コンビニのワインというと「安かろう悪かろう」のイメージがあったが、SNS上で「ローソンで約600円で買った赤ワインが銀座や西麻布の高級店で飲むワインと変わらないほど激ウマ」と話題になっている。実際にそれほどのおいしさなのか、プロのソムリエに評価してもらった。
話題となっているのは、ローソンのオリジナルワインブランド「カーサ・スベルカソー」シリーズの赤ワイン「カーサ・スベルカソー シラーズ」。600円ほどで販売されているチリ産の格安ボトルワインだが、1月下旬にSNS上で「ローソンで買った500円くらい(正確には約600円)のワインが美味すぎて、これまで銀座や西麻布で飲んできたクソ高いワインとは一体何だったのかという気持ちになっている」という書き込みが拡散されたことをきっかけに「コスパ最強ワイン」として注目された。
書き込みに影響されて購入する人が続出しており、ネット上では以下のような声が上がっている。
「ローソンのカーサシラーズとかいうの本当にうまくて草」
「ローソンのシラーズが好みすぎた。深みあって香りよし、単品でもいいし食事との相性もいい」
「自分にとってワインはデイリーじゃないお酒だったけど、これはテーブルワインにもってこいだわ」
「渋みは少ないがコクがある。うますぎるので、つい1本空けてしまい二日酔いになった」
「コストパフォーマンスが高いといえるでしょう」
実際にコスパ最強のワインといえるのか。「20世紀最高の料理人」と称されるジョエル・ロブション氏の下でシェフソムリエとして14年間仕えた、日本を代表するトップソムリエの信国武洋氏が試飲レビューした。
「価格は約600円と格安ですが、ワインとしてちゃんと完成されていて満足感が得られます。この価格帯のワインの中ではバランスよく味が整っていて、素晴らしいと思いました。この味わいで600円なら、コストパフォーマンスが高いといえるでしょう」(信国氏)
「銀座や西麻布の高級店のワインに引けを取らない」という声もあるが、それについてはどのように感じたのだろうか。
「それぞれの価格帯で得られる価値があり、比較するものではないと考えています。例えば、私は子どもと回転ずしによく行くのですが、お付き合いで予算1人数万円の高級すし店にお呼ばれすることもあり、どちらも価格に見合う価値があると思います。ワインの世界もそれに近く、格安のワインは気軽に楽しめますし、数万円以上の高価なワインは厳選された産地で少量生産で手間暇をかけて造られたもので、味が極上であるうえに『世界に〇本』といった希少性もあります。高価なワインは味わいと希少性が大きな価値で、ワイン愛好家の方々はそれを求めます。両方とも価格に合った価値があり、どちらも素晴らしいといえるのではないでしょうか。今回のワインを生産しているのは、チリ最大のワインメーカーであるコンチャ・イ・トロ社ですが、同社は高価なプレミアムワインから格安ワインまで手掛けており、まさに両方の価値を体現しているといえます」(同)
確かに、すしであれば「スシローと銀座久兵衛はどっちがコスパがいいか」といった比較をする人はまずいない。ワインも同じものといえそうで、格安ワインも高級ワインもそれぞれの独自の価値があるといえそうだ。
1000円前後の価格帯で「当たり」のワインを見つけるコツ
いずれにしても、今回話題になった「カーサ・スベルカソー シラーズ」が格安ワインの中では「当たり」の部類であるのは間違いないようだ。同ワインに限らず、チリワインは「コスパ抜群」というイメージが浸透している。
「チリワインは段階的に関税が撤廃され、それが価格に反映されてコスパがいいというイメージにつながりました。しかし、現在はヨーロッパ産ワインなども関税が撤廃されたため、その点ではアドバンテージがなくなってきています。ですが、チリは他国に比べて賃金が安いので、それがリーズナブルな価格を支える一端となっています。また、ワイン造りには乾燥した気候や痩せた土壌が適しているのですが、チリはそのどちらにも当てはまっています。ロスチャイルドがチリにワイナリーを設立するなど、世界的にチリの恵まれた気候と風土は注目されており、クオリティの高いワインが生まれやすい環境といえます」(同)
最後に、コンビニでも買える1000円前後の手を出しやすい価格帯で「当たり」のワインを見つけるコツを教えてもらった。
「私の経験からすると、ワインの品質は8割くらいが値段に比例します。ただ、2割くらいは『この値段でこんなにおいしいのか』と驚くものがあります。値段が高いほど『当たり』の確率は高くなるので、予算の範囲内で最も高いワインをいくつか試し、自分に合ったものを見つけるのをおすすめします」(同)
(文=佐藤勇馬)