各パターンの給与には格差を設け、家庭の事情によるライフスタイルの変化も想定して、選択するパターンは定期的に見直されている。
同社の社員は、現在約500人だ。勤務の時間と場所がバラバラで、社員間のコミュニケーションに支障は生じないのだろうか? 青野氏は「会社に来なくても、みんな仕事はしているわけで、グループウェアを使って常に話し合っています。また、各社員がツール上にどんどん情報をアップすることで、今まで知らなかったことも知ることができるようになります」と語る。
選択型人事制度を導入した結果、離職率は下がり始め、前述したように、この3年は5%弱で推移している。しかし、青野氏の中に新たな不安が湧いてきた。
「これだけ社員が辞めないのは、サイボウズが生ぬるい会社だからではないか。あるいは、人の入れ替わりはある程度あったほうが自然なのに、辞めたい社員を無理に引き留めていないか」というものだ。
再入社OK、副業も自由化
働きやすい会社になると、新卒入社のプロパー社員が辞めなくなるのが通例だが、同社のプロパー社員は青野氏にこう語ったことがあるという。
「青野さん、私はサイボウズしか知らないので、ほかの会社も見てみたいです」
「いい心がけだね。じゃ、辞めてちょっと見てきたら?」
「いえ、辞めたくはないんです。サイボウズが大好きなんです」
「ややこしいな、君は……」
このやりとりから、青野氏は「今度は離職率をあえて上げていく制度」を創設した。35歳以下のエンジニアやスタッフを対象に、転職や留学など自分を成長させるための「育自分休暇制度」を設け、利用者には退職後6年間は復帰可能な「再入社パスポート」が交付される。
一度辞めても、再入社できるようにすればいいというわけで、すでに5~6人に適用され、青年海外協力隊に応募してアフリカ在住の女性社員もいる。
さらに「副業の自由化」として、会社に断らずに副業を可能とした。青野氏は当初、サイボウズに入社した以上はサイボウズの仕事に専念すべきだと考えていたが、「ヤフオク!」で物を売り買いして稼ぐのは副業に該当するのか、ブログを書いてアフィリエイト広告で稼ぐのは副業に該当するのかなど、「考えたらきりがないので、全面解禁しました」と語る。