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コクヨ、ぺんてるの事実上株買占め“奇策”で実質筆頭株主に…仁義なき「文具戦争」勃発

文=編集部
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ぺんてる本社(「Wikipedia」より)
ぺんてる本社(「Wikipedia」より)

 事務用品大手コクヨが、筆記具大手ぺんてるの事実上の筆頭株主となった。ぺんてるの普通株式37.45%を保有するマーキュリア インベストメントが運用するファンドに101億円出資し、同ファンドの支配権を得た。コクヨがぺんてるに間接的に資本参加したことになる。

 マーキュリアは日本政策投資銀行が24.5%を出資する中堅の投資ファンド。2018年3月に傘下のファンドが、ぺんてるの創業家の堀江圭馬・前社長から持ち株を取得し、筆頭株主になった。取得金額は70億円程度とみられる。

 ぺんてるはファンドの持ち分のコクヨへの売却を直前まで知らされなかったため、猛反発した。株式取得の経緯を問題視し、コクヨからの提携に向けた話し合いの申し入れに応じていない。

 なぜ、“間接出資”なのか。ぺんてる株は譲渡制限が付いた未公開株だ。株式の譲渡には、ぺんてるの取締役会の承認を得る必要がある。コクヨは直接、ぺんてるの株主になるわけではない。あくまでファンドに出資するだけだ。ぺんてる株の名義はファンドのままなので、売買に相当せず、譲渡制限には抵触しない。そのため、事前にぺんてるに通知する義務はないとの理屈だ。

 一方、ぺんてるは特定の企業に株式の37%を保有されることを避けるため、複数の事業会社への分割譲渡を希望していた。計画では譲渡先に文具大手プラスなど複数の文具メーカーが含まれていたとされる。

 そこでファンドは、ぺんてるの筆頭株主にとどまり、コクヨはファンドに出資するかたちをとる“奇策”を編み出した。これでは正当なM&A(合併・買収)とは言い難い、との厳しい指摘もある。

ぺんてるの御曹司は、ぺんてる株の売却で得た資金で投資会社を設立

 事の発端は12年5月、ぺんてる創業家の3代目・堀江圭馬社長の解任劇にまでさかのぼる。

 堀江氏は創業者の孫として米ロサンゼルスで生まれた。慶應義塾大学法学部政治学科在学中は、カヌー部のインカレ優勝に貢献したスポーツマン。米ジョージ・ワシントン大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。02年、32歳の若さでぺんてるの社長に就任した。

 堀江社長は12年5月23日の取締役会で定年(62歳)を過ぎた役員4人の退任を求める予定だった。ところが逆に、ここ数年の業績不振に対する責任を取るべきだとの理由で社長解任動議が出され可決された。海外で豪遊を繰り返すなど御曹司の道楽に古参の役員たちの堪忍袋の緒が切れたということだ。その後、生産畑出身の和田優氏が社長に就いた。

 堀江氏は、家族と合わせてぺんてる株式37.45%を保有する筆頭株主だ。社長復帰を目指していたが、株主でもあるほかの堀江一族の支持が得られなかった。

 帰り咲きを諦めた堀江氏が株式の売却を持ちかけたのが、未公開株を中心に投資を行うマーキュリアだった。マーキュリアは17年12月、ぺんてる株式の受け皿となるファンドを組成した。

 一方、堀江氏は18年2月、ラーテルハートを設立。ぺんてる株を売却した資金を元手に消費財の新製品開発を行う企業への投資事業を始めた。

 関係者によると、ぺんてるの経営陣は文具大手のプラスとの経営統合を希望していたとされる。マーキュリアがこの統合計画に乗らず、コクヨの出資を受け入れたことが、こじれる元になったようだ。

BusinessJournal編集部

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