しかし、見過ごしてはいけないのが欧米からの訪日客だ。数字を見ると、4月の北米(米国・カナダ)からの訪日客は11万人を超え、増加傾向の香港やタイとあまり変わらない。LCCのジェットスターがある豪州とは違って、北米にはアジア向けLCCがないのに意外でもある。同じことが欧州からの訪日客にもいえる。英国、フランスからの旅行者も過去最高を記録している。
その背後にある最大の理由は、パソコンやスマホを使って「最低価格」を提供する世界的なオンライン旅行予約サービスにアクセスする利用者が増えたことだ。実際に米国では旅行者の約半数がオンラインで予約を済ませているといわれ、スマホを使った利用者が今後急増するのは確実だ。このようなオンライン予約サービスは、国内で圧倒的な強さを見せる楽天トラベルやじゃらんの海外版だと考えればわかりやすい。
旅行業界は、インターネットと最も相性の良い業界のひとつだといわれている。創業以来、その分野に目をつけてきたのがIT業界の二大巨人、マイクロソフトとグーグルだ。航空券やホテルを扱う世界最大級のオンライン予約、エクスペディアを1996年に自社の一部門として創業したのもマイクロソフトだった(2001年に売却)。
航空券、ホテル以外のオンライン予約の世界的トップランナーには、レンタカー予約で定番となっているレンタルカーズ・ドットコム、レストラン予約のオープンテーブルなどがある。個人で海外旅行をする日本人でオンライン予約に慣れた人なら、何度か使ったことがあるはずだ。
世界的二大陣営、そのグローバル化の仕組み
現在、オンライン予約サイトの世界的二大陣営は、米エクスペディア・グループと米プライスライン・グループだ。両社の14年度売上高はそれぞれ576億ドル(約6.9兆円)と844億ドル(約10.5兆円)で、特に後者の純利益は242億ドル(約2.9兆円)と、トヨタ自動車の同期純利益(2.17兆円)を上回る規模を誇る。いずれもIT時代を象徴するように旅行関連のオンライン予約サイトをM&A(合併・買収)で次々と傘下に収め、事業規模を拡大してきた。彼らの狙いは旅行に関わる分野、つまり、航空券、ホテル、レンタカー、レストランなどのオンライン予約を集約し、あらゆる予約をグループ傘下のサイトで可能にする仕組みをつくりだすことだ。
まさに、ワンストップですべてを済ませる日本のコンビニエンスストアの発想と同じだ。しかし、コンビニと違うのは、IT技術を駆使してグローバルにビジネスを展開していることだろう。世界展開の手法は、他の有力IT企業と同じだ。まず、オンライン予約サイトを米国で制作し、その後はサイト上で使用する言語と通貨を、ビジネスを展開する先のそれらに変えていくだけ。