野村、経産省まで…コンプラ馬鹿ゆえに「犯罪」を犯す企業や組織
日本の企業や組織はここ何年か「コンプライアンス強化」という美名の下、マニュアル類を整備してきたが、大きな不祥事は相次ぐ。現役経産官僚がインサイダー取引で強制捜査を受けたり、最近では野村證券の増資インサイダー事件で経営トップが辞任に追い込まれたりしている。
単純に言えば、マニュアル類を整えただけで、欲に目がくらんで、やっていいことと悪いことの本質的な区分けを自分の頭でできない人が増えたからであろう。インサイダー取引なんて、どんな理由があろうと絶対にやってはいけないことだが、それを法律作成にも関わるキャリア官僚がやること自体、ブラックジョークだ。
コンプラ強化で思考停止
また、「コンプライアンス強化」は、判断力を養う大きな妨げになっていることや、形だけ整えて実戦では役立たないマニュアル類を増やしたという嘆きをよく聞く。妨げならまだしも、思考停止状態になっているケースすらある。
ある大手メーカーでは、課長が職場の人間関係に悩んでいた女性部下の相談に乗るために、「アフター5」に個別に話を聞こうとしたら、そのことを知った部長が「それは、うちのコンプラ上はセクハラになる可能性がある」と言って中止させたという。
宅配の受け取りでも、不在が多い場合、「これは貴重品ではないので、メーターボックスの中に入れておいてください。責任は一切問いませんので」と言うと、対応してくれる会社と絶対に対応してくれない会社がある。対応できない理由として「ルール上できません」を挙げる。一番融通が利かないのが日本郵政であり、「上司に聞いてみます」と、同じことを2〜3回言われ、違う上司から何回も電話がかかってきたことがある。その際に「お客の利便と会社のコンプラは、どっちが大切か」と聞いたら、「コンプラ」と答えたので、これには開いた口がふさがらなかった。
研究費を不正使用する大学の、あきれた規則
ある有名大学では、規則上、出張すると出張先のコンビニで買い物をしてレシートを提出しなければならない。だから買い物する用事がなくても、出張先ではコンビニで何か買うことになる。カラ出張防止のためだが、レシートなんて店内に落ちていたりするので、それを拾って送らせる者がいたら、どうなるのだろうか? こんなものは本質的な防止策ではない。こんなくだらないことをさせておきながら、この大学では巨額の研究費の不正使用が起きている。
中国ビジネスでも、日本の「コンプラ」が障害となっているケースはあるようだ。中国では「割り勘」という考えがあまりないが、日本の大企業幹部が中国の仕入れ先企業の幹部と会食をして「社内ルール上、割り勘にしてもらえませんか」と言って、失笑を買ったという。