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楽天モバイル、ソフトバンクから盗まれた技術情報を社内で利用か…元社員に有罪判決

文=山口健太/ITジャーナリスト
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楽天モバイルの公式Twitterアカウントより

 ソフトバンクの元社員・合場邦章被告が同社の技術情報を不正に持ち出し、転職先の楽天モバイルで利用した疑いで不正競争防止法違反(営業秘密領得)の罪に問われていた事件で、東京地裁は9日、合場被告に対して懲役2年、執行猶予4年、罰金100万円の判決を言い渡した。

 合場被告は2019年12月にソフトバンクのサーバーに自宅から接続して営業情報が含まれるファイルを自身に送信し、その直後の20年1月に楽天モバイルへ転職。合場被告が持ち出したソフトバンクの技術情報を楽天モバイルが利用していた疑いがあるとして、ソフトバンクは21年、楽天モバイルと合場被告に対し約1000億円の損害賠償請求権の一部として10億円の支払い等を求める民事訴訟を提起している。

 裁判では、合場被告が楽天モバイルの知人に向けて「機密情報を持ち逃げしましたので、ガッツリやりましょう!」などとLINEで連絡していたことなども判明しているが、IT企業関係者はいう。

「楽天モバイルは、合場被告がソフトバンクから持ち出した情報を社内の共有ネットワークにアップしていた。ソフトバンクもその情報を楽天が利用したと考えて、楽天に訴訟まで起こしている。楽天がいくら『盗み出された情報を利用していない』と主張しても、果たしてそれを信じる人が業界内にいるのかどうか。有罪が確定した以上、楽天がどのような見解を示すのかが注目される」

 当サイトは11月3日付記事『楽天モバイル、転職者がソフトバンクから持ち出した技術情報を社内ネットで共有か』で楽天モバイル社内の情報管理の実態について報じていたが、今回、再掲載する。

※以下、肩書・数字・時間表記等は掲載当時のまま

――以下、再掲載――

 合場被告がソフトバンクから持ち出したとされるのは、「4Gおよび5Gネットワーク用の基地局設備や、基地局同士や基地局と交換機を結ぶ固定通信網に関する技術情報」(同社HPより)だが、楽天関係者は言う。

「合場被告はソフトバンクから持ってきた技術情報を楽天モバイル社内のPCのみならず、社内ネットワークに保存して他の社員が閲覧できる状況だった。しかも合場被告がソフトバンクのサーバーから情報を持ち出したのは、楽天モバイルへの入社が決まった直後というタイミングだった。これらの事実から、いくら楽天が“情報を利用していなかった”と否定しても通らない。

 合場被告の楽天モバイルへの入社が決まった19年当時、ウチは基地局整備が当初の計画から大幅に遅れて総務省から怒られるなど、かなりヤバい状況だった。他社の基地局に関する技術情報を“喉から手が出るほど欲しかった”というのは容易に想像がつく」

 楽天モバイルは19年、基地局整備の遅れなどを理由に総務省から行政指導をたび重ね受けていたが、合場被告が楽天モバイルに入社した20年には、基地局整備を計画より5年も前倒しして進めると発表。実際に基地局整備のスピードは加速し、翌21年には人口カバー率が90%に達した(合場被告は21年1月に同社を退職)。

他社から寄せ集めた情報による携帯事業

 その裏では、20年にはソフトバンクは、合場被告による情報不正持ち出しを警視庁へ申告し、同年8月には警視庁が楽天モバイル本社などを捜索。さらにソフトバンクは21年、楽天モバイルと合場被告を相手取り東京地裁へ民事訴訟を提起している。

「一貫して楽天モバイルは、『(合場被告が)前職で得た営業情報を弊社の業務に利用したという事実は確認されていない』と主張しているが、一連の客観的事実や経緯を並べれば、いくら否定しても無理がある。もともと携帯電話事業を手掛けていなかった楽天だけに、同事業に関わる人材は自ずと他の通信会社出身者などの“寄せ集め”となり、他社の技術者たちを高額年収を提示することで引き抜くケースもあったといわれている。

シャドーITの問題

 ITジャーナリストの山口健太氏は言う。

「楽天モバイルが立ち上げた携帯キャリア事業では、高価な専用ハードウェアの機能をソフトウェアで実現する『仮想化』を採用しています。この技術は大手3キャリアも一部導入していますが、楽天は仮想化を前提にネットワークを構築するという世界的に見ても新しい挑戦をしており、他社とは根本的にアプローチが異なります。

 ただ、その基地局を全国に展開するには莫大な時間とコストがかかるとみられていましたが、20年8月に楽天はこの計画を『5年前倒し』しています。これほど大幅な前倒しができた背景として、ソフトバンクは『楽天が当社営業秘密を何らかの形で利用している可能性が高い』と主張しています。

 一方、楽天は『ソフトバンクの営業秘密を当社業務に利用していたという事実は確認されていない』と主張しています。持ち出された情報が『営業秘密なのかどうか』という点で、両社の認識に相違があると考えられます」

 携帯電話業界内での技術者の転職による技術持ち出しの実態は、どうなっているのだろうか。

「楽天モバイルは新規参入のキャリアということもあり大手キャリアからの転職者が少なくないようですが、一般的には直接競合となるキャリア間ではなく、通信機器やソフトウェア、サービスといった業界内での転職が多い印象です。

 どの業界にもいえることですが、仕事の資料などを許可なく個人のメールやクラウドサービスに保存する『シャドーIT』が問題になっており、仕事を効率良く進めたいなど悪意がない場合もあります。今回の事件を受け、ソフトバンクは情報資産管理を再強化する方針ですが、持ち出しを完全に根絶するのは容易ではないでしょう」(山口氏)

(文=Business Journal編集部、山口健太/ITジャーナリスト)

山口健太/ITジャーナリスト

山口健太/ITジャーナリスト

1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。
山口健太

Twitter:@yamaguc_k

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