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30歳から税理士を目指し勉強は地獄みる…本当?40歳で合格でも就職先は多数

文=佐藤勇馬、協力=橘慶太/円満相続税理士法人
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国税庁のHPより

 難関資格の一つとして知られる税理士。先日、30歳から税理士になるための勉強を始め、7年間経っても資格を取得できずにいることで「人生狂った」「地獄」などとこぼしている人の書き込みがネット上で話題になった。30歳で税理士を目指すのは無謀なことなのか、現役の税理士に見解を聴いた。

 話題となったのは、10月に大手掲示板に立てられたスレッド。「30歳から7年間税理士試験勉強したけど人生狂った」などとして、投稿者が嘆きの声をつづっているものだ。書き込みによると、会計事務所で働いているという投稿者は2016年に30歳で税理士資格の取得を目指し、2017年に簿記論と財務諸表論の試験に合格。2019年に国税徴収法にも合格したが、7年が経過した現在も資格取得まで2科目が残っており、まだ道のりは長いようだ。閲覧者から「34歳だけど税理士目指してみようかな」というコメントがつくと、投稿者は「地獄を見るよ」と返している。

 税理士の収入は開業税理士と会計事務所などで働く勤務税理士で大きく異なるものの、厚生労働省が発表した「令和2年賃金構造基本統計調査」によると平均年収は約958万円。国家資格なので安定性もあり、人気の高い資格となっているが、同時に「狭き門」でもある。

 税理士の資格を取得するためには、毎年8月に行なわれる税理士試験で、会計科目(簿記論、財務諸表論)の2科目と、税法科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)のうち、受験者の選択する3科目(所得税法または法人税法のいずれか1科目は必須)の計5科目で合格しなければならない。

 一度に5科目すべてを受験する必要はなく、一度合格した科目は生涯有効。数年かけて資格を取得するのが一般的だが、各科目の合格率は10~20%とかなり厳しく、取得するのは容易ではない。そのため、今回の投稿者のように30歳を過ぎてから資格取得を目指し、7年かけてもまだ合格に至らないというケースについて、ネット上では以下のような声が上がっている。

「30代で働きながら税理士を目指すのは無謀じゃないの」

「もし合格しても、アラフォーの新人会計士じゃ就職が難しそう」

「資格を取れても40歳前後で新人レベルの給料しかもらえないんじゃ割に合わないだろ」

 実際、30歳になってから税理士を目指すのは無謀なのだろうか。円満相続税理士法人の代表で税理士YouTuberとしても活動する橘慶太氏に実情を聴いた。

「30歳から税理士を目指す人は珍しくありませんから、まったく無謀ではありません。取得までに7年、8年かけているという人もたくさんいます。資格取得が40歳近くなったとしても、税理士の資格があれば就職先はいくらでもあります。大手の会計事務所に勤務すれば、平均で年収450万~500万円くらいからスタートなので、同年代の平均年収と比べても遜色ないと思います。また、2年間の実務経験が必要にはなりますが、開業すればもっと多くの収入を得られる可能性もあります。ただ、開業してうまくいくかどうかは、税理士としての実力とは別の顧客を集める能力などが関係してくるので注意が必要です」(橘氏)

 どうやら、税理士を目指すのに30歳という年齢は決して遅くはないようだ。となると、なぜ投稿者は「人生狂った」「地獄を見る」といった愚痴をこぼしていたのだろうか。

「社会人として働きながらだと、毎日の勉強の時間を確保するのが難しくなってきます。それなりに自由に時間が使える学生などの若い世代と比べると、資格取得の難易度が高くなるのは否めません」(同)

 国税庁が発表した「令和4年度税理士試験結果」によると、年齢別の合格率は25歳以下が30.9%であるのに対し、31~35歳は22.2%、36~40歳は19.4%、41歳以上は11.5%となっている。やはり、年齢が上になればなるほど勉強時間の確保が難しくなる関係などで合格率が落ちていくようだ。ただ、逆に言えば30代~40代以上でも合格している人はいる。

 社会人で税理士を目指す場合は、無駄を減らすための「効率化」が重要となりそうだが、効率よく資格を取得するためのコツはあるのだろうか。

「効率だけをいえば、大学院に入るという道があります。大学院で税法に関する一定の単位を修得し、かつ修士論文が認められることによって、税法科目の2科目が試験免除になります。数年かけて2科目の合格を目指すより、大学院に2年間通って免除を受けたほうが確実で結果的に近道になりやすい。残る科目の選択としては簿記論と財務諸表論が圧倒的に合格しやすく、あとは消費税法が私的にはおすすめです。しかし、これはあくまで効率のお話であって、税理士として活躍するためには国税4法と呼ばれる法人税法、所得税法、相続税法、消費税法をしっかリ学んでおく必要があります。受験生時代は『合格がゴール』と考えてしまいがちなのですが、試験はあくまで税理士になるための登竜門ですから、税理士になってからのことも見据えて勉強しておいたほうがいいでしょう」(同)

(文=佐藤勇馬、協力=橘慶太/円満相続税理士法人)

橘慶太/円満相続税理士法人

橘慶太/円満相続税理士法人

前職の税理士法人山田&パートナーズでは相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手がけた 相続税申告は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算500件以上。相続税の相談実績は5000人を超える。また、全国の銀行や証券会社を中心に通算 500回以上の相続税セミナーの講師を務める。 2017年1月に独立開業。現在、東京・大阪の 2拠点で相続専門税理士が多数在籍する円満相続税理士法人の代表を務める。
円満相続税理士法人

Twitter:@enman_souzoku

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