7月からTOKYO MXが1年間のサイマル(同時)放送実証実験を開始した。スマートフォンに専用アプリ「エムキャス」をインストールすると、無料でテレビ番組が楽しめるようになる。
TOKYO MXは東京都で放送を行う独立放送局だが、実際には神奈川、千葉、埼玉、茨城などでも受信可能な地域が多い。首都圏在住の人が見られるテレビ局と考えればよいだろう。TOKYO MXでは現在、新作アニメが数多く放送されているだけに、サイマル放送開始の知らせに多くのインターネットユーザーが目を輝かせたが、直後に落胆させられることになった。
その原因は、放送される番組の少なさにある。スタート段階では平均して1日当たり3~5番組、多い日でも8番組、1番組しか放送されない日もある。また、いつでも自由に見られるわけでもない。
見たい番組がリストに入っていない、暇つぶしに見ようと思っても放送されていないという人も多かったのだろう。しかし今後、放送番組は徐々に増えていくとされているので期待したいところだ。
ラジオは一部有料で決着
地上波放送がそのままネットでも楽しめるものとしては、ラジオ番組のサイマル放送を行う「radiko.jp(ラジコ)」が有名だ。
ラジコは当初、居住地域の番組だけを聴けるサービスで、ラジオ受信機を持っていない場合や電波状況が悪い場合にラジオ番組を楽しむための補助的なツールだった。
しかし実際のところは、全国的に配信されているのを受信側で制限をかけている状態だった。この制限を解除して東京で北海道の放送を聞けるようにするといったアプリもあったが、ラジコが公式機能として有料で地域外の番組を聴取できるようになり、そのアプリからいつの間にか地域外聴取機能がなくなった。
つまり、一部のユーザーがネットなどを駆使して地域外の番組を聴取していた状態から、有料ではあるが誰でも地域外番組を楽しめるようになったわけだ。
ラジコのほかにも、各地のFM局が独自にサイマル放送アプリを提供するなど、ラジオ業界はサイマル放送に対して積極的な動きを見せている。それに比べてテレビ側は動きが鈍い。
テレビは権利関係の問題などもあって立ち遅れているが、インターネット再放送やオンデマンド配信は徐々に普及している。とはいえ、テレビ局側の都合でわずかな番組が垂れ流されるだけで、しかも録画すらできない現状では、サイマル放送をわざわざ見る価値は低い。今後TOKYO MXのアプリがどう進化していくのか、他局でも同じような取り組みが始まるかは不透明だが、期待を込めて動向を見守りたい。
願わくば、ラジオの歩みを参考にして地域制限なしでいろいろな番組が見られるように、かつ録画もできるようにしてほしいものだ。
(文=編集部)