19日夜、羽田発福岡行きの日本航空(JAL)便が、福岡空港への着陸が許されずに羽田空港にUターン。午後8時30分に福岡空港に到着予定だったところ、なんと翌日午前2時50分に羽田空港に着陸するという事態が発生。乗客が約7時間にわたり機内に閉じ込められた挙句に「羽田に戻る」羽目になるという事態は、なぜ起きたのだろうか――。
問題が起きたのはJAL331便。午後6時30分に羽田空港を離陸し、2時間後の午後8時30分に福岡空港に到着予定だったが、出発準備の遅れで出発時刻を午後7時20分に変更したものの、離陸は午後8時にずれ込み。予定より1時間30分遅れの午後10時には福岡空港に到着となるところ、騒音防止のため午後10時以降の着陸ができないという福岡空港のルールのため、着陸ができないという事態に。航空機は旋回して、燃料補給のため関西国際空港に着陸し3時間待機し、その間、乗客は機内に足止めとなり、日付が変わり午前1時45分頃に関西国際空港を離陸し、羽田空港に到着したのは午前2時50分になった。
そこからさらに乗客の苦労は続く。乗り換え便である臨時便はその7時間30分後の午前10時20分出発で、乗客によるものとみられるTwitter投稿などによれば、機内で臨時便の航空券、お詫び金の2万円、タクシー代の領収書を送り返す封筒が配られ、希望者はJALが手配したホテルの予約手続きを実施。着陸後も羽田空港で並んで臨時便の予約手続きやタクシーの整理券待ちに時間を費やされ、ホテルに到着したのは午前5時30分になったという投稿もみられる。
もっともSNS上には
<あの疲労感に満ちた雰囲気の中で、乗務員の方々、地上職員の方々は努力されたと思います。それは感謝したいです>
<JALの職員の方々も長い時間、辛い顔一切せず、対応など職務を全うしてくれました>
などという声がみられ、20日付「日テレNEWS」記事の取材に応じた乗客は機内の様子について「落ち着いていたかなと」と語っており、現場では目立った混乱はなかった模様だ。
日本航空の見解
福岡空港では事前に申請して許可を得ていれば22時以降でも着陸は可能となるが、当該機は事前申請を行っていなかったのだろうか。また、羽田空港に折り返すという事態は想定していたのだろうか。日本航空広報部は次のように説明する。
「機材到着の遅れに加え、羽田の混雑の影響で手荷物の搭載が遅れたことにより、出発時刻が20時1分となった。飛行計画では21時56分に福岡に到着予定であり、また工夫によりもう少し早く到着できる可能性もあったため、事前申請の必要はなかった。結果的にこのような結果となってしまい、予想しきれなかったのは当社の見通しの甘さであり、今後は関係各所と連携して取り組んでいきたい」
また、関西国際空港で給油のために着陸から離陸まで3時間を要した理由について日本航空はいう。
「(JAL331便で使用されているエアバス製)A350は最新機種で大きな空港での利用がメインとなっているが、関西空港には同機種の整備士がいないため、伊丹空港から整備士を派遣した。航空機の離陸には必ず担当整備士の許可が必要になる」
空港に求められる大局的見地
福岡空港が着陸を許可するという柔軟な対応をしていれば、今回のような事態は避けられたわけだが、航空経営研究所主席研究員で桜美林大学客員教授の橋本安男氏はいう。
「フライトプランでは21時56分に到着予定となっており、実際に22時より前に福岡空港の上空には到着していたので、JALが当該機を羽田から離陸させたことは概ね妥当な判断といえる。羽田をほぼ同時刻に離陸した333便と335便は22時を過ぎても福岡空港から正当な理由があるとして着陸しており、331便の着陸が許されなかったのは、やや杓子定規のように感じる。
空港側にも周辺住民への配慮やルール順守の徹底を求められているという事情があるのは理解できるが、出発準備の遅れは航空会社内の事情だと判断されて着陸が許可されなかったのだとしたら、大局的見地が欠如しているのではないかという印象を受ける。結果的に無駄に燃料が消費され、無駄な二酸化炭素を発生させ、乗客に加え関西空港、羽田空港に大きな混乱と負荷を強いることになったことを考えれば、将来に向けてもう少し柔軟な対応をとれるようルールを見直すべきではないか。他の空港も今回の事例を他山の石にすべきと思う」
(文=Business Journal編集部、橋本安男/航空経営研究所主席研究員、桜美林大学客員教授)