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「入荷後10分で完売」ローソン増量キャンペーンが空前のヒット…隠れた狙い

文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト
「入荷後10分で完売」ローソン増量キャンペーンが空前のヒット…隠れた狙いの画像1
ローソンの公式サイトより

 コンビニエンスストアチェーン「ローソン」が現在展開中のキャンペーン「盛りすぎチャレンジ」が「空前のヒット」となっているようだ。値段据え置きで約47%増量する企画で、現在は「盛りすぎ!プレミアムロールケーキ」や「盛りすぎ!たまごサンド」などが発売中だが、あまりに人気で入手困難な状況となり、SNS上では

<店員「3桁入荷した」 私「3桁」 店員「数時間で売り切れた」>

<店長「0時に入荷して」 女性「0時・・」 店長「そっから1時間、下手したら10分しないうちに売り切れます」>

<増量の商品一度も見たことないのだけど 都市伝説だったりする?>

<増量シリーズ、びっくりするくらい見つかりませんね…。>

などと話題となっている。果たして、どれだけ入手困難な状況なのか。また、価格据え置きで約47%も増量すれば、運営会社としては売上が増えても利益面では損になりそうなものだが、ローソンはどのような目的でこのようなキャンペーンを行っているのか。店舗への取材も交えて追ってみたい。

ファミマの二番煎じ?

 ローソンは今月6日から26日まで3週間にわたり同キャンペーンを実施。対象商品と発売日は以下のとおり(以下、価格は税込み)。

・5日発売
「盛りすぎ!プレミアムロールケーキ」(205円)

・6日発売
「盛りすぎ!金しゃりおにぎり 柚子胡椒香る炙り帆立と切昆布」(297円)
「盛りすぎ!たまごサンド」(289円)
「盛りすぎ!ふわもちコッペ りんご&カスタード 青森県産ふじりんご」(160円)
「でからあげクン 4種MIX味」(238円)
「盛りすぎ!メガホットカフェラテ」(260円)
「ウチカフェ タピオカミルクティー タピオカ増量 240g」(238円)
「あたりめ 59g(47%増量)」(388円)
「ジャッキーカルパス 106g(47%増量)」(388円)
「香ばしピーナッツチョコ 99g(47%増量)」(130円)

・12日発売
「盛りすぎ!バスチー -バスク風チーズケーキ-」(265円)

・13日発売
「盛りすぎ!和風シーチキンマヨネーズおにぎり 」(135円)
「盛りすぎ!ジューシーハムサンド」(333円)
「盛りすぎ!焼きそばパン」(171円)
「新宿中村屋監修 カツカレー(中辛)(カツ1個増量)」(646円)

・19日発売
「盛りすぎ!濃密カスタードシュー」(173円)

・20日発売
「盛りすぎ!チャーシューマヨネーズおにぎり」(160円)
「盛りすぎ!ハムカツサンド」(354円)
「盛りすぎ!あらびきポークフランクロール」(181円)

 同キャンペーンは昨年2月にも行われ、今回は前回より7商品増の19商品となっている。実際にどれくらい売れているのか。東京都内の複数のローソン店舗に聞いた。

「商品によってムラがあるが、『プレミアムロールケーキ』は棚に出すと40個が10分で売り切れる。一日当たり1回の搬入で、発注量には一回40個までと制限がかかっている」

「『プレミアムロールケーキ』と『たまごサンド』が人気で、陳列して1時間以内には売れ切るが、他の増量商品は通常と比べてそれほど多く売れているという印象はない。『からあげクン』は普段から売れ筋商品であり、『いつもどおり売れている』という感じ」

 もっとも、店舗の立地によって違いはあるようで、ロードサイドのある店舗のスタッフはいう。

「『プレミアムロールケーキ』は次の入荷までには売り切れるものの、飛ぶように売れているという状況ではない。また『あたりめ』や『ジャッキーカルパス』などは増量したからといって販売量に変化はない」

 特に「プレミアムロールケーキ」は入手困難となっているようで、SNS上には以下のような投稿のほか、売り切れ後の棚に置かれた「ただいま売切れとなっております。お客様にはご迷惑をおかけして、申し訳ございません。ローソン」と書かれたポップや、「おひとり様、1つとさせていただきます」という貼り紙の写真なども多数アップされている。

<やっとロールケーキ見つけた!2店舗探してようやく>

<もはや何処にもない>

<何箇所か回っているけど置いていない>

<やっと出会えたよ>

 同様のキャンペーンはファミリーマートも定期的に行っている。ファミマは昨年8月に「お値段そのままデカくてうまい!!だいたい40%増量作戦」を展開し、「ファミチキ」「昔ながらのナポリタン」「ハムポテトサラダサンド」など全16商品を対象としていた。

「意地の悪い言い方をすれば、ファミマはローソンの二番煎じ。ファミマは2年前に初めて増量キャンペーンを実施し、その大きな反響を受けてか、その翌年にローソンも同様の取り組みを実施。昨年のファミマのキャンペーンは『40%増量・16商品』で、今回のローソンのキャンペーンは『47%増量・19商品』といずれも上回っており、ファミマを意識しているとみられる。

 価格が少し高めで量が少ないけどクオリティーが高いセブン-イレブン、量が多くてコスパが良いファミリーマートに比べて、いまいち独自の魅力を打ち出せずに業界3位の座から抜け出せないローソンだけに、話題性のある施策を通じて存在感をアピールしておきたいところだろう」(コンビニ業界関係者)

次回以降の来店動機を生む

 気になるのはキャンペーンの効果だ。ローソンの発表によれば、昨年2月に12商品を対象に行ったキャンペーンでは、対象商品を含むカテゴリーの売上が前年対比で約115%となったという。流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。

「物価上昇で消費者の節約志向が高まるなか、最近ではスーパーもお客を振り向かせるために値下げセールを行うなど努力しているが、コンビニは消費者から『安い』というイメージは持たれていない。そうしたなかでコンビニが今回のようなキャンペーンを行うのは、利益を確保するという狙いよりは、消費者にコンビニも安くてお得というイメージを持ってもらうというイメージ戦略の面が大きいのではないか」

 小売り業界関係者はいう。

「SNSやネット記事などで『ロールケーキやサンドイッチ、おにぎりが増量してるらしい』と話題になっているのを見て店舗を訪問した客は、たとえお目当ての商品が品切れだったとしても、『ロールケーキはないけど、スイーツが食べたい気分になってしまったので、別のスイーツを買っていこう』となり、空の棚の周囲に陳列されたスイーツ商品に手が伸びるという購買行動が誘発される。また、普段あまりローソンに行かない人がキャンペーンをきっかけに店に足を運び、『ローソンって、結構スイーツ類が充実しているんだな』『がっつり食べられる系の弁当類が多い』『久しぶりに、からあげクンを食べたら美味しい。また買いに行こう』といったように気付きを与えて、次回以降の来店動機を生むことにつながる。その意味では今回のキャンペーンは大成功といえる」

 ちなみに、「盛りすぎ!」キャンペーン対象商品を確実に買う方法はないのか。

「『必ず買える』とは保証できないが、店舗に電話して質問すれば、入荷予定時間を教えてくれることが多いので、入荷時間の少し前くらいから店内で『張って』おくと、入手できる確率が高まるかもしれない。もしくは、スーパーなどでロールケーキと、しぼるだけで出てくるホイップクリームを購入して、自宅でロールケーキの上に好きなだけクリームを盛れば増量ロールケーキになるので、それで代替するという方法もある」(小売り業界関係者)

(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

流通ジャーナリスト。マーケティングプランナー。慶応義塾大学卒業。大手スーパー西友に勤務後、独立し、販促、広報、マーケティング業務を手掛ける。流通専門紙誌やビジネス誌に執筆。流通・サービスを中心に、取材、講演活動を続け、テレビ、ラジオのニュースや情報番組に解説者として出演している。

Twitter:@nishikawaryu

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