恒生電子が開発したプラットフォーム「HOMS」では、株式店頭市場の信用取引でレバレッジを利用して最大10倍の株式投資を行うことができる。株式相場が急落する中、レバレッジを利用する投資家は追加証拠金を支払うために株式を売却する必要があり、下げが増幅した。
中国の信用取引には明確なルールがない。日本では証拠金の3.3倍までだが、中国では10倍という高いレバレッジが横行している。100万円の元手で1000万円の株が買える。今回の暴落(上海ショック)により、証拠金が吹き飛んで大きな損失を出す投資家が続出した。
恒生電子の金融サービス部門が株価急落を引き起こしたとの現地メディアの報道で、社会不安が広がったが、同社はその報道を否定した。だが、株価暴落防止策に狂奔している中国当局にとって、同社は格好の標的となった。
傘下の恒生電子がやり玉に挙がったのに続き、アリババにも疑惑の火の粉が飛び火した。中国株式市場暴落の影響でアリババの株価は7月7日、米ニューヨーク市場で一時、上場来最安値まで落ち込んだ。
さらに、中国ネットサービス大手テンセントの元幹部で、現在はアリババ集団で副総裁を務める劉春寧氏が汚職容疑で公安当局に拘束された。テンセント時代の動画映像事業に絡む汚職が疑われている。アリババに幹部を引き抜かれたテンセント側が劉氏の不正の事実を公安当局に情報提供したことが今回の拘束の背景にある、といわれている。アリババは「劉氏に代わる事業責任者を充てており、経営に与える影響はない」としている。
「爆買い」への影響
中国市場の株バブル崩壊は、日本経済に大きな影響を与えそうだ。訪日外国人旅行者が14年に日本で消費した額は2兆278億円に上った。13年と比較して43%増。その大きな原動力となったのが中国人旅行者による「爆買い」である。
14年の国別の外国人旅行者は台湾からが283万人でトップ。次が韓国の275万人、中国人旅行者は241万人で3位だった。だが、購買力は中国人がダントツで、消費額は中国が5583億円で1位。中国人旅行者一人当たりの消費額は平均23万円になった。