに毎度、億単位のお金が出されている」

 朝日新聞によれば、自民党では379億円のうち、歴代最長約5年にわたって幹事長を務めた二階俊博氏に最多の計約50億円が支出されていた。2020年でいえば、自民党は党幹部ら12人に「政策活動費」を49回にわたり約9億8000万円支出。うち3分の2の約6億3000万円が二階氏だった。

「実は、94年以前は一定の枠はあるものの、(政策活動費に関して)収支報告を求めるようになっていた。しかし、政治改革のときに唯一後退したのはこの部分だった。政党側の言い分を聞くと、『政党が所属している政治家を買収するわけがない』というおかしな理屈だ」(岩井氏)

 全議員が「別封」として受け取る月額100万円の文書通信交通滞在費(文通費)と違い、政策活動費は政党単位で一部の党幹部が水面下で運用するためウラ金となりやすい。ちなみに、文通費は国会での議論を経て「調査研究広報滞在費」と名前を変えたが、こちらも使い道の報告義務はない。

政策活動費は何に使われているのか

 表向きは、党に代わって党勢拡大や政策立案、調査研究を行うために、幹事長などの党役職者が使っているという政策活動費。しかし、収支報告義務のない“ウラ金”は一体、何に使われているのか。

 旧民主党で幹事長を2度務めた岡田克也衆院議員(現立憲民主党常任顧問)は東京新聞の取材にこう答えている。

「どうしても外に出せないものはあった。例えば、選挙で党公認ではない候補者に資金援助する際の資金は表に出しにくい。将来的に仲間にしたい時に」

 岩井氏は、幹事長以外に国会対策委員長(国対)の与党対策も指摘する。

「派閥のボスはまず、自分のグループ所属議員に配るだろう。国対の場合、最近は野党対策よりも与党対策のほうが大きいといわれている。野党に配るとバラされるおそれがあるから。与党議員を納得させ、与党内をまとめるために配るとか飲み食いさせるとか、何だかんだ細かいことに使っている。昔は国会対策費という項目があったが、公明党ができて間もない真面目だった頃、これ何だと国会で質問したところ大騒ぎになったので、そういう項目がなくなった。それから昔は、与野党の国対で賭け麻雀をやって、与党がわざと負けてお金を払うということがあったが、最近はなくなった」

政策活動費について透明化される兆しはなし

「税金が原資の政党交付金と政治資金の報告書は形式的に分けられ、政策活動費に税金は入っていないことになっているが、建前にすぎない。お金に色はないので、税金も入っている」(岩井氏)

 政策活動費の原資は、個人や企業・団体から寄付された政治献金と、税金から政党を通して受け取る政党交付金になる。幹事長らが万一私的に使っていたとしても、国民にはわからない。個人の懐に入れば雑所得になるが、それをチェックすることができない。脱税の可能性さえある。

 政治資金規正法上、合法でも、倫理的には大いに問題がある。国会の自浄作用によって、政策活動費の収支が透明化されないのだろうか。

「政策活動費が問題にならないのは、与党だけでなく野党も及び腰だから。文通費の公開を求めている維新も『領収書を取れないものもある』と公開には後ろ向きだ。自民ほど派手ではないかもしれないけれど、政党助成金を一律に配分した後、特定の議員に上乗せしたりするときに、この金が使われたりする。バレれば『ズルいじゃないか』という話になる。与野党とも表に出せない自由な金が必要なので、制度改革は進まない」(岩井氏)

 岩井氏は法律の趣旨・概念自体も考え直すべきだと話す。

「政治資金規正法はそもそも、収入に関する法律だ。支出に関しては、政治活動の自由という名目の下、何も規制がない。だから、規正法の意味合い自体も変えていかなければならない。受け取るところをきれいにしても、昨今大きな問題になっているのは支出だ」

横山渉/フリージャーナリスト

横山渉/フリージャーナリスト

産経新聞社、日刊工業新聞社、複数の出版社を経て独立。企業取材を得意とし、経済誌を中心に執筆。取材テーマは、政治・経済、環境・エネルギー、健康・医療など。著書に「ニッポンの暴言」(三才ブックス)、「あなたもなれる!コンサルタント独立開業ガイド」(ぱる出版)ほか。

自民党、二階元幹事長へ50億円を寄付、税金投入でも使途不明…政策活動費としてのページです。ビジネスジャーナルは、政治・行政、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!