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安倍政権が推進する外国人実習生増加、失踪実習生の7割が最低賃金以下…過重労働も蔓延

文=編集部
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安倍政権が推進する外国人実習生増加、失踪実習生の7割が最低賃金以下…過重労働も蔓延の画像1安倍晋三首相(写真:つのだよしお/アフロ)

 厚生労働省が2017年に調査した外国人技能実習生の実習実施先5966事業場のうち、約7割の4226事業場で法令違反が明らかになった。前年比で5.5%増加し、4年連続で過去最多を記録した。

 法令違反で最も多かったのは、36協定を結ばずに残業させるなど「労働時間」に関する違反で1566事業場(26.2%)。次に多かったのは使用する機械の安全対策が不十分など「安全基準」に関連する違反で1176事業場(19.7%)だった。さらに野党が法務省による失踪した技能実習生からの聞き取り調査結果を再集計したところ、いっそう深刻な現実が明らかになった。最低賃金を下回って働いていた実習生が67%、しかも10%が月80時間超の時間外労働を行っていたのだ。

 これまで、相手国の送り出し機関と連携して技能実習生を受け入れて、実習実施先の企業に紹介する監理団体や、受け入れ拡大を推進したい業界団体関係者の多くは、こう主張してきた。

「法令違反を犯しているのは一部の企業で、多くはきちんと実習生を受け入れている」

 だが、現実には健全な受け入れ先は一部で、多くの受け入れ先は不健全であるという見方も成り立つ。受け入れ数が拡大していけば法令違反は増加するだろうが、受け入れ数拡大の引き金になるのが、新たに対象職種に追加された介護である。介護の受け入れは2019年から本格化して、19年だけでも年間5000人前後の受け入れが予想されている。過酷な労働環境が慢性化している業界だけに、法令違反の頻発が懸念される。

介護事業所で働く人たちは倫理意識が強く、人に尽くしたいというマインドの持ち主が多いので、技能実習生に対しても他の業界のような扱いはしないだろう」(介護業界関係者)

 だが、厚生労働省の調査によると、介護職員による高齢者への虐待件数は16年度に前年度比10.8%増の452件を記録し、10年連続で過去最多を更新した。さらに厚労省は、16年度中に介護報酬不正請求や虚偽報告などの不正行為で指定の取り消し・停止処分を受けた介護施設・介護事業所数が過去最高の244件を記録したことを公表している。離職率も依然として高く、17年度の年間平均離職率は16%強(介護労働安定センター調査)にも及んだ。

 これらのデータは介護業界の人心の荒廃ぶりを示し、上記の発言がいかにも“身内びいき”の願望であることは否めない。

実習実施先の費用負担の問題

 では、技能実習生に対する法令違反の背景はなんだろうか。実習実施先に中小企業が多いことからコンプライアンス遵守体制の未整備が推察される。あるいはブラック労働現場に共通して見いだせる人権意識の欠如も散見される。

 こうした問題は実習実施先に起因するが、法務省入国管理局が独立して新設される出入国在留管理庁による摘発や排除だけでは、おそらく解消に向かわない。法令違反の背景は実習実施先の問題だけではない。

 もうひとつの背景として、実習実施先の費用負担が挙げられる。実習実施先が海外現地法人の従業員を技能実習生で受け入れる企業単独型には、この問題は発生しないが、受け入れの大半は団体監理型である。事業協同組合や業界団体など非営利団体が監理団体として登録し、技能実習生の手配と実習実施先での就労チェックを実施している。この団体監理型の費用負担が法令違反を誘発している可能性も考えられるのだ。

 ある監理団体が見積もった実習生1名当たりの費用は、次のような内容である(給与は除く)。

 実習開始前までに発生する費用が監理団体加入費、入国前教育費、面接時渡航費、入国後研修費、国際研修協力機構年会費、保険料など約50万円。実習1年目は入国渡航費、交通費、健康診断費、技能検定料など約10万円。ここまでは準備費用だが、以後、毎月、管理費として4万8000円が発生する。これは監理団体の職員が月1回程度ペースで定期的に職場を訪問して、出退勤記録のチェックや指導担当者・実習生と面談を行って状況を把握する経費である。

 この見積内容について、他の監理団体関係者は「この数字は相場である。多くの監理団体は、大体この程度の金額を実習実施先に請求しているだろう」と語る。

 一方、実習実施先には毎月の管理費が負担になっている。管理費の相場は1人につき月4~5万円で、10人を受け入れば月40~50万円に膨らんでしまう。この費用負担が低賃金過重労働を誘発している要因になっているのではないか。ある業界団体関係者はこう推察する。

「就労先の経営者や管理職によって考え方に差はあるだろうが、実習期間中は毎月4~5万円を監理団体に払い続けなければならないので、なんとかして元を取らなければならないと考えるようになる。それが低賃金で長時間労働をさせるという流れを生み出していると思う。低賃金で過重労働をさせざるを得ないという事情があることは否定できない」

 管理費はどのぐらいが妥当なのか。この関係者の答えは「1~2万円」だった。

適正な管理費の検討が課題

 だが、監理団体が不当に儲けているのかといえば、決してそうではないようだ。都内にある監理団体はホームページで、経費の一部を公開している。

 この監理団体で技能実習制度にかかわる職員は約50名。給与を1人平均25万円と設定すると、これだけで毎月1250万円。実習先訪問では車両経費、ガソリン代、高速代、駐車場代、さらに海外での面接にかかわる渡航費や宿泊費の合計が月約1000万円。事務所の家賃やOA機器代などで月に200万円が発生する。

 監理団体は非営利団体なので当然だが、「儲けなんて出てないのが現状」(同ホームページ)と述べている。

 かりに1~2万円に引き下げられたら、どう対処するのだろうか。監理団体によっては大幅にサービス内容を削減するか、ディスカウントモデルを開発するか、それとも技能実習生の受け入れ業務から撤退するか――。

 複数の団体から技能実習生を受け入れている関西の中小メーカー社長は「5万円は高いが、2万円以下では安くてサービスの質に不安を感じる。良心的な料金の基準はないが3万円前後だと思う」と実感を話す。

 2019年4月に発足する新在留資格に技能実習生の一部が移行し、いずれ外国人技能実習制度は縮小していく見通しだが、新在留資格では新設される登録支援機関が巡回指導を担う。新在留資格は技能実習制度と異なり、就労先の変更(転職)が可能なので、低賃金過重労働を防止できるのではないかという期待もできなくはない。

 だが、毎月の管理費をめぐる不満がくすぶり続けて、低賃金過重労働が繰り返される事態も十分に想定できる。適正水準の検討が必要だ。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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