先日、1週間の出張で、新緑が気持ち良いドイツを訪れた。ドイツの5月は「ホワイトアスパラガスの月」といわれる。各州の政令でホワイトアスパラガスの収穫開始が5月初旬に定められており、みんな解禁を待ちわびているのだ。
日本で出回っているグリーンアスパラガスと違い、ホワイトアスパラガスは大ぶりで柔らかく、甘い。6月に入ると硬くなり、もうおいしく食べられなくなってしまう。
ミュンヘンやフランクフルトの繁華街の雑踏には、ホワイトアスパラガスの屋台が出ており、穫りたてを買って帰り、家で料理する。レストランに行っても、この季節はホワイトアスパラガスがトップメニューとして必ず載っている。
今回の出張の目的は、コスメティックの先進市場であるヨーロッパの視察ツアーに参加することで、化粧品関連の経営者の方々が同行した。
ミュンヘンやフランクフルトも視察したが、目玉はシュツットガルトで開催された「コスメティカ・シュツットガルト」だ。化粧品の原材料やアクセサリー、ネイル、健康器具などの関連会社が数百のブースを出展していた。一般客にも開放されているので、地元や近郊から来たと思われる女性やエステティシャンなども多数来場していた。
面白いのは、このメッセ(展示会)は、「1回だけ、この都市だけ」ではなく、フランクフルトやハノーバー、ベルリンなどの各都市をサーカスのように巡回することだ。今年だけでも、すでに6回開催されている。
「サーカスのように」というところに、実はヨーロッパにおけるメッセの性格がよく表れている。ヨーロッパでは、大きいものから小さいものまで、実に多数のメッセが開催される。
業種ごとのものも多く、最先端の商品や技術が展示されるため、当該の業界人は必見だ。私も、キッチンハウスの社長時代は、ケルンの国際家具見本市やイタリアの「ミラノサローネ」(家具メッセ)などを歴訪したものだ。
業界をまたいだ大がかりなものとしては、ハノーバー・メッセが有名だし、万国博覧会もフランスのパリで1855年に始まり、今年のミラノ国際博覧会に脈をつないできた。
結果的に、ヨーロッパの主要都市にはメッセ会場が常設されている。今回のシュツットガルトは人口60万人ほどで、ドイツでは中規模の街だが、メッセ会場は東京ビッグサイトに匹敵するほどの大きさだった。ミラノやハノーバーに至っては、度肝を抜かれるほど広い。
ヨーロッパはメッセ・マーケティングで発展した
ヨーロッパでメッセが拡大したのには、地政学的な理由もある。多数の国から成るヨーロッパでは、昔は交通や通信の手段が限られ、不自由だった。そこで、特定のイベント(メッセ)を開催することにより、製造者、流通や小売り、そして地域の消費者まで参集する。会場では、展示だけでなく実際の契約を含む商行為が積極的に行われる。
このような、展示会などのイベントを通じたマーケティング活動を、「メッセ・マーケティング」という。ヨーロッパのビジネスは、メッセ・マーケティングで発展してきたのだ。