ここ数年、景気回復により企業の採用意欲が強まり、学生側に有利な売り手市場が続いている。リクルートキャリアが昨年10月に発表した「就職プロセス調査(2018年卒)」によると、10月1日時点の大学生の就職内定率は92.1%。16年同月の90.6%と比べて1.5%増、15年同月は85.9%だったことから、ここ数年はかなりの高水準で推移しているとわかるだろう。
一方、企業側は採用難となっており、学生の内定辞退に頭を悩ませている。同じく「就職プロセス調査(18年卒)」を見ると、昨年10月1日時点での内定辞退率は64.6%。内定を出したとしても、かなりの学生に断られてしまう状況なのだ。
こうした学生優位な売り手市場のなか、企業は優秀な学生に興味を持ってもらうべく試行錯誤を続けている。そのひとつが、通常とは違った評価基準で学生を選考するユニークな採用方法だ。
例えば、ソフトバンクが行なっている「No.1採用」では、スポーツや学術などなんらかの活動でNo.1になった学生のみが応募できる。また、スマホコンテンツ事業やアドテクノロジー事業を展開するユナイテッドでは、1泊2日のサバイバル合宿や、新たな事業案を考え選考官にプレゼンするなど、さまざまなユニーク採用を行なっている。
ではなぜ、近年このような一風変わった採用活動が増えているのだろう。株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役社長で人事コンサルタントの増沢隆太氏に話を聞いた。
優秀な学生の発掘と自社PRを兼ねる
「まず、近年の新卒採用の動向について、企業側の採用意欲は強いです。それに対して学生の数は決まっていますので、学生が優位な環境というのは今年度就活が終わった人たちも、これから就活をする人もだいたい同じトレンドです。一部の有名企業で、就職人気ベスト10に選ばれるような企業は何万人と学生が集まりますが、それはごく一部です。それ以外の多くの会社が学生集めには苦労していますね」(増沢氏)
やはり「売り手市場」というのは間違いないようだ。ではなぜ、近年ユニーク採用を導入する企業が増えているのだろうか。
「もともとは富士通が11年に『Challenge & Innovation採用』という一芸採用を始めた辺りが最初だと思います。というのも、企業が官僚化・大組織化していくと、採用の際、応募者を一人ひとり時間をかけて見ることができません。そこで、まずは学歴フィルターで学生をふるい落す。大卒といっても偏差値がそこそこの大学もあれば、優秀なところもありますからね。ただ、学歴で切ってしまうと、成績に現れない能力を持つ学生が落ちてしまいます。そこで、そういった優秀な学生をすくい上げるという目的で始まったのが、一芸に秀でた学生を募集する一芸採用といったユニークな採用方法です」(同)