そしてついに、当局やユーザーの声を背景にした主要納入先の自動車メーカーからの日増しに強まる圧力に屈するかたちで、タカタは、「原因は不明」なままエアバッグの欠陥を認め、自動車メーカーがリコールを実施することとなった。
今後の大きな問題は「欠陥の原因究明」と「リコール費用の分担」だ。現在、タカタ自身と自動車メーカー、そしてタカタ製エアバッグを使っている主要自動車メーカー10社が第三者機関に委託するかたちでそれぞれ欠陥の原因調査を進めているものの、「原因の究明には、かなりの時間を要する」(ホンダ)見通し。そして原因が特定されなければ、リコールの対象も確定できない。このため、今後さらにリコール対象台数が大規模に拡大する可能性も否定できない。
のしかかるリコール費用
また、欠陥の原因が特定されなければ、リコール対策費用の分担も明確にならない。これまで自動車メーカーが実施してきた「調査リコール」は、自動車メーカー自身がコストを全額負担する覚悟で欠陥の可能性があることを前提として、予防的に実施してきた。例えば、タカタが自動車メーカーの要求基準を満たしていた場合、欠陥があったとしても多くが自動車メーカーの負担になるとみられる。しかし、欠陥の原因が明確になり、タカタに責任があった場合は、タカタは自動車メーカーからリコール費用を求償される。
タカタは2015年3月期連結決算でリコール費用526億円を計上し、295億円の最終赤字に転落した。米国では集団訴訟も起こされており、仮に欠陥原因の多くがタカタの責任となった場合、「費用求償でタカタは債務超過となり、支援先がなければ倒産する」(業界関係者)と見られている。
日本自動車工業会の会長を務める池史彦ホンダ会長は費用負担について「(タカタと)話し合いに応じる覚悟はもっている」と述べ、交渉に応じる姿勢をみせており、自動車メーカーが支援する可能性もある。
「1日でも早く欠陥の原因を解明して、問題が収束する」ことを願うのは、タカタも自動車メーカーも同じ。しかし、問題がさらに拡大する可能性もあり、解決への道のりは長そうだ。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)