ぺんてるは海外売り上げが6割超
コクヨの黒田英邦社長は創業家の4代目。甲南大学経営学部卒、ルイス&クラークカレッジ経済学部を卒業し、01年にコクヨに入社。15年、父である黒田章裕氏(現会長)の後を継いで社長に就いた。
コクヨは10年代から海外市場に進出している。11年にインドのノート製造会社、12年には中国の同業を買収。「海外売上高比率を20年度に30%以上に高める」計画を立てたが、計画の達成はおぼつかない。
21年12月期を最終年度とする3カ年の中期計画では、17年12月期に7%だった海外売上比率を10%程度に高めるとした。インドや中国だけでなく、新しい国・地域へ進出するとしているが、前途は多難だ。
そこで、海外進出のカードとして、ぺんてるに目をつけたわけだ。ぺんてるの18年3月期の連結売上高は409億円。欧米やアジアなど海外約20カ所に販売拠点を持ち、海外比率は65.3%に上る。海外が主力なのである。
コクヨはぺんてるを事実上、買収して、海外の強化につなげることができるのか。創業家4代目の腕の見せどころだ。
ぺんてるの株主総会はコクヨ不信一色
非上場のぺんてるの株主総会がこれだけ注目を浴びたのは、コクヨ問題があったからだ。ぺんてるは非上場ながら、取引先やOBなど数百人の個人株主がいる。
6月26日に開催された株主総会では、個人株主が提案していた自社株買いの議案が否決された。提案した個人株主は、「株式総数の3%を上限に、1株2000円で株式を買い取るよう」要求していた。買い取りを実施するには5億円余の資金が必要で、減収減益が続くぺんてるには負担が重かったことから、株主提案には反対していた。
筆頭株主のファンドにコクヨが大口出資しており、自社株買いがコクヨの影響力の拡大につながるとの警戒感もあったようだ。
株主総会で、和田社長はコクヨに言及。「信頼関係が築けておらず、コクヨが求めている海外での提携の話し合いのテーブルにはついていない」といった趣旨の説明をしたようだ。協業への道程は遠い。
5月以降、ぺんてるの和田社長とコクヨの黒田社長は数度、協議したという。独立を主張するぺんてるはコクヨに対して「ぺんてる株を間接取得した経緯の説明や株の買い増しをしないよう」求めてきた。
ぺんてるの経営陣と取引先の思惑は必ずしも一致していない。「いつまでも対立していてはビジネスチャンスを失う。歩み寄るべきだ」との意見が取引先にはある。
ノートが主力のコクヨと筆記具のぺんてるは商品の重複も少ない、というメリットもある。
ぺんてるの経営陣は、依然としてプラスとの経営統合を視野に入れているとの情報がある。プラスは非上場ながら年商は1772億円(18年12月期)。ぺんてるの4倍以上の企業規模だ。総合文具メーカーとして、コクヨの次がプラスという勢力地図になっている。ぺんてるとプラスは共同で販売会社を計画するなど関係は深い。
一方で、コクヨにとってプラスは、オフィス家具の通販などで競合するライバルだ。業界内では「PK戦争」と呼ばれるほど、営業面で激しくぶつかり合っている。そのため、ぺんてるを介してコクヨとプラスが握手することは考えられない。
しばらくはコクヨとプラスの綱引きが続くことになるのかもしれない。
(文=編集部)