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小林敬幸「ビジネスのホント」

新潟ご当地アイドルねぎっこ、12年かけ奇跡的ブレイク!なぜ中年男達をひきつける?

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
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全国展開へ

 またまた、ねぎっこの歴史に話を戻そう。『ヌキ天』の事件の後も、メンバーは保育所を手伝ったり、大学に通いながら、少しずつメディアに露出してファンや楽曲提供者、レーベル、共演者などの協力者を増やしていく。10年にアイドルのフェスティバル「U.M.U.AWARD」でグランプリを受賞した頃から、音楽関係者やアイドルファンの間で知名度が上がっていった。

 特に楽曲提供者に恵まれ、ご当地アイドルとはいえ、80年代アイドルソング風から最新のテクノ・ヒップホップ系まで幅広く、しかもどこか現代風に統一されている。

 アイドル好きではない純粋な音楽ファンだったが、楽曲の素晴らしさから、ねぎっこのファンになったという人も多い。ごく最近まで、レベルの高い楽曲が、ほぼ無償で支援者から提供されていたことは驚きだ。

 地方創生事業においても、本人たちの粘り強い努力と継続性が必須なのはもちろんだが、周囲がそれをどれだけサポートするかにかかっている。そして、東京ばかりに視線を向けるのではなく、地方独自の粘りと温かい心情に訴えかけるスタイル、つまり、いい意味での「田舎臭さ」をずっと持ち続けることが、成功への要因だろう。

成功要因

 ねぎっこは、AKBグループほど競争心むき出しのガツガツ感がなく、Perfumeほど、現代的なとがったセンスがあるわけではなく、ももいろクローバーZほど、“大人の作戦”が透けて見えない。一部の地下アイドルのようなエロ要素もまったくなく、素朴な雰囲気が最大の魅力だ。

 ねぎを持ってダンスをする、結成時からのパフォーマンスは全国ツアーでも健在で、ライブでファンが手に持っているのは、ネギをあしらった緑色のペンライト、名づけて「ネギライト」だ。

 全国区で高い評価を得るほどの素晴らしい楽曲を持ちながら、地方アイドルとしての原点を大事にしている。それが、名だたるアイドルに伍していくねぎっこの成功要因である。

 実際にライブに行き、ねぎっこのファンはとても優しくてモラルが高いと感じた。興奮して荒れることもなく、ファン同士が張り合うこともなく、私のようなビギナーも温かく受け入れてくれた。

 ねぎっこのライブの名物である、ファンが肩を組んでラインダンスを踊るパフォーマンスの際も、ほかのファンが優しく招き入れてくれた。ねぎっことファンが一体になったライブはとても楽しく、ハマる人の気持ちもわかる。楽曲提供者も、ねぎっこの素朴な「空気感」をとても大切にしている。

 地方創生事業においては、補助金が打ち切られても、仲間が離脱しても、先生やリードする人がいなくなっても、全国デビューが進まなくても、継続して少しずつ成長することによって支援者を得ながら、長い目で育っていきたいものである。

 ねぎを持って元気に踊るねぎっこを見て、見知らぬファンと仲良く肩を組んでラインダンスを踊りながら、しみじみそう感じた。
(文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者)

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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