一見、燃費の良い自動車やランニングコストの低い軽自動車ばかりが売れているように見えるが、販売ランキングを詳しく見ると、ほかにも好調なカテゴリーがあることがわかる。それが高級ミニバンだ。
現在、国産メーカーで高級ミニバンといわれる車種は、トヨタ自動車のアルファード(および姉妹車・ヴェルファイア)、日産自動車のエルグランド、そして本田技研工業のオデッセイの3モデルを指す。もともと、このカテゴリーを確立したのは1997年に登場した初代エルグランドで、アルファードが追従し、ホンダがエリシオン(生産終了)を投入し3強体制となった。
しかしその3強体制は長く続かず、日本自動車販売協会連合会の発表している新車乗用車販売ランキングによると、昨年1年間の登録台数はヴェルファイアが5万575台、アルファードが3万3764台と、トヨタ車が他社の2台を圧倒している。
このアルファードとヴェルファイアによるトヨタのひとり勝ち状態に待ったをかけるべく、昨年11月にホンダのオデッセイがフルモデルチェンジ、続いて今年1月に日産のエルグランドがビッグマイナーチェンジを行い、それぞれ商品力を向上させている。オデッセイはエリシオンとの統合によって初のリアスライドドアを採用と大きく路線を変更し、今年1月の販売台数が5278台と順調なセールスを記録している。
●首位トヨタを日産が猛追
かつては「キング・オブ・ミニバン」と言われたエルグランドも、フルモデルチェンジに匹敵する大幅な改良を行った。改良のポイントは「高級ミニバンらしい外装の迫力アップと、室内空間の拡大と質感の向上」だ。
特に注目は大幅に改善したラゲッジスペース(荷物収容空間)。3列目シートを前方向に240mmスライドできるようになった。さらに後部のラゲッジボードの高さを150mm程度下げられるようにしたことで、3列目シートに人が座っていても9インチのゴルフバッグを最大6個積載できるように積載量がアップしている。これまでアルファードとヴェルファイアに水をあけられていた部分を、今回のビッグマイナーチェンジによって、その差を一気に縮めている。
高級ミニバンに求められるものは、広大で豪華な室内空間とおもてなし感のある装備、そして高級車の名前にふさわしい乗り心地だ。アルファード、ヴェルファイア、エルグランド、オデッセイを、このポイントで比較してみる。
最も広い室内空間を持つのはアルファードとヴェルファイア、乗り心地はエルグランドが一歩リードしている。オデッセイは価格がライバル車に比べて若干安めで、乗り味はスポーティな印象だ。各社が公表している装備表で比べてみると、ほぼ同じ予算ながらエルグランドは本革シートが標準装備となっているうえ、高級セダンに匹敵する乗り心地を実現できるリアサスペンションを採用している。このあたりに高級ミニバンのパイオニアというプライドを強く感じさせ、販売台数にも大きな効果を与えそうだ。
(文=萩原文博/フリーライター)
【ご参考:エルグランド公式サイト】
http://www2.nissan.co.jp/ELGRAND/