こうしたグローバル化の仕組みは、米アップルのスマートフォン(スマホ)などグローバル製品とまったく同じである。オンライン予約サイトのユーザは言語と通貨を自由に選ぶことができる。むろん、日本語と円表示の日本語サイトを使っても、世界中の利用者と同じ情報をリアルタイムで共有して予約をすることが可能だ。
欧米人訪日客増加の背景
エクスぺディア・グループ系列であるホテルズドットコムの日本向け事業は、アジア・パシフィックの一部門で、日本語で対応するコールセンターのオペレータは中国・北京にいる。かすかに訛りのある日本語を話すオペレータもいるが、個人的経験でいえば同社のコールセンター対応は楽天トラベルなどの日系オンライン予約サイトにまったくひけをとらない。これら世界最強のオンライン予約会社は日本法人を設置し、英語が苦手な利用者でもなんのストレスもなく日本語で予約ができる環境をつくりあげてしまった。
さらにインターネットの進化で、ユーザはワンクリックで競合するサイトに移動し、同一条件で値段をチェックすることが可能になった。その結果、この業界では最低価格保証が当たり前のことになり、ユーザにとっては使い勝手がきわめて良くなった。
こうしたサービスを日本だけでなく世界中の利用者が享受できるわけで、これまでのように旅行代理店に行って格安ホテルや航空券を探してもらうといったやり方は、その多くがいずれ姿を消すかもしれない。
世界最大級のオンライン予約会社がインターネットを駆使して、日本人顧客を取り込むと同時に、世界中から外国人観光客を日本に送り込んでいるのは、もはや現実の姿だ。しかも、グローバル規模のオンライン予約会社は、日本企業と提携して一泊数千円のカプセルホテルも扱うほどの膨大なデータを揃え、世界中のユーザが24時間リアルタイムにアクセスできるようになっている。このようなグローバル規模のオンライン予約サイトのお陰で、日本を訪れる欧米の訪日客が増えていることは意外と知られていない。
(文=塚本潔/ジャーナリスト)