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転職エージェントから「A社の審査で落ちた」→A社から応募オファー来て虚偽と判明

文=佐藤勇馬、協力=川畑翔太郎/UZUZ専務取締役
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「Getty Images」より

 最近は転職において「転職エージェント」を利用する人が増加している。転職をサポートしてくれる心強い味方のはずだが、ネット上の利用者から「審査落ちしたはずの企業からスカウトがあり、転職エージェントからウソを伝えられていたようだ」との訴えがあり、ネット上で物議を醸している。

 マイナビが発表した「転職動向調査2023年版」によると、2022年の正社員の転職率は7.6%で2016年以降最も高い水準に。かつては転職サイトなどで自力で転職先を見つけるケースが多かったが、最近は転職活動を円滑に進めてくれる転職エージェントが存在感を増している。

 転職エージェントは、転職希望者と人材を探している企業の間に立ち、双方の提示する条件を基によりよいマッチングを実現するサービス。登録者には基本的に専任のアドバイザーがつき、転職先選びから入社までのさまざまな過程でバックアップをしてくれる。だが、今月4日に転職エージェントの利用者がX(旧Twitter)に書き込んだエピソードは「転職の心強い味方」というイメージとは真逆のものだった。

 当該の利用者は、転職エージェント経由でA社に応募したが、翌日に転職エージェント担当者から「先方に断られた」として審査落ちを告げられたという。ところが、翌週になってLinkedIn(※ビジネス特化型SNS)で人材を探していたというA社から「弊社の面接を受けませんか」と連絡があったというのだ。

 利用者が「数日前に御社に落とされた」との旨を伝えると、A社は「落とした記録がない」との返答。「採用担当者が興味を持っている」というほどの好感触で、とても断られた企業とは思えない対応だったそうだ。利用者はA社に直接応募することにしたが、そうとは知らない転職エージェント側は「前回の企業はハードルが高かった」などとして、“ブラック臭”のする別の企業を紹介してきたという。

 この投稿が大きな話題になると、SNS上では「私も経験あって、前職は某エージェント経由で落ちたはずなのに、その直後に別のエージェント経由で採用されてます」「エージェントから『希望の企業は求人がない』って言われたけど、その企業にいる先輩に直接聞いたら『全然ウエルカムだよ』とまったく話が違っていた」「結構な大手でも、勝手な自社判断で審査落ちってことにされたことある」といったコメントが集まり、同じような経験をした人が少なからずいることが分かった。同時に、なぜ転職エージェントがこのような“ウソ”をつく必要があるのかと不思議がる声も上がっている。

 実際、このようなことをする転職エージェントは存在するのだろうか。主に20代のキャリア支援を手がける「UZUZ」の専務取締役を務める川畑翔太郎氏に聞いた。

「そういうことをしている転職エージェントがあっても不思議ではありません。私も他社エージェントが同様の虚偽報告をしていたケースに出くわしたことがあります。今回の事例でも分かるように現在はSNSやスカウトサービスなどがあるので虚偽だとバレやすく、今そんなことをしているエージェントは少ないとは思いますが……」(川畑氏)

 利用者に虚偽の審査落ちを伝える理由としては、どのようなものが考えられるのか。

「理由としては2つ考えられます。ひとつは、その転職エージェントが利用者の希望する企業と契約していなかったケース。転職エージェントは基本的に成果報酬型なので、求人契約をしている企業に登録者を斡旋し、転職が成立しなければ報酬がもらえません。キャリア面談や書類面接などのサポート業務を何度しても1円ももらえないわけです。ですから、自社が扱っている求人の中から登録者の転職先を決めたいという目的で、虚偽の報告をした可能性があります。

もうひとつは、報酬単価や選考期間の問題です。転職エージェントが契約している企業の中でも、成功報酬の単価が異なるので、できるだけ登録者に単価の高い企業へ転職してもらいたいという思惑がある。話題になった投稿では、審査落ち報告後に『ブラック臭のする企業を紹介された』とつづられていましたが、そうした企業のほうが成功報酬が高いことがあります。

しっかりした転職エージェントなら、問題のあるブラック企業の求人があれば排除するのですが、求人件数が膨大な大手などは管理しきれずにそうした求人を扱ってしまうことがあります。また、転職エージェントは営業マンのような月のノルマがあり、期間内にノルマを達成するため、選考期間の短い企業に誘導しようとした可能性もあります」(同)

 そのような事例があることを知ってしまうと、転職エージェントの利用を躊躇してしまいそうだ。実際のところ、転職においてエージェントを利用する必要はあるのだろうか。

「経験・実績が豊富で企業側からの評価が高い求職者は、スカウトなどで十分に転職先を選べるので、エージェントを使う必要性はそれほど高くありません。一方、未経験者や職歴が少ない人は転職エージェントを活用したほうがいいです。転職エージェントはプロですから、どういう人がどんな企業に受かりやすいか、どのような選択肢があるのかといった情報を持っていますし、転職のノウハウも蓄積されているので、あまり知識がないまま転職サイトなどで自力で転職先を見つけるよりもはるかに効率がよく、選択肢が広がり、失敗も少なくなるはずです。

また、年収の交渉や希望する業務内容の調整なども、仲介者がいたほうがやりやすいでしょう。特に、特定の業界・職種に特化したエージェントは転職先選びにおいて頼りになると思います。ただ、大手エージェントのように大量の求人を満遍なく扱っているところは選択肢が多いものの、サポートの実態としては転職サイトとあまり変わらず、キャリアプランの提案などもあまり期待できないため、正直なところエージェントが介在している意味があまりない場合も多いと感じています」(同)

 転職エージェントは「当たりはずれ」が大きいともいわれているが、良し悪しを見極める方法はあるのだろうか。

「エージェント会社ごとにある程度の傾向はあるかもしれませんが、担当者によって対応はピンキリなので『この会社はいい、この会社はダメ』と単純にいえるものではありません。もっとも有効なのは、複数の転職エージェントを利用し、それぞれの強みとクセを見極め、目的に応じて使い分けていくことでしょう」(同)

 転職エージェントの活用も含めた「転職活動を成功させるためのポイント」について、川畑氏はこのように解説する。

「転職活動には大きく分けて2つのステップがあり、1つめのステップはキャリアプランの整理です。自身の経歴をはじめ、どうして転職したいのか、どんな企業に転職したいのか、何のために転職するのかといったことを、キャリアコンサルタントや転職エージェントにサポートしてもらいながら整理する作業です。そして2つめのステップとして、整理したキャリアプランに沿って、どういう求人に応募していくのかを決める。どちらも個人でもできなくはありませんが、特にキャリアプランの整理は重要性が高いうえに知識が必要なので転職エージェントを利用したほうがうまくいきやすく、希望に沿った転職先を見つけやすいのではと思います」(同)

(文=佐藤勇馬、協力=川畑翔太郎/UZUZ専務取締役)

川畑翔太郎/株式会社UZUZ COLLEGE代表取締役

川畑翔太郎/株式会社UZUZ COLLEGE代表取締役

1986年生まれ。株式会社UZUZ
COLLEGE(https://uzuz-college.jp/)代表取締役、UZUZグループ専務取締役。鹿児島出身で高校卒業後、九州大学にて機械航空工学を専攻し、住宅設備メーカーINAX(現:LIXIL)に入社。1年目から商品開発に携わるも、3年目に製造へ異動。毎日ロボットと作業スピードを競い合う日々を送る。自身のキャリアチェンジのため、UZUZ創業に参画。これまでに累計2,000名以上の就業サポートを実施。IT分野の教育研修サービス「ウズウズカレッジ」だけでなく、自治体の公共事業受託、企業ブランディングを担当。IT分野のリスキリングは「ウズウズカレッジ」をご活用ください。
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UZUZホールディングス

Twitter:@kawabata_career

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