そこで、今回は賃貸住宅を借りる時期について検討してみましょう。
年間の賃貸住宅市場を通してみると、時期によって不動産業者への来客者数が大きく違います。筆者の経験や不動産業者の話などから、市場の活況状況は次のように大別できます。
・1~3月(繁忙期)
最も入居希望者が多い時期で、かつ新学期や新年度には新たな場所で生活を始めなければならないなど、悠長に物件を探していられないため、厳しい条件で借りることが多いようです。借り手にとって、最も不利な時期といえます。具体的には、「家賃等の条件が強気で設定されている」「条件交渉しても受け付けてもらいにくい」など、貸し手が優位に立った契約となりがちです。
・4~5月上旬
学校や勤務先の事情で少し遅れて新居を探す人など、ゴールデンウィーク中の引っ越しに向けて、まだ少し入居希望者があります。一方で、流通する物件数が1~3月に比べて少なくなってしまうため、条件の良い物件を探すには苦労します。ただ、この時期を逃すと入居希望者が極端に減るため、オーナー側はこの時期から借り手の希望に対して柔軟に応じるようになる傾向があります。
・5月中旬~8月上旬
この時期は、年間で最も借り手が有利な時期といえます。人の異動がほぼ落ち着き、そもそも賃貸物件を探している人の数が少なくなります。そのため空き物件のオーナー側は、しばらく空室が続くよりは、家賃を減額してでも入居してもらったほうがいいという判断のもと、借り手に対して大きく譲歩することもあります。賃貸住宅を探すなら、条件交渉が比較的通りやすいこの時期が最もお勧めです。
・8月中旬~9月上旬
この時期は、9月に異動する企業もあることから、5月中旬から8月上旬までに比べると若干市場に動きが出てきますが、借り手が不利になるほどの繁忙期にはなりません。ある程度の交渉は受け入れられる時期です。
・9月中旬~12月
この時期も狙い目です。涼しくなって引っ越ししやすくなるため、ひと昔前には秋から初冬に引っ越す人も多かったのですが、最近はほとんど人の動きがなくなり、借り手市場の時期となっています。1月には繁忙期に入ってしまうので、可能であれば年越しせずに12月中に新居を探すとよいでしょう。
昨今は、人口減と反比例するように物件数が増えているため、1~3月の繁忙期を除けば、概ね借り手に有利な状況です。その中でも、4~5月よりは6~8月のように、より有利に物件を探せる時期をお勧めします。
ここまで見てきたように、賃貸住宅市場はまさに今が最も借り手にとって有利な時期なので、「今の住宅に不満がある」「気分を変えて引っ越しをしたい」など、引っ越しを考えている方は物件を見に行ってみてはいかがでしょうか。
(文=秋津智幸/不動産コンサルタント)