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東京藝術大学、経営難でやばい?「ピアノ2台撤去」が物議、予算削減効果はある?

文=Business Journal編集部
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東京芸大、経営難でやばい?「ピアノ2台撤去」が物議
音楽学部正門・上野キャンパス(「Wikipedia」より)

 日本で唯一の国立総合芸術大学として名を馳せる東京藝術大学に激震が走った。2月2日、同大学の学生がTwitter上に「藝大(編注:東京芸術大学の通称)、本当にやばいかもしれない」とのつぶやきと共に、一つの画像を投稿した。そこには「練習室ピアノ撤去について」と題し、「大学の予算削減のため、(中略)2部屋のピアノを撤去することとなりました」との告知文がある。

 この投稿は瞬く間に拡散され、「東京芸大はピアノを減らさなければならないほど経済的に危ないのか」などと危惧する声がSNS上にあふれた。さらには、東京芸術大学教職員組合書記長と名乗る方が「初めてピアノ撤去知りました。組合としても出来ることを考えます」とリプライを送るなど、大学内にも動揺が走る様子がうかがえた。

 ここ数十年で、音大への進学者数は減少の一途をたどっている。卒業してもオーケストラに就職できるのは一握りで、一般企業への就職は他学部に比べて厳しくなりがちということもあり、進学先として選ぶ人が減っているといわれる。

 だが、芸術系の大学としては日本一ともいわれ、国内屈指の知名度を誇る東京芸大においては、経営難は無縁とも思われてきた。そんななかでのピアノ撤去騒動で、音大生をはじめとして、音楽関係者、大学関係者などにとっても大きな関心事となっているのだ。

 また、東京芸大はピアノの撤去のみならず附属図書館についても、「緊縮財政を余儀なくされており、図書購入費を大幅に減少させる」と告知。9月には図書館で受け入れ対象外となった本を「古書バザール」に出して募金を集め、状況の改善を図るとしている。これらの告知から、「東京芸大は図書館に図書や楽譜を入れられないほどお金がない」と懸念する声もネット上には少なくない。

 だが、ピアノを2台撤去したところで、どれほどの予算削減効果があるのか。指揮者の篠崎靖男氏に、東京芸大のピアノ撤去について見解を聞いた。

ピアノの撤去、予算削減だけが目的ではない?

「僕が音楽大学で勉強していた35年ほど前は学生数も多く、一般大学のように全国で音楽大学が増えていた時期に重なります。しかしその後、少子化の波が訪れて、音楽大学も一般大学のように経営難という運命をたどるのはしかたがないことでもあったと思います。しかも音楽大学は、教師がマンツーマンで生徒を指導するので、一人ひとりの学生にかかるコストも特別高くなります。そして他の学生と同じ部屋でレッスンできないので、教師用と生徒用のピアノが2台置かれている小部屋が構内にずらりと並ぶことになります。

 僕が現在、非常勤講師をしている桐朋学園大学を例に取ると、かなり多くの部屋数がありますが、実際には部屋が余るどころか足りないくらいで、人気がある曜日は教師であっても部屋取りの争奪戦になることが珍しくありません。そしてそれぞれの部屋には空調はもちろん、毎日清掃も入りますし、定期的に一つひとつのピアノの調律や新規購入も行われるので、費用はどんどん増えていきます。

 そんななか、大学構内で練習する学生も多く、彼らは教師によって押さえられたあとに残った部屋を取るために争います。僕も学生時代には、朝一番に事務局に並んだ思い出があります。

 今回の東京芸術大学は、専攻だけでなく副科ピアノのための練習室があるだけでも一般的な私立の音楽大学生にとってはうらやましい限りです。それでも、ピアノを買うことができない弦管打楽器学生にとっては、副科ピアノの試験前など大変な争奪戦になるだろうと想像します。

 ちなみに副科とは、専攻楽器と別に履修する楽器のことで、大概の音楽学生はピアノを副科として履修します。反対にピアノを専攻している学生は、声楽やフルート、ヴァイオリンなど、興味のあるものを副科に選びます。

 僕は東京芸術大学の内情はまったく存じませんが、ピアノを2台売ったところで大した額になるわけでもなく、売却益を国立大学の年間予算に計上できるのか疑問です。最新の報道によると、確かに維持費がかかることで見直しとなった側面はあるそうですが、部屋自体はピアノ以外の楽器の練習場所として活用されるそうで、大型楽器の練習の邪魔になるピアノを撤去したという理由もあるようです。弦管打専攻生にとってはピアノ副科も大事ですが、やはり専攻楽器を練習する場所こそ必要です。

 そうはいっても、やはり昨今の音楽大学の経営難は、私立大学だけでなく、国立の東京藝術大学にまで迫っているのだとしたら、本気で芸術教育について考えていかなくてはならない時期に来ているのではないかと思います」(篠崎氏)

東京芸大の見解

 またBusiness Journal編集部は、東京芸大に直接、ピアノ撤去の意図などについて質問し、以下のとおり回答を得た。

――なぜピアノを撤去せざるを得ないほどの財務状況となっているのでしょうか?

 音楽学部器楽科弦楽専攻(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、 ハープ)の研究室が所属学生に対し、「練習室ピアノ撤去について」というお知らせを行ったのは事実です。

 理由としては、電気代高騰等の影響により、大学全体として経費削減を進めていますが、音楽学部では保有台数が多く、調律代等の維持費がかかるピアノについて、設置場所や台数の見直しを行いました。

 お知らせをした当該練習室は器楽科弦楽専攻の練習室であり、大型弦楽器(チェロ、コントラバス等)の練習にはピアノが無いほうがスペースを確保でき、練習がしやすいことと、設置されていたピアノは主に副科ピアノ(副科は自分の専門以外の実技授業であり、副科ピアノはピアノ専攻以外の学生が履修する)の練習用に設置されたものであり、その台数は学部内で十分確保されていることから、当該練習室からピアノを撤去したものです。

 よって、ピアノ専攻の学生はもちろん、他専攻の学生に対してもピアノの練習環境に影響を与えるものではありません。

――ピアノは所有物ではなく、リースなど固定費がかかっているということでしょうか? また、ピアノ撤去によって、どれほどの経済効果が見込まれるのでしょうか。

 ピアノは購入物品であり、調律費等の維持費が発生します。今回の撤去は、維持費削減のほか、練習室内のスペース確保などの効果を見込んでいます。

――撤去されるピアノの使用率などからの判断ということでしょうか。

 上記のとおりです。

――図書購入費なども削減が見込まれるとありますが、音楽科のみならず、ほかの科でも同様に財政は悪いということでしょうか。

 電気代高騰等の影響により、大学全体で経費削減に取り組んでいます。

――藝大基金など、弊サイトで一般読者にアピールしたいことなどはありますか。

 本学における教育研究活動等の支援のため「藝大基金」へのご寄附をお願いいたします。

 偏差値は美術学部で65前後、音楽学部で57.5前後、入試倍率は美術学部で10倍以上、音楽学部で3倍強となっており、芸術大学としては日本トップレベルの超難関だが、近年の少子高齢化などの影響もあり、受験者数は減少傾向にある。日本の芸術を奨励するために、関心のある方は基金への寄付を検討してみてはいかがだろうか。

BusinessJournal編集部

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