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「30代後半の建設作業員がPythonを勉強しプログラマーへ転職」は可能か

文=LUIS FIELD、協力=田中健太/データアナリスト、鶴見教育工学研究所
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「gettyimages」より

 30代後半の建設現場作業員が一念発起してPythonを勉強してプログラマーへの転職を図るというインターネット上での投稿が一部で話題を呼んでいる。現在、IT業界ではプログラム言語の「Python(パイソン)」の需要が高まっている。Pythonは少ないコードで手軽にプログラムを組めるうえに、プログラムをまとめたライブラリも豊富で多くのエンジニアから重宝されている。需要が高まっている理由はAIやIoT分野が注目されていることが大きく関わっており、Pythonは機械学習やAI開発において標準的な言語として採用されることが多い。さらにウェブサービスやアプリ開発でも使われることが多く、世界的に人気の高いプログラミング言語だ。また近年、蓄積されたビッグデータを分析してビジネス戦略に利用する企業も増加しており、統計やデータ分析などを行うデータサイエンスの現場でもPythonは広く活用されている。そのため、IT業界ではPythonスキルを持つエンジニア需要が高まっているのだ。

30代後半からPythonを独学で習得してIT企業に転職することは可能?

 前出投稿のように独学でPythonを学び、IT企業にプログラマーとして他業種から転職することは現実的に可能なのだろうか。データアナリストで鶴見教育工学研究所の田中健太氏はいう。

「プログラマーに転職すること自体は可能です。実際に独学でプログラミングを習得して、ITエンジニアに転職後、AIベンチャーの起業を果たした人もいます。ただ実例があるから誰でもできるわけではなく、才能や適性も大きく影響するでしょう。また肉体労働をしながら勉強を進めること自体が困難で、途中で挫折してしまう人も多いのが現実です」(田中氏)

最短で効率よくPythonのスキルを身に付ける方法とは

 転職のために最短で効率よくPythonのスキルを身に付けるためには、どのような勉強方法が最適なのだろうか。

「独学でプログラミングを学ぶための学習サイトや動画コンテンツは多く存在します。またプログラミングスクールも山ほどありますが、個人的には職業訓練校などの公的な仕組みを利用することがおすすめです。理由はいくつもありますが、学費が無料(テキスト代は実費)であることや、受講することで失業保険の給付期間が延びること、求職者支援制度の生活支援給付金(月10万円)が受給できるなど、金銭的な負担が少ないことが挙げられます。また教室での対面講義が中心で、独学よりも生活リズムが崩れにくく、講師や他の参加者とのコミュニケーションによって挫折しにくいこともメリットです。

 スキル習得後の転職についても、職業訓練校はハローワークと連携しているため、正社員就職の斡旋をしてくれるのも魅力的です。一般的なプログラミングスクールでも就職斡旋はしてくれますが、その場合、自社の派遣登録が中心で、正社員就職は少ないです」(同)

実務未経験者のプログラマー転職の現実

 Pythonで勉強した後に、実務未経験者がプログラマーとして企業に就職することは難しいのではないだろうか。

「プログラミングスクールでも職業訓練校でも、コースを修了しただけではIT企業で正社員として就職するのは難しいでしょう。同じようなスキルの求職者が複数人いた場合、若い人材が採用されてしまうのが現実です。しかしスキルのかけ合わせができれば、その限りではありません。例えば建設業界とプログラミングについて知見がある人材の場合、現場から業務改善を立案できる戦力として評価される可能性があります。

 また、どうしてもプログラマーやITエンジニア専門として就職したい場合は、実績をつくることへの注力が必要でしょう。例えば各地で開催されているハッカソンなどのプログラミング技術を競う大会に参加し、好成績での受賞ができれば、他の求職者にはないアピールポイントになります。ただし大企業では社員の年齢構成の兼ね合いから未経験者の中途採用はされにくい傾向があるので、中小企業やベンチャーに狙いを絞って転職活動を行うべきでしょう」(同)

Pythonプログラマーの労働実態や収入の現状

 実際にPythonプログラマーとして働いているエンジニアはどのような業務内容で、どれくらいの収入を得ているのだろうか。

「一般的にPythonエンジニアは平均給与が高いといわれています。しかし実際に平均値を押し上げているのは、Python×データサイエンス・AI領域でのエンジニアでしょう。このようなスキルを持った人材は高学歴なうえに学生時代から実績も豊富で、大企業や好調なベンチャーで活躍することで高収入を実現しています。

 一方、プログラミングスクールや職業訓練校でスキルを学んだだけでは、数学や統計学、ディープラーニングなどのかけ合わせが必要なPython×データサイエンス・AI領域で活躍することは難しいため、請負でのウェブ開発や派遣エンジニアとして働くケースが多いです。この場合、最初の数年は年収300万円台が現実的でしょう。また業務内容や労働実態についても、Pythonだから特別ということはなく、大企業はホワイトな働き方で、中小企業や派遣はブラックな働き方となってしまう傾向はあるかもしれません」(同)

Python以外で学ぶべきプログラミング言語とは

 Pythonの需要が高まっているのは事実だが、やはりJavaによるシステムが依然として多いのが現実。「将来、食いっぱぐれがない」という観点で見た時、PythonよりJavaのスキルを身に付けたほうがいいのだろうか。

「世の中のITシステムの大半がJavaで作られていることから、Java言語を学ぶべきでしょう。Javaスキルがあれば、すでに世に出ているシステムの保守・改善などの仕事も多く、経験が積みやすい面もメリットです。まずはJavaを使った仕事で実績を積むことで、Pythonの仕事にもつなげやすくなります。また昨今ではビッグデータを操作する需要が増加していることから、SQL言語の人気が高まっています。そのためJavaやPythonとSQLのスキルを持っている人材なら、最初から高収入を目指すことも可能でしょう」(同)

(文=LUIS FIELD、協力=田中健太/データアナリスト、鶴見教育工学研究所)

田中健太/データアナリスト、鶴見教育工学研究所

田中健太/データアナリスト、鶴見教育工学研究所

東京工業大学大学院 博士課程単位取得退学。ITベンダー系人材育成サービス企業で、研修開発、実施に従事。クラウド、IoT、データサイエンスなどトレンド領域で多数の教材作成、登壇。リサーチ会社でデジタルマーケティング領域のデータ分析に従事。アンケート、アクセスログ、位置情報、SNS等を組み合わせた広告効果の分析を行った。現在は、フリーランスとして教育の領域で活動。
鶴見教育工学研究所

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