日本全国に約1000店舗を展開するドーナツチェーン業界国内トップの「ミスタードーナツ」。積極的にそのときどきの季節に合った期間限定商品を投入しているが、実は期間限定商品で余った材料を使用して一定期間だけ製造・販売されるイレギュラーなレア商品、その名も「うたかたドーナツ」と呼ばれるものがひっそりと存在し、一部の根強いミスド・マニアから愛されているという噂が話題を呼んでいるようだ。
2013年には店舗数1378を誇っていたミスドだが、2014年頃からセブン-イレブンがレジ横にドーナツの専門コーナーを設置するなどコンビニエンスストア各社がドーナツ販売に力を入れ始めたことも影響し、徐々に店舗数は減少。だがコンビニのドーナツ販売に陰りが見え始めると、徐々にミスドの業績は上昇。新型コロナウイルス症感染拡大下の2000~22年3月期は3期連続で売上増となり、ミスドを展開するダスキンのフードグループの22年4~9月の売上高は214億円、営業利益は24億円と、ともに前年同期比増となっている。
勢いに乗るミスドはさらなる攻勢に出る。22年11月16日付日本経済新聞記事によれば、22年時点の店舗数は979だが、23年には店舗数を1000まで拡大させる計画だという。
「コンビニのドーナツ参入を受け、ミスドは100円で安売りするなどの対抗策を打ち、利益が出ないということでフランチャイズ店が離れたこともあり、店舗数が一気に減った。だが、結果としてそれによりミスドの経営はスリム化が進み、外部の人気店・ブランドとの積極的なコラボなどにも励み、そうこうしているうちにコンビニのドーナツが自滅。ミスドは新たな成長局面を迎えることに成功した。
コンビニの参入以前にも、2000年代には『クリスピー・クリーム・ドーナツ』や『ドーナッツプラント』など新ライバルが続々と国内市場に参入し、ミスドの存在を脅かすかと思われたが、なんとか生き残った。ミスドの経営には、そういう『しぶとさ』があるが、掃除サービスという一般消費者と非常に近いところで事業を展開し続けるダスキンの堅実な経営体質が影響しているのかもしれない。また、ミスドは基本的に商品を各店舗内でつくっているので、出来立て感が豊かな商品を味わえるという本質的な強みもあるだろう」(外食チェーン関係者)
ミスドのコラボ企画は人気だ。昨年は高級抹茶専門店「祇園辻利」やチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」とのコラボ商品を販売。今年1月からは人気パティシエ・鎧塚俊氏とのコラボ企画「misdo meets Toshi Yoroizuka」として「ヨロイヅカ式デニッシュショコラドーナツ」や「ヨロイヅカ式ガトーショコラドーナツ」を販売し、大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。
「他の外食チェーンと同じく、原材料費やエネルギーコストの上昇を受けてミスドも昨年2度にわたり一斉値上げを実施したが、業績に目立った悪影響は出ていないもよう。『オールドファッション』や『フレンチクルーラー』『ポン・デ・リング』など定番商品の価格は抑えつつ、高単価のコラボ商品を断続的に投入して客単価の向上に取り組んでいる。また、高単価の飲茶メニューやピッツア、ホットドッグも販売しており、ドーナツ同様に『小腹が空いた』お客のニーズを満たす商品も揃えており、バランスの取れたメニュー構成になっている」
正式名称はファンシードーナツ
そんなミスドだが、期間限定商品の販売期間終了後に、そこで余った材料を使い切るためにイレギュラーな商品を一定期間だけ製造・販売しているのではないかと、以下のようにSNS上で話題になっているのだ。
<『ミスド』がコラボ後に材料消費の為に短期間だけ売る幻のメニュー「うたかたドーナツ」>(原文ママ、以下同)
<ミスドにはイレギュラーに現れてすぐ消える「うたかたドーナツ」がある>
<限定メニューを作った時に、余った材料で作れるうたかたドーナツのレシピも作っているということか>
<日曜日とは違うミスド行ったら、また違ったうたかたドーナツあったよ ポップがプラスチックじゃなくてプリントしたやつはめ込んでるやつがそうなんだね ピスタチオチュロは絶対うまいやろ>
<話題のうたかたドーナツ(正しくはファンシードーナツらしい)を求めて、昨日ミスドに直撃。素材的、恒常メニューに無い雰囲気の、オールドファッションチョコがけにアーモンドまぶしと、写真のがそうじゃないかな~と購入。直前のコラボメニューで使ってた素材のはず…。美味しかったよ~>
<うたかたドーナツ、最寄りのミスドにもあるかな~と探しに行ったらマロンクリーム挟んであるのはあった!美味しかった!他にも不思議なトッピングのドーナツが何種類かあったのでやつらもきっと泡沫の夢>
<この前食べたミスドのショコラクリームはうたかたドーナツやったのか 新製品と思って食べてた、、、そのうち消えるのか>
実際に3月初めに東京都内のある店舗を訪問してみると、2月下旬まで販売されていた「ヨロイヅカ式シリーズ」の商品で使用されていた材料を使っていると思われる「ココアデニッシュドーナツ ホワイト」「チョコバナナフレンチ」「ホワイトアーモンドチョコレート」など、普段は見られない商品が売られていた。そして、これらの商品はミスドのHP上のメニュー紹介ページには掲載されていない。果たしてこれらが、いわゆる「うたかたドーナツ」なのか。
ミスドの広報はいう。
「期間限定商品で余った原材料を利用した限定商品を一定期間のみ販売しているのは事実でして、10年ほど前からこうした取り組みを行っております。どのような商品を販売するのかというメニューは本部で決めますが、原材料が余った店舗のみでの販売となり、また販売期間も店舗によって異なるので、HP上のメニューのページには掲載しておりません。余った原材料の廃棄の発生をなくすのが目的で、『ファンシードーナツ』と呼んでおります」
(文=Business Journal編集部)